4話 商業都市ミリアルド1
前話のあらすじ:領主の息子に町へと送ってもらった
商業都市ミリアルド
グリフィル王国において、人口が5番目に多い都市であり、王都に次ぐ商業規模を誇る大都市である。
そこへ私は、領主の長男であるジェイドの馬車に同乗させてもらって入ってきた。門番はジェイドが対応したら顔パスだった。まぁ当然か。
(大きな街だなー。中世ヨーロッパ風ってやつだな。家の造りもレンガのようだし、道路は石畳で出来ている。異世界転移モノの小説とかなら定番だな。大きく違うのは俺が女になってることだ)
前世のメタ知識を活用して思考していると、ミリアルドさまが声をかけてきた。
「時に貴女のお名前を聞かせて頂けませんかな?」
「あ、名乗っておらず失礼致しました。私はミリア・マンシュタインと申します」
「ほう、マンシュタインか。聞き覚えの無い名前ではあるが、貴女を見るからに、さぞ美しい方がおられる血脈なのだろうな」
(いや、私はどう考えても天涯孤独だぞ。というより、このジェイドとかいうヤツ、女好きなのか知らないけど、容姿の事ばっかり話題に出してくるな……。元々男だし、キレイだとか言われても複雑なんだが)
心の声は心の声でしまっておいて、私はミリアルドへ尋ねる。
「あの、ミリアルド様? 私は町にお送り頂いただけでも大変うれしく思います。この辺りでそろそろ、降ろして頂ければ、後は自分で何とか出来ます」
「む、そうか。仕方が無いな。しかし、貴女は美しい。何かこの町でやる事はあるのか?」
「特にまだ考えておりませんが、働き口もあるでしょうし、これから考えま……」
そう言いかけた所で、ジェイドが話を遮ってきた。
「そうか!それならば吾輩の屋敷で働かんか!? 悪いようにはせん。朝昼晩食事付きで、何なら吾輩専属にして、給金も相場とは比べ物にならんほど支払うぞ!」
(いや、顔が近いって!! ジェイドは別にブサメンじゃないし、どっちかと言えばイケメンだけど、俺にそっちの趣味はねーよ!!)
「あ、あのミリアルド様? 私、この町には見聞を広める為に参りましたの。ミリアルド様のご提案はうれしいのですが、私はまだ、町を色々と見てみたいですし、今回はご勘弁頂けませんか?」
使い慣れない女言葉で口調が少しおかしい気もしたが、とりあえずジェイドの誘いを断る事に全力を費やした。
このままジェイドの所で奉公人になったら、いつか確実にヤラれるに違いない。
私の女としての第六感(元々男だが)が警笛を鳴らしていた。
「ミリア殿がそう言うのであれば、仕方あるまい。だが、もし困った事があれば、吾輩を頼ってくれて構わんぞ。吾輩はミリアルド領主邸で生活しておるから、何かあったら言ってくるといい」
「ありがとうございます、ミリアルド様。万一の際は頼らせて頂きます」
「うむ、それと貴女にはこれを渡しておこう」
ジェイドは馬車の室内にある小袋を私に渡してきた。中を見るとズッシリと重みのある袋の中には金貨が詰まっていた。
「ミ、ミリアルド様? 私、これほどのお金は受け取れません」
「何を言う。そなたは美しい上に、田舎からここミリアルドへ出てきたというのだから、領主の長男である吾輩が心ばかりのもてなし代わりに、それをやろうというのだ。素直に受け取らんか」
(……これは、貸しを作るというより、恩を売っておくって事かなぁー)
断りたい、でもこの世界のお金なんて持っていない私には有り難い話である。
「わかりました、ミリアルド様には感謝ばかりですね。うふふ」
はにかみながら私はジェイドに頭を下げる。
「この町からもし出ていく時は、私に必ず知らせるのだぞ?」
「うふふ、ミリアルド様への恩義を忘れる事なんてありませんわ」
私はこの世界の金貨の価値を知らないが、ズッシリ重いこの袋には相当な枚数の金貨が入っている事がわかる。
私の目は人知れず【¥】のマークになっているのだった。
ここまでお読みくださり、ありがとうございます。
今後は後書きネタコーナーという【魔境】が待ち受けています。
ハハハ!そなたに耐えられるかな!?
…ごめんなさい、これが後書きネタです。今後たびたび登場します。
引き続き本編をお楽しみいただけると幸いです。
ぺこり