3話 第一村人(実は領主の息子)と遭遇した
前話のあらすじ:(モンスターとの戦闘を)初体験した
相変わらず慣れない揺れをもたらしている双丘に戸惑いながら歩いていくと、遠くからガラガラと音が聞こえてくる。
「何かが近づいて来てるな。異世界だと馬車か何かかな?」
とりあえず身を潜めようかとも思ったが、馬車に乗ってやって来るような山賊やモンスターはいないだろう。
そう思い、そのまま街道を進む。
(あ、近づいて来た。やっぱり馬車だね)
何となく前世日本の戦国時代なんかでは、目上の人と気軽に目を合わせてはならないだとか、そういうルールがあった気がするので、視線を下げながら歩いていく。
「おや、こんな所を女性が一人で歩いているではないか、ここで止めよ」
馬車に乗った人物が指示し、馬車が私の隣で停車する。
(うえー、いきなり絡まれるの?? この世界の事はまだ何も知らないし、異世界人だとバレるのは上策じゃないよなぁ)
そんな事を考えている内に、馬車の中の人物が降りてきた。
「お嬢さん、こんな場所を一人で歩いていると、悪い山賊やモンスターに襲われてしまいますよ? 貴女のような美しい女性は山賊に取っては格好の餌食ですからね、ハハハ。悪い事はしませんから、ミリアルドまでで良ければ、送ってあげましょうか?」
(ミリアルドがどこの事かはわからないけど、どこかの町なのかな。このまま歩いていってもいいけれど、この男が言う事にも一理ある。でももうちょっと人柄を知ってからじゃないと。今の私は美少女なんだから)
自分で自分の事を美少女なんて言い出したら、周りから見れば末期患者だと思われかねないが、実際に今の私は美少女だったので問題ない。
たぶんきっと恐らく。
「あの、私は田舎から出てきたばかりで、この辺りの土地に詳しくありません。申し訳ないのですが、ミリアルドとはどういった所なのか、教えて頂けませんか?」
少し上目遣いになるように、男を見ながら質問する。まずはミリアルドとはどういった場所なのか、情報を入手しよう。
(男って女性の上目遣いに弱いからなー。声をかけてくれたぐらいだし、ミリアルドの説明ぐらいは聞けるだろう)
私自身だって、女性の上目遣いには弱かった。タジタジになってしまう。これを食らえばイチコロに違いない!それー!
「……。ゴ、ゴホンっ! ミリアルドとは、吾輩の父上たるベイハム・ミリアルドを領主とする町の事だ。このグリフィル王国における5番目に大きな都市だ。吾輩はベイハムの長男、ジェイド・ミリアルドである」
(よしよし、効いてる効いてる)
領主の息子であれば、変な事をされる心配は無いだろう。ミリアルドの街まで送ってくれるというのであれば、喜んでお世話になろうではないか。
「さようでございますか。領主様の長子様に失礼な事をおうかがいしてしまい、申し訳ありません。あの、もしご迷惑で無ければ先ほどおっしゃって下さったように、ミリアルドまでご一緒させて頂けるようでしたら、お願いできますか?」
「ハッハッハ、貴女のような美しいご婦人であれば喜んで。おい、出発させたまえ」
馬車はミリアルドの街へ向かい走り始める。
いきなり初対面の女性を馬車へご一緒させてくれるだなんて、太っ腹なヤツのようだ。ジェイドからは美しいと言われたので、自分の容姿に対する私自身の美的センスは異世界でも誤ってはいないようだ。
鏡で見た私のルックスは相当な美少女だったし、スタイルもかなり良かった。…前世でも男女は逆だがこれくらいトンデモ美男子に生まれていたら、とっくの昔に童貞を卒業していただろう。
そう考えると何とも言えない複雑な気持ちに支配される私であった。
ここまでお読みくださり、ありがとうございます。
2021/3/13 後の展開を考えるとなんとなくおかしい部分を改稿しました。
引き続き本編をお楽しみいただけると幸いです。
ぺこり