37話 おくまんちょうじゃは銀行へ
前話のあらすじ:1年後がめんどくさい予感しかしません。
「では、今日は婚約についての話は終わりにしよう」
(やっと解放されるのね…。こういった話は慣れないのよ…)
中世のお偉いさんに会うだけでも不慣れなのに、男同士…じゃなかった。一応男女だった。ともあれ縁談なんて初体験だし、相手が男とあってはますます精神的に疲れる。
再び部屋に入ってきたトーマスたちとともにベイハムさんとジェイドに改めて挨拶をした後に、執事さんと、今後のマナー教室などについて話し合いを行った私たち。
若干1名疲れ果てていたが、私たちは再び馬車に揺られて街へと戻ってきた。
ジェイドとの婚約どうのこうのは後回しだ!そんな事は今はどうでもいいのだ。
(えーい、元男が男に抱かれるだなんてもってのほか!…って言っても、他に何があるのかな。仙人にでもなればいいのかな)
女の子にも興奮しないし、男同士もなんかまだ違和感があるし、どっちつかずである。
さておき、私たちはそれぞれ2500枚もの金貨を頂いたのである!やらなければならない事がある!
「いざ!お買い物へ!ジュエリー、ドレス、杖、本、あったかい毛布、美味しいご飯!」
…私よりもやる気マンマンな子がいた。
「それはいいんだが、エリーはこんな重い袋を俺たちに抱えさせたままで買い物をするつもりなのか…?」
馬車から降りた後の私たちは金貨が2500枚もの大金&大荷物&大重量を抱えたままな上に、私とエリーはとても持ちきれなかったので、トーマスとザンネンにも自分の分の金貨を持ってもらっていた。
「まずは銀行でお金を預けて、それからじゃないかしら」
「そうだな…ところで俺は貯金なんてしたことがないんだが、どうすればいいんだ?」
「アタシもないよー」
「僕もないねー」
わかってはいたが、冒険者としてまだ名をあげてもいなかったトーマスたちは、それなりの懐事情だったようだ。かくいう私もイザとなったら時間を止めて逃げたらいいやぐらいの感覚でお金を持ち歩いていたので、貯金なんてしていない。
みんなで仲良く銀行へ向かい、預金受付の男性に説明を受けて金貨をそれぞれ2000枚ずつ貯金したのだが…なんとこの世界は利子ゼロだった!くやしい。
が、それもそのハズで、この世界の銀行はどこの大陸のどの街でも銀行さえあれば通帳でお金を引き出せる。交通手段の発達していない中世ヨーロッパ風のこの世界で、現金を長距離持ち歩かなくても、通帳さえあればどこの銀行でもお金が引き出せるというのは、相当な量の金貨を銀行が保有していないと出来ないサービスだ。
しかも預金通帳はマジックアイテムになっており作った本人しか銀行で認証が出来ないようになっている。細かい理屈はわからないが人それぞれの魔力の流れは全て違うらしく、魔力=現代日本でのマイナンバーのような定義らしい。
(魔力便利すぎでしょ)
そして銀行を後にした私たちは意気揚々と新しい装備を買いに武器屋や防具屋を回って装備を更新していく。
トーマスはミスリルの長剣とミスリルの軽鎧を購入。ザンネンはミスリルの兜とミスリルの胸当てを購入。エリーは魔法使いなので武器と防具は買わないのかと思いきや、ミスリルのナイフを購入していた。料理などにも使えそうな小ぶりなナイフである。
そして私はミスリルのショートソードとミスリルの小盾とミスリルの胸当てを購入した。
どれも武器屋で試しに持ってみて驚いたのだが、信じられないぐらいに軽量だった。ただし、トーマスのロングソードも持たせてもらった時に気が付いたのだが、長剣のような重さも必要な武器に関してはいわゆる【本割り込み】になっており、刀身のミスリルを鋼鉄で挟んだ構造になっているそうだ。
なんだか日本の刃物のような構造で正直驚いた。他にもミスリル製の武器や防具の製法は一般的な鋼材とはまったく違うそうで、前世が日本人男性だった私の心もちょっと踊ってしまった。
ちなみに武器も防具もミスリル製ともなると個人に合わせた調整を行うので即日納品とはならず、後日受け取りになった。防具は当然だが武器も柄の長さや柄の滑り止めとして巻き付ける素材の選定などがあった。
私は女性なのでショートソードでもロングソードなどの両手剣のように扱うことが多いので、柄を長めに調整する必要がある。トーマスは柄の長さは問題ないようだったが、柄のグリップ感を高めたいようで、巻き付ける布や革選びを慎重に行っていた。
そうして武器屋と防具屋での買い物が終わろうとした頃に。
「ところでアタシとミリアお姉ちゃんは洋服とか宝石とか宝石とか魔法店とかに行くから、ここからは別行動でいいでしょ?」
(大事なことは2回言わないとね)
それはともかくエリーはよっぽど宝石が欲しいのだろう。気持ちはわからなくもない。あれ?なんでわからなくないんだろう?まぁいっか。
「俺とザンネンも、もろもろの買い物を済ませておきたいから別行動でかまわない。宿の夕食で合流しよう」
「わかったわ」
「さー!ミリアお姉ちゃん!お・よ・う・ふ・くー!買いにいこ!」
エリーに袖を引っ張られながら、私たちは別行動を開始するのであった。
【武器屋と防具屋のオヤジが飲みながら語る】
「ちょっと聞いてくれよ、防具屋の。俺の店で扱ってるミスリル製の武器はこの街一番どころかこの国でも一番だと思っているんだ。だが当然ミスリル製の武器は高いから買うヤツが滅多にいねぇ」
「お前飲んでるといっつもそんな話ばっかりしやがるな!」
「たまに買いに来ても剣なんか振りそうにもない、ただの金持ちが観賞用に買っていく始末よ!こりゃー武器屋としてはつまらねぇよな!」
「ところで今日来た冒険者4人組が俺の店で気前良くミスリル製の防具を買っていったんだよ!どうだ!うらやましいだろ!?」
「あん?俺んとこにも4人組の客が来て、ミスリルの武器を買って行ったぞ?」
「え?それとんでもなく美人な姉ちゃんとかわいいお嬢ちゃんがいる4人組か?」
「そうソイツら」
「「宝くじでも当たったのか?」」
ごめんなさい、いつものです。
ちなみに本編とは関係がありません。
いつも私の小説をお読みいただきありがとうございます!
引き続きこの小説をお楽しみいただければ幸いです。
ぺこり。