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三日月の夜に  作者: うみ
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第1夜

どうしたの?

見るからに弱っているお兄さんが壁にもたれて座っている。

君こそ、子供がこんな暗い夜更けに家から出ちゃ危ないよ?

座っているだけで辛そうなのに私の方を見て話しかけてきた。

ここは私の家よ。窓からあなたが見えたから来てみたの。

そっか。君の家大きいよね。庭を通ってここまでくるだけで力尽きちゃった。

見たところ若そうなのに疲れているのね。

ちよっと待ってて誰か呼んでくるわ。

待って。君の寿命を1年だけくれないか。

そういうとお兄さんは頭に手を置いて...。


ブー、ブー。ピッ。

んー。

6時。まだ眠りたい欲を振り払って起床。

仕事に遅れる。早くベッドから出ないと。

何か夢を見ていた気がするけど覚えてない。

なんとなく懐かしい気分だが、思い出せる気がしない。

うん、諦めも肝心だ。

気替えて、メイクして、朝ごはんはほどほどに家を飛び出す。

仕事はそれなりにこなし、給料が貰えればそれでよし。やりがいとかは特に感じてはいないがそんなもの欲してはいないので問題はない。

金曜日の夜に1人で外食するのが唯一の楽しみだ。

今日は金曜日。何を食べに行こうか。先週はハンバーグを食べたし、お寿司もありだな。

そんな事を考えながら電車に揺られ出勤。

なんてことのない日々の業務を終え、退勤。

仕事中は特筆すべきことなどない。

デスクでPCとにらめっこし、上司や同僚と適度なコミュニケーションをとるだけだ。

私は定時で仕事を終えると颯爽と職場を後にした。

さて、待ちに待った金曜日ディナー。

昼休みに調べて置いたお寿司屋さんへと向かう。

空を見上げると、今日は三日月だった。

三日月は好きだ。

何となく昔を思い出す。

暖かい家と優しい記憶。

視線を前方へ戻すと、向かいから来た男性と目があった。

反射的に逸らす。

外国の人みたいな風貌だったな。

銀色の髪に色白な顔。

すらっとしていて高身長。

でも、何故か会った事がある気がする。

こんな人に会ったら忘れそうにもないのに。

テレビとかかな?

もう一度見ておきたくなって、振り返る。

と、彼もこちらを向き、立ち止まっていた。


ザーッ


風が吹く。

一瞬時間が止まったような感覚。

目が、逸らせない。

彼が歩いて近づいてくる。

私の前で止まる。

私はこの瞳を覚えている。

青みがかった日本人離れした色の瞳。


キーッ!ドーンッ!ガガガガガッ!

凄まじい破壊音がして現実に引き戻される。

音がした方を向くと、トラックが歩道へ突っ込んでいた。

幸い人には当たらなかったようだ。

運転手も出てきたので怪我は無さそうだ。

私は立ち止まらなかったらあのトラックに跳ねられていたのだろうか。

彼が居なかったら。

私はまた、視線を彼に戻した。

彼はまだそこに立っていた。

「君にあの日の恩を返したい。」

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