第1章 なぜ勇者より無職の俺が色々と格上なのか? 第5話 ギルド
【剛華 真空破断】 これは俺が師匠から受け継いだ技のうちの1種類である。相手の体内にある水に衝撃を与え、体内からダメージを与えるという代物である。
これを受けたエドルは口から血を吐き、民家に吹っ飛んだ。周りの者は信じられないという顔をしていた。なんせ、勇者の一等騎士なのだからこの国の10番以内に入る実力の持ち主であるということ。そんな彼を一撃で仕留めたのだ。
「ふぅー、剛華は疲れるな」
「お、おまえ!! エドル様に何をしたんだ!!」
取り巻きの1人が怒りとともに言ってきた。
「剛華を打った」
取り巻きたちはみんなクエスチョンマークを浮かべている。まぁ、師匠の奥義だ。説明するつもりはない。
「お前らの一等騎士さん、なかなか強かったぜ」
俺はその言葉だけを残し、その場をあとにした。
◇
しばらく歩くとギルドらしき場所についた。すこし躊躇しつつも中に入った。
ガヤガヤガヤガヤ。
ものすごくうるさい。メイド服を着たきれいなお姉さんに聞いてみた。
「あのぉ、すいません。今日ここに来たばかりなんですけど、ギルドの仕組みとかこの街のこととか知らなくて少しばかり教えてもらっていいですか?」
「はい、もちろんです。ここはギルドという場所でーーーーー」
きれいなお姉さん曰く、右側にある場所はカウンター。いわゆる冒険者たちがこのカウンターに来て仕事の受けるという感じだ。冒険者にも階級がある。下から白、銭、鉄、銅、銀、金、黒である。黒の階級はこの世界に3人だそうだ。その人たち全員勇者並みの力を保持しており、国から厚く待遇されているらしい。そして、左側は酒場である。情報集めならこの酒場が最適らしい。
「ありがとうございました!」
「いえいえ、大したことないですよ」
俺はきれいなお姉さんに頭を下げ、さらに情報を集めるために隣の酒場に来ていた。その時、1人の男性から声がかかった。
「おい、あんたさっきエドルをぶっ飛ばしたやつだろ?」
「あぁ、なんで知ってんだ?」
「見てたからな、ありがとよぶっ飛ばしてくれて」
「お安い御用さ、俺の名前はテンリ。あんたは?」
「俺はウッドだ。よろしくなテンリ」
俺は少しダンディーなウッドと酒を交えながらウッドから街の情報を聞いた。ウッド自身は獣族が奴隷にされている状況が見ていられなく、エドルに頼んだらしいのだが不敬罪ということで痛めつけられて、冒険者を続けることが困難な体になってしまったらしい。
「とことんクズだな」
「まぁまぁ、テンリがぶっ飛ばしてくれたからスッキリしたよ」
そして、運がいいことにウッドは宿屋を家族で経営しており、エドルをぶっ飛ばしてくれたお礼で無償で泊まらせてくれることになった。そのあとも、いろいろと雑談をしていたが、急に周りの人たちが静まった。そして、みんな目をハートにしている。俺は、何事かと思いその方角を見ると、鎧を着ている数名と先頭に女性がいた。
一言で表すと、とても綺麗だった。向かいのウッドを見てみると目がハートになっていた。
「おい、ウッド! ウッド!」
こりゃダメだ。ウッドが戦闘不能になった。だが、なぜあの女こっちに歩いて来るんだ。女は歩いてる途中に冒険者の男どもが一緒に飲ませんか? と誘っているが女は全部無視。ドンマイ、泣くことねぇーぞ、男ども。
だが、予想していなかった事態が起きた。女は俺の目の前に止まったのだ。
「少しお時間よろしいでしょうか?」
「断る」
これは絶対に面倒なやつだ。こんなきれいな女に関わると、色々と面倒くさいことになるのがオチだ。【剛華】はすごく疲れるからもうウッドの宿で寝たいんだ。時間を食いそうなやつは放っておこう。
俺はどうしようもないクズを担ぎ、この場をあとにしようとするが、取り巻きの騎士たちが行く手を阻む。
「おい、どいてくれ」
「すいません。それは出来ません」
「あなた、なぜ逃げようとしたのですか?」
俺が鎧女と命名したこの女は言ってきた。
「いや、俺はあんたに用ないし。寝たいし」
「てめぇ!! エフィ様にむかってあんただと!!??」
取り巻きの殺気がすごいこと。怖いですわ♡
「私はあなたに感謝を伝えに来ました」
「感謝? 俺はあんたを助けた覚えないぞ?」
「いえ、エドルのことについてです」
「あーーー」
あの、見た目だけアイドルのあいつね。やってることはもはや江戸時代の殿様だけどな。
「倒してくれてありがとうございます」
鎧女はその言葉と同時に頭を下げてきた。
「おいおい! お礼されるようなしてねぇよ!」
テンリはこの状況が読み込めず、そして恥ずかしさもあった。なんて言ったって女に頭を下げているこの状況はあまりよろしくない。師匠の教え第3条に該当するもので、あってはならない事なのだ。
「私では、エドルは倒しきれないのです。あの問題児のせいで多くの国民が苦しみました。救っていただきありがとうございます」
「だから、そんな強くなかったし礼は要らねぇよ! だからどうか頭だけは上げてくれ!」
テンリは必死に頭を上げさせようと努力した。しかし、後々に気づく。テンリはすごい発言をしてしまったことを...........。