第3夜
トラックに轢かれそうになった時。
工事現場の鉄筋の下敷きになりそうだった時。
どちらも助けてくれたのは、彼だった。
こうも立て続けに事故に遭遇するのも変な話だが、都合良く現れる彼もまた変である。
「どうして…?」
思った事が口に出てしまった。
「時間があれば少し話そうか。」
少し迷ったが、無視できなくなってきたのもまた事実。
私は彼に言われるままついて行くことにした。
近くのカフェに入ると、店員に窓際の2人席へ案内された。
彼はホットコーヒーを、私はカフェモカを頼んだ。
「さてと、いきなりだけど僕は普通の人間じゃない。」
…本当にいきなりだ。薄々は感じていたけど。
「普通じゃないってどういう事?」
ありきたりの質問で返す。
「僕は人の寿命をもらって生きてる。」
彼の話はにわかには信じ難い話だった。
物心着いた時にはそうなっていたらしい。
親は知らない。
小さい頃一緒に暮らしていた人がいて、その人に生き方、寿命の貰い方を教えてもらったらしい。
見た目の年齢が進むのはとても遅いらしい。
そして、その特異体質ゆえ闇取引されそうになった事があるらしい。
逃げ回った末にやって来たのが私の実家だったというわけだ。
逃げている間、寿命を貰えず動けなくなっていた所に私がやって来た。
「思い出さない?月の綺麗な夜だった。君の家大きかったよね。知らない人なのに優しく声をかけてくれた。」
月…夜…青い瞳…。
そういえば小さい頃、玄関で寝ていた事があるらしい。
インターホンが鳴って外に出ると私が居たと聞いたことがある。
確かに知らない男の人と庭で話したような気はする。
「あの時もう僕は動けなくなっていて、君からもらう事にしたんだ。でも君の寿命がもともと少ないことに気づいた。だから助けに来た。」
じゃあ最近事故が多いのは…。
「君の寿命が近づいているから。」