31話 ようやく出発のときが訪れましたが、ネズミが潜んでいました
前話のあらすじ:地竜の輸送に行くつもりなのに、書きたいことが多すぎて話が逸れたようです。
「吾輩には気づいていないようだな」
「はい、ジェイドお坊ちゃまにはまったく気づいていないようです」
ポコ!
「アイタタタ…何を…?」
それにジェイドは答えない。気付かれれば困るのは当然なのだが、自分以外の野郎からミリアに気付かれていないなんてハッキリ言われるのは心外である。ここに吾輩はいるのだ。
もちろん吾輩は暴力なんて嫌いなので、従者を叩いたのは【ふんわり、でもいい音だけ鳴る】という大変難しい技術を両立させたチョップである。
世は広しと言えども、このチョップを繰り出せるのは吾輩だけであろう。
「親衛隊総帥たる吾輩が、今回の任務に参加していることがバレてはいかん」
「心得ております」
その一方で、ジェイドの存在にまったく気が付いていないミリア達は順調に地竜の死体がある場所へ到着し、解体作業を開始する。大きい分日没近くまで時間がかかったが、なんとか荷馬車や台車に積み込み森を後にする。
作業をしている冒険者たちがどう見てもミリアファンクラブの会員。しかも親衛隊も混ざっているのではないのかと、私は疑いの眼差しで見ていたものの、あっさりと輸送隊が編成出来たことには私も感謝しなくてはいけないので、黙っていることにした。
あと、変にそれを追求しても面倒くさいことに巻き込まれるだけだと、わかりきったことだったからでもある。
途中で何体か森ウルフが出現したが、すべて私の時間停止スキルとトーマス・ザンネン・エリーの活躍で、他の輸送隊のメンバーが気付いた頃には既に森ウルフの死体だけが残っているという、知らないものが見れば目を疑うような怪奇現象が起こっていた。
…もちろん筋肉だるまも同行しているので、目が疲れているのであろう。だとか、色々と声をかけて私のスキルについてごまかしていた。
ミリアファンクラブの会員であっても、まだスキルのことまでは知らないはずだ。それに地竜なんて討伐しちゃったし、もう隠す必要なくない?とも少し思っていた。
「ところでトーマス。今日の夜だが宿はもう取ってあるか?」
ムキムキがトーマスに話しかける。
「いや、俺たちはまだだな。ミリアはどうだ?」
トーマスたちは元々パーティーを組んでいたため、3人とも同じ宿に泊まっていたようだが、今回の依頼に出発する前に一旦引き払ったようだ。泊まりがけの予定だったので当然そうだろう。
私はジェイドからもらったお金にものを言わせて、街の高級宿をまだ引き払っていない。
「私はザ・イーグル・ミリアルドに宿を取ってて、予約もまだ残ってるわね」
「「「ザ・イーグル・ミリアルド!?」」」
三人とも驚いているようだ。やっぱり駆け出し冒険者の私が一泊銀貨6枚の宿に泊まるのは驚かれるよね。
「あー…とある方に路銀をいただいて、そのお金で泊ってるのよ…あはは…」
嘘はついてない、本当のことだ。
「「「…は?」」」
あははー、そうですよね、そうなりますよね。
「ちょっとお姉ちゃん!ザ・イーグル・ミリアルドに泊まれるほどのお金を誰にもらったの!?」
「そ、そうだよ、毎日銀貨5枚超の宿泊代は、僕らでも厳しい金額なんだよ!?」
「…ミリア、人に言えないような悪いことに手を出していないだろうな?自分の身体は大切にしないといけないぞ」
(いやいや…、忘れがちだけどそもそも私は元々男だったし、そんなことはしませんよ)
若干1名勘違いをしているが、私はジェイドに貢がれただけである。それも自分から要求した訳でもないし、何もやましいところ…受け取った以上はやましいのかな?でも男からプレゼントをもらうくらいのことは、たまにならあるでしょ!?
もちろん元は男性だし、非モテ民だったので普通の女性がどういう頻度でプレゼントをもらうかなど、私にはわからない。少なくとも恋人がいればクリスマスや誕生日や、付き合いだした記念日などでプレゼントをもらうことは普通だと思ったけど、それは前世の地球での話であり、この世界がどうなのかは知らない。
私が頭だけではなく、目までグルグルさせていると、世話好きトーマスが更に追い打ちをかけてくる。
「ミリア、若い女性の生活が大変なのはわかるが、冒険者なら冒険者らしくお金を稼がないといけないぞ。いくらスキルがあるとはいえ、これまでソロで活動していたミリアが、ザ・イーグル・ミリアルドに泊まるほどの金を稼ぐのは大変だっただろう」
「お姉ちゃん苦労してきたんだね…」
「ミリア…」
限界である。
みんなの勘違いが留まるところを知らないかのように加速していくので、私は待ったをかけることにした。
「あのー…。みんな勘違いしているようだけど、私は何もやましい事をしたわけじゃないのよ?ただ、スポンサーというか、たまたま出会った方に貢がれただけで…」
「「「いやいやいや」」」
きれいにハモるなー。
「あのー、そちらの女性がおっしゃっていることは事実ですよ。街の入り口でその様子をたまたま見かけたので、間違いないです」
冒険者風の服装をしているものの、どこかのお屋敷に勤めている執事のような50代ぐらいの男性が、私に助け船を出してきた。
まさに渡りに船である。
「ほら、私が言った通りでしょ?」
「見てた人がいるんだったら、本当なんじゃないー?ありえないことだとは思うけど、お姉ちゃんも否定してるしさー」
「ふむ、それもそうだな」
エリーからさらに援護射撃が入り、トーマスも納得してくれたようだ。
そんなやり取りをしている間に、私たち&ミリアファンクラブの面々&ネズミのように潜んでいるジェイド&ジェイドに命令されてミリアに助け船を出した執事&変態は、ミリアルドに街へ帰りついた。
いつも私の小説をお読みいただきありがとうございます!
今の今まで小説情報で作者名を手入力してはいけないことに気付いていませんでした。
どんだけやねん@@; 他作品見づらいやん@@; アホの子か@@;
…アホの子や!
ということで、作者名クリックが出来ないのに、気にかけてくださっていた皆さまに感謝が絶えません。本当にありがとうございます!
…うっせぇわ!
すいません、言ってみたかっただけです。許してください。ネタです。
引き続きこの小説をお楽しみいただければ幸いです。
ぺこり。