35話 ミリアルドの領主さまに謁見します
前話のあらすじ:エリーとお風呂でくんずほぐれつしました。
宿でのんびりと疲れを癒していた私たちのところに、ギルドからの連絡員が来た。
彼が言うには、ミリアルドの領主さまから地竜討伐の報奨金を頂けるそうだ。謁見するのは1週間後。
ミリアルドの領主さま…つまりジェイドのお父さんだ。
(つまりセットでジェイドに会うことになるのかしら?)
そして、私のところには領主さま直筆の招待状がある…。
領主さまの右腕として活躍しているらしい方が、直接書状を持ってきてくれた。
(…これは…どう考えてもそういう意味よね?)
さておき、私はただただ異世界転生してオーバースキルを手に入れただけで、他はオーバースペックな容姿があるだけだ。
ただしそのオーバースペックな容姿は、ことのほか効果的であるらしく、色んな面で役に立っている。
領主さまから直々にお呼びがかかるということは、「ジェイドの妻になれ」とか言われるのかもしれない。今のところお断りだけど。
そしてトーマスたちと相談して、正式なお返事を送った。
もちろんお金が貰えるのであればそれにこしたことはない。みんなの目が¥マーク…。私とエリーだけだった。
トーマスとザンネンはもっと先のことを見据えているのか、地竜の報奨金で潤うことよりも、別のことが気になるようだ。
…これからの事かな。
私たちは大きな功績を成し遂げた。今後ドンドン有名になっていくかもしれない。
そうなればトーマスのパーティーはもちろん、私も忙しくなっていくだろう。
領主【ベイハム・ミリアルド】と謁見するまでの期間に、私たちは地竜との戦闘に関する細かい説明や、どうやって討伐したのかなどを冒険者ギルドに報告したりしていた。
私の時間停止が大前提の討伐方法なので、報告しても意味が無い気はしたのだけれど…。
ドラゴンは硬いウロコに覆われており、防御に優れるだけではなく、頻繁にブレス攻撃を繰り出してくるので接近するのも難しいらしい。
これまでのドラゴン討伐というのは軍の魔術師による一斉攻撃で少しずつダメージを与えるのが当たり前であり、その時間稼ぎをする前衛たる兵士たちは使い捨てのような有様だったそうだ。
しかもドラゴンの中でも、飛行する種類とは違い、地竜自体が地上で生活する事を前提として進化した種であるので、ウロコも硬く、本来であれば非常に攻めづらい相手らしいのだが、時間が止まってしまっては地竜も手も足も出せない。
私は新しく覚えたスキルも含め、時間を制御することが出来ることによって身の安全が保障される安心感と、この能力を間違った方向に使ってはトンデモないことになる恐怖感に襲われていた。
(なにより並行世界よね…)
5秒後の未来を見て相手の行動を知り、過去に飛び相手を攻撃することも容易い。
ただし私は凡人クラスの腕力しかない女性の体であり、攻撃力が非常に低いので自分では有効打を与えられない場面が多いのが現状だ。魔法もほぼ使えないようなものだ。
(考えなきゃいけない問題も多いわね…)
私はとんでもないスキルを持ってはいるけど、自分自身が強いわけじゃない。今は仲間に攻撃面で頼らなければ、防御に優れる相手に負けることはないにしても、勝つことも出来ないだろう。
自分が最強のスキルを持っていても、最強の戦闘力があるのではない。
仲間がいないと地竜を討伐出来なかったことを考えても明白だ。
領主ベイハムさまに謁見する日がやってきた。
私たちは領主さまが用意してくれた馬車に揺られて移動しているのだが、エリーが珍しくガチガチに緊張してしまっている。
「エリー。アナタがいなかったら多分地竜は討伐出来てないわよ?」
(少し緊張をほぐしてあげよう)
私はトーマスとザンネンに目配せする。
「エリー、MPを転換する大魔法を使えるのは、この世界ではお前ぐらいしかいないだろう。胸を張って領主さまに会えばいい」
「そうだね、エリーは優秀だからね。けん玉しか才能が無い僕からすれば…」
「「いや、ザンネンのけん玉への情熱には誰も勝てないと思う」」
でもザンネンもいつかすごい能力が開花しそうな気がするのは私だけだろうか?…。気になる。
「むー、魔法への情熱ならアタシだって負けないからっ」
ザンネンがいい感じでエリーの緊張をほぐしてくれたようだ。
屋敷に到着した私たちは執事風の方やメイドさんにお出迎えされる。
(メイド服すごいかわいいんですけどナニコレ、うらやましい)
その内私も買おう。
そんなことを考えている間に執事さんに案内された私たちは会議室のような広々とした部屋に案内された。
「父上!吾輩は今日こそ一世一代の大勝負に挑む決意で婚姻を!」
「…ジェイドよ、今日はそんな話をする予定はないのだ。第一いきなり過ぎないかそれ?」
「…私帰ってもいいかしら?」
【とある町娘の恋愛事情】
「はぁー。トムったら何考えてるのよ!私というかわいい幼馴染がいるのに、【ファンクラブ会員】になっちゃって!!小さいころからずっと尽くしてきたつもりなのに酷すぎるわ!」
目の前の幼馴染が激怒している!
「あのー…。僕はここの領主さまの騎士だったから、ミリアさんどうのこうのじゃなくて仕事で親衛隊に入ったんだけど…」
だが彼は口とはまったく違う事を考えていた
(ジークミリア!ジークミリア!)
ごめんなさい、いつものです。
ちなみに本編とは関係がありません。
いつも私の小説をお読みいただきありがとうございます!
引き続きこの小説をお楽しみいただければ幸いです。
ぺこり。