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36話 1年待ってもらおうか!

前話のあらすじ:結婚しないからね!?

 しかし私は踏みとどまった。


 …目を¥マークに輝かせながら…。


(危ない危ない、報酬(おかね)を受け取らずに帰るワケにはいかないわよね)


 お金はいくらあっても困ることはないのだ。


「ごほん!」


 執事さんがワザとらしく咳払いをすると、それに気づいたジェイドと、ジェイドをそのままナイスミドルにしたようなダンディーなおじさまがコチラを見る。


「「…ごほん!」」


(さすが親子。仕切り直しの【ごほん!】のタイミングも一緒なのね)


 ところで私にはこういう場合の礼儀がわからないので、トーマスたちを横目でチラチラ観察しながら、場にそぐわない行動を取らないように注意するのも忘れてはいけない。


 …エリーはやっぱり緊張していた。うん、そうなるのは知ってた。


「領主のベイハム・ミリアルドだ。4人とも堅苦しい礼儀作法は抜きでいい。ワシも堅苦しいのは嫌いだからな」


 グッジョブ。ダンディなおじさま。いや、領主さま。


「すまんが一人ずつ簡単に自己紹介をしてもらえるか?ギルドからおおよその事は聞いているのだが、我が領の安定に貢献してくれた皆自身の口から聞きたいのだ」


 そして私たちは自己紹介を行った。領主さまがザンネンの自己紹介の時に、どこかかわいそうな人をおだやかなに見つめるかのような表情だったのは見逃さなかったけれど、誰でも一度はそうなるのは仕方がないのだ。ザンネンはそんな事を気にするような細かい男ではない。


 私たちの自己紹介が終わった後で、ベイハムさんが私へ視線を向けてきた。


「君がミリアさんか。噂には聞いていたが本当に美しい方だ…。ジェイドとは面識があると聞いたのだが、本当か?」


「はい。この街へ来る途中で、たまたまお声がけいただきまして。その際にジェイドさまよりご支援いただいた事には大変感謝しております」


「ふむ…」


 ?何か思うところでもあるのか、話はそこで途切れる。


「吾輩はジェイド・ミリアルドだ。ベイハムは父にあたる」


 私以外のメンバーはジェイドと初対面であるため、ジェイドも自己紹介を行った。


「さて、本題に入るか。今回の地竜討伐はご苦労だった。地竜が万が一西の森から出てきてこの街へ近づいていれば、冒険者や兵はもちろんのこと、街の住民たちにも大きな被害が出ていた可能性があった」


 あれ硬くて大きかったもんなー。街に来ていたら大惨事になっていたのは間違いない。


「そこで君達に渡す報酬だが、一人当たり金貨2500枚ずつを用意した!今後の活躍にも期待しているので、コレを活用して装備を整えたり、英気を養って欲しい」


「「「金貨2500枚ーー!!??」」」


(一気に億万長者きたー!!)


 私と【金貨2500枚の魔力】によって緊張感から解放されたエリーの目にはもはや¥のマークしか映っていないに違いない。


 生涯賃金はもう稼いだんじゃないだろうか。これで悠々自適の異世界スローライフ(元男)が始まるのでは…。



「なお、君たちは一か月後に国王陛下に謁見してもらう事になった。それまでの間に陛下に失礼が無いようにある程度の礼儀作法を覚えてもらいたい。ワシにとっても自領での快挙だから、基本的なマナーなどで失敗してもらう訳にはいかんのだ。報酬金の金額にはそういった場に合わせた服装などの準備金も含めていると思って欲しい」


 そんなに甘くはなかった。


 細かい【マナー教室】の日程などは執事さんから説明されるそうなので、私たちは退室しようとするが…。


「ミリアさん。君は少しここに残ってくれ」


「デスヨネー」


「…?何のことだ?」


「いえ、失礼しました」


 トーマスたちは執事さんと一緒に先に退室していった。残された私はベイハムさんとジェイドと三人きりである。


 …護衛とかいいの?いや、どこかに隠れているのかも。



 そして続く沈黙。


(呼び止められたのに何で沈黙が続くのよ…)



 しばらくした後で沈黙を破るものが現れた。


「ミリア。実はそなたに婚約を申し入れたいのだ」


 ジェイドが一転突破を仕掛けてきた!


 ベイハムさんの顔を思わず見る私。


(その話は今日はしないんじゃなかったのー!?)


「ミリア、そなたは非常に美しい。そして貴族の子息相手に物怖じしている様子もなく、会話をしてみればある程度の教養もあるように感じる」


「あの、ええと、私はそもそもただの平民…あれ?平民なのかな?あれ?」


 転生者である私に身分などは関係ないが、貴族でない以上は平民だろう。


「これからの【淑女のマナー教室特別コース】を受ければ、そなたは貴族の子女に勝るとも劣らぬほどの美女に成長するハズだ!」


「え!?いや、それと婚約とは何の関係が…?」


 そもそも婚約自体お断りしたいのだが、実父の目の前で意中の女性にフラれてしまうような男性は、かわいそうで見ていられない。


 せめて二人きりの時にお断りするのが元男としての矜持なのではないだろうか。


「当然関係がある。自分の愛する女性がもっと素晴らしい女性へと成長する為のキッカケがあるというのに、そなたに勧めないワケにはいかんだろう!」


 うぐ…。前世は非モテ童貞だった私としては羨ましい限りである、ど真ん中のストレート勝負だ。4番バッターとしては見逃すワケにもいかず、振りに行くしかないが、とんでもない剛速球で打ち返せる自信が無い。


 でも男とそういう関係になるつもりは今のところはない。


(どうやって切り抜けよう…。ストレートに断るのも今後の付き合いを考えるとマイナス面が多そうだし、【受け流す】のがベストなのかしら)


 そして私は閃いた!


「…大変ありがたい上に光栄なお話ではあるのですが、私は冒険者として活躍し始めたばかりの身ですから、しばらくは冒険者として活動させていただきたいのです。せめて1年ほどお待ちいただけないでしょうか?」


 そこで今まで発言していなかったベイハムさんが割り込む。


「ふむ、1年経ったらどうするのかね?」


「一度この街へ戻ってきます。その時の状況にもよりますが、お返事などはその時に…」


「ミリアさんにとっても、息子にとってもその選択が良かろう。ジェイド、お前はその時までにさらに精進し、ミリアさんを口説き落とせるようになることだ」


 ベイハムさんがジェイドにニヤりと話かける。


「とりあえず陛下との謁見までは勉強をして欲しい。謁見が終われば自由に冒険者として生活してもらって構わないからな。その為の迷惑料も兼ねているぞ」


(2500枚ですからね!それくらいはお受けします!)


 だがこの時の私は気が付いていなかった。自分が天然だということに。

【忘れた頃に】


「フン!フン!フン!オルァァァァァ!!!!ハァハァハァ…」


ほとばしる汗と暑苦しさ!!!


「1274番!筋肉への愛情がまったくもって不足しているぞ!自分の筋肉を愛せないヤツがミリアを愛せるとでも思っているのか!?」


「…ッハ!?!?目が覚めました教官殿!」


「おのれの筋肉を愛し、筋肉の成長を喜ぶのだ!幸いここにはお前の仲間は無数にいるだろう!」


「「「はい!!」」」


「よし!では訓練続行だ!」


今日も訓練は順調だな。


…そう思っていたら、何者かが肩を叩いた。


「ここの次のギルマスはソーマだ。受付嬢からやり直しなさい。コレが衣装だ」


「それだけは止めてーー!!」


ごめんなさい、いつものです。


ちなみに本編とは関係がありません。


※35話のサブタイトルを変更しました。


いつも私の小説をお読みいただきありがとうございます!


引き続きこの小説をお楽しみいただければ幸いです。


ぺこり。

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