33話 『時間を【制御】するチカラ』
前話のあらすじ:植木鉢ってどうして後ろに隠れたくなるんでしょう
見慣れた我が家…じゃなくて借りている部屋に戻ってきた。それほど長い時間離れていた訳じゃないハズなのに、とても永い間ぶりに帰ってきた気がする。
当たり前だが、淑女のたしなみとして最初にお風呂に入った。
「あー!やっぱりお風呂サイコー!生き返る!」
久しぶりに洗う自分の身体には相変わらずちっとも欲情しないが、ここ最近運動量が多いので少し筋肉がついてきた気がする。
(これは由々しき事態に違いない!美少女(元男)として筋肉がつきすぎるのも考え物かな。いわゆる抱き心地のよいボディーを維持するためにも、肉弾戦闘は控えめにすべきなのかしら)
そんなすっかり女性よりの考えが身に付き始めたことにも特に違和感が無くなりつつあることに、ちょっと寂しさを感じる。
(いや、抱かれる予定も無いのに何考えてんのよ、まったく…はぁ…)
森ウルフやらなんやらの臭いをキレイに落とし、生き返った私には一つやらなければならないことがある。
「すっかり忘れるところだったけれど、森ウルフの群れや地竜を倒したことでスキルが上がったりしてないか確認してみようかな」
久しぶりにウィンドウを開いてみる。
マスター名:ミリア・マンシュタイン
年齢:18歳
性別:女性
職業:時空魔導士
HP:100
MP:500
スキル:【時間制御】(時間停止レベル5・時間跳躍レベル1)・【空間制御】(空間跳躍レベル1)・【異世界言語聞き取り発音】・【異世界言語読解記述】
装備:布の服
女神【サリア】の指輪
ゴブリンのショートソード
(…え?)
HPとMPは成長していない。そちらは戦闘で経験を積む以外の方法で成長するのかな?今の所は不明である。
それよりもスキルが増えて、時間停止もいきなりレベル5まで上がってるんですが地竜すごすぎません!?ゲームなら経験値うまー!と喜んでいい所なんだろうけど…。
まぁでも、天才魔女っ子のエリーとトーマス、ザンネン。そして私の時間停止が無ければ勝てないレベルの相手だったので、普通ならゴブリンとか、ぷよりんとかを倒して少しずつ上げるところを、色々すっ飛ばしてしまったのだろう。時間停止がチートすぎる。
ちょっと許容出来ないスキル名が並びすぎて理解が追い付かない。仕方がないので【時間制御】のスキルツリーから一つずつ確認していくことにする。
【時間停止レベル5】:自分と任意の対象を除いた、全ての存在の時間を10分間停止する。
(今までの【時間停止レベル2】でも1分も時間を止められてスゴかったのに、10分ですって!?10分もあったら色んなイケナイ事が出来ちゃうじゃない!)
そう!10分もあれば、あんなことやそんなことから国王暗殺まで何でも来い…。そんな犯罪行為で楽しい生活を捨てるつもりはないのでやらないけど、10分もあればかなり色々なことが出来るのは間違いない。
ちなみに細かく確認すると、レベル5に上がる際に過程をすっ飛ばしてしまったレベル3とレベル4はこんな感じだった。
【時間停止レベル3】:自分と、自分と時を共有する事を許した存在を除いた、全ての存在の時間を2分間停止する。
【時間停止レベル4】:自分と任意の対象を除いた、全ての存在の時間を5分間停止する。
(レベル4から時間を止める対象が任意になっているのは、あの面倒くさい対象設定を省けるってことね。これなら不測の事態でいきなり強襲されたりしても対応できるわ)
そして一番気になる【時間跳躍レベル1】は見るのが怖いので後回しにする。逃げじゃない逃げちゃダメだ。でも後回しなら許してもらえるハズ。
ということで先に新しくスキルツリーが出てきた【空間制御】の【空間跳躍レベル1】から見ていく。
【空間跳躍レベル1】:自分を同じ惑星上の任意の場所に跳躍させる。跳躍時に時間は経過しない。
※注意点:自分の肉体が耐えられないような場所への跳躍はオススメ出来ません。火山の中や深海の底や落下したら死亡するような高さの空中、地中への跳躍は控えましょう。また、成層圏より外の空間へは移動できません。跳躍する時は安全第一で。ご安全に!
(なんかやたらとスキルの注意書きが丁寧なんだけど、これ一体誰が書いてるのかな…?しかも今まで注意書きなんて出て来なかったのに、いきなり登場したわね)
空間跳躍についてはつまり、やろうと思えば屋根の上だろうが違う大陸だろうが、マントルの中だろうが移動出来るわけだ。とんでもないスキルである。もはや人間じゃない気がするが、まだ人間でいたい。
そして後のことを考えるとそのまま目を背けたい、というかまだ人間でいるために確認したくない。
でも夕食までそんなに時間がある訳じゃないので、見ざるをえない。
(女は度胸!ポチっとな)
【時間跳躍レベル1】:自分を過去もしくは未来へ跳躍させる。跳躍出来る時間は過去未来ともに最大で5秒まで。
※注意点①過去への跳躍について:過去へ跳躍した場合は元の時間軸へ戻ることは出来ません。過去を自分の行動で改変した結果がそのまま反映された世界を形成し、その世界に存在することになります。スキル使用前の世界はパラレルワールドとして別世界になります。
※注意点②未来への跳躍について:スキルを発動した時点で起こっていた全ての事象を反映した未来へ移動します。未来へ跳躍した場合は、スキルの効果時間が切れると元の時間軸へ戻されます。元の時間軸に戻った時に違う事象が起これば未来が変わります。この場合も、スキル使用時に見た未来はパラレルワールドとして別世界になります。
※注意点③パラレルワールドについて:時間跳躍を使用するごとにパラレルワールドが一つ作成されますが、作りすぎると後にあなた自身が後悔することになると思いますので、ほどほどにしておくことをオススメします。
「ないわー……」
無事に人間を卒業出来たようなので、めでたしめでたし…。
~Fin~
「めでたくないし、終わっちゃダメでしょ!?どうするのよこのスキル!トーマスたちと冒険者ギルドになんて言えばいいのよー!?」
(そもそも時間跳躍スキルの注意書きは、まるで経験者が初心者の手引きを残したかのような、書置きになっているような気がするんだけど、書いたの誰よ本当に!)
…ただでさえリング際に追い込まれている私に、容赦なく追い打ちをかけてくるムキムキの姿とリング脇で私を応援するジェイドの姿が目に浮かんだ。…なぜ今浮かんだ。消えてよし。
(これはちょっと置いておこう。今考えなくてもいいよね。後々ゆっくりお披露目でも。ご飯食べてゆっくり休んで、心をリセットしてからでも遅くはないわよね)
夕食の時間になるまで寝よう。
そしてそのまま私はベッドに沈むのであった。
【ミリアファンクラブ会員No39の日常】
私はミリアファンクラブ会員No39。通称39番だ。
ミリアファンクラブの会員すべてにナンバーが割り振られているが、その中でも親衛隊の隊員は番号が若い。
私は1500人(増えた)いる会員の中で39番目、それくらいには優秀だ。
その優秀だと思っていた私の自信を打ち砕く出来事が起こった。
ミリアさまが目の前で消えた。
それも何の前ぶれもなくだ。
…ジェイドさまに何と言い訳しよう。
ごめんなさい、ネタです。久しぶりにやりました。
ちなみに本編とは関係がありません。
いつも私の小説をお読みいただきありがとうございます!
引き続きこの小説をお楽しみいただければ幸いです。
ぺこり。