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29話 ギルドに報告……したら大変な事になりました

前話のあらすじ:エリーと一緒に毛布インしました

 翌朝、目覚めた私は妙な拘束感を感じたので、毛布をめくって中を見てみると、エリーが私に抱き着いて寝ていた。


 テントの外からは、トーマスとザンネンの声が聞こえるので、二人はもう起きて活動しているようだ。


 エリーを起こそうかどうしようか、考えているとエリーが目を覚ました。


「んにゅ……。お姉ちゃんおはよう……。むにゃむにゃ」


(なにその可愛らしいお目覚め!)


 やろうと思っても、恥ずかしくて私には出来ないだろう。


 気を取り直して、エリーに挨拶する。


「おはよう、エリー。トーマスとザンネンはもう起きてるみたいよ。私たちも準備してテントの片付けしなくっちゃね」


「ふわぁぁ……。うん! ゆっくり眠れた! ミリアお姉ちゃんの毛布、暖かくて寝心地が良かったわ。ありがとう」


「どういたしまして。じゃあ、準備を済ませましょうか」


 私たちは髪を整えてから歯を磨いて、お互いに身だしなみをチェックしてからテントを出た。


 トーマスとザンネンはもう自分たちのテントを片付け終わって、朝食を食べていた。


「二人ともおはよう!」


「トーマス、ザンネン、おはよう。今日もよろしくね」


「ミリア、エリー、おはよう」


「おはよう、やっと起きてきたか。テントを片付けて朝食を食べたら、森ウルフの毛皮を回収してから、ミリアルドへ戻るぞ」


 私とエリーがテントを片付けていると、朝食を食べ終わったザンネンも手伝ってくれた。テントの片付けを終えてから、朝食を食べる。


 朝食はパンと干し肉にしたのだけれど、固いパンでも美味しかった。


「よし、じゃあ森ウルフと戦った場所へ向かうぞ」



 私たちはそれぞれ森ウルフの毛皮をかついで、森の出口を目指す。


 せっかくここに来ているので、ついでに癒し草を少し採取しておいた。


「たった一日だったけど、長い冒険だったわね。でもいい経験だったと思うわ」


「ああ、まさか森ウルフだけではなく、地竜とも戦うことになるとはな。生き延びられてよかったな」


「あはは! トーマスはおおげさだなぁ。僕も地竜は怖かったけど、これでもっと強くなれた気がするよ」


「アタシにかかればあんなでっかいだけのトカゲ、楽勝よ! 最初からそう言ってたでしょ? あ、で、でもミリアお姉ちゃんがいてくれたおかげなんだから……」


 会話を弾ませながら森を抜けて、街道の三叉路まで戻ってきた。そこから町へ戻るまでも、あっというまだった。


 見慣れた門番が私をチラッと見て、目をそらす。


(あぁ!! そういえば私たち今、臭いんだった!)


 時間を止め続けて宿まで戻った記憶がよみがえる。


 でも今回は毛皮もあるし、トーマスたちを待たせてまでお風呂に入るわけにはいかない。


 美少女(元男)として、美少女としてはあってはならない臭いを振りまきながら、冒険者ギルドへ報告に向かうのか、やはりお風呂に入るのか……。


 少しだけ迷ったが、これから冒険者としてみんなと冒険していく上で、臭いなんて気にしていたら冒険者失格だ。


 私は気にしない事にして、みんなと一緒に冒険者ギルドへと向かった。


 一日しか経っていないが、冒険者ギルドがなぜか懐かしい。ロビーは相変わらず冒険者であふれかえっている。


 私たちがソーマのカウンターに向かっていると、ソーマが私たちを見つけて、カウンターから出てきてくれた。


「皆さんおかえりなさい! 西の森の調査と、森ウルフの討伐の結果はどうでしたか?」


「いい報告もあるが、微妙な報告もある。地竜が出た」


「地竜ですか!? これはマスターも交えて報告を聞いた方が良さそうですね。マスターは執務室にいますから、一緒に行きましょう」


 ザイゲルさんの執務室へ向かって歩くが、私の頭の中は『あの事』でいっぱいだ。


(今日も筋トレしてるんだろうなー。ハアハア聞こえてくるんだろうなー。やだなぁー)


 複雑な気持ちになりながらも、執務室の前に到着する。


「あれ? 今日は全然ハアハア言ってないわね」


「今日はミリアさんのみならず、トーマスさんやザンネンさん、エリーさんも戻ってくる予定だったので、受付嬢が交代でマスターを監視しているんです」


 ソーマが胸を張りながら、やってやりましたと満足気な表情を浮かべる。


 やっぱりソーマは優秀である。


 コンコン!


「マスター。ミリアさん達が戻ってきましたよ。入ってもよろしいですか?」


……筋トレ筋トレ筋トレ……。


 マスター! 筋トレ欠乏症で落ち込んでいる場合じゃないです! ミリアさん達が戻ってきたそうですよ!!


 欠乏症に悩むザイゲルさんと、受付嬢の声が聞こえてくる。


 私はまだしも、トーマス達はこの状況には耐性があるのだろうか。

 

「……トーマスたちは、ザイゲルさんのこういう性格は知ってるの?」


「俺とザンネンは慣れているな。エリーはあまり知らないかもしれん」


 エリーを見やると……、そこにはまさにドン引きという表情を浮かべるツンデレつるぺたロリ美少女がいた。


 同じ思いをした先輩として声をかけようとしたら、執務室の扉が開いた。


「ごほん、よく戻ってくれた。西の森の調査と、森ウルフの討伐依頼の結果はどうだった?」


 ザイゲルさんはちゃんと服も着ており、筋トレ欠乏症からも少し回復したようだ。


 そんなギルマスへ、トーマスが報告を始める。


「まず森ウルフの討伐は、ほぼ達成できたと言ってもいいと思う。合計で25頭倒したが、一部は森へ逃げ込んだ。逃げたとはいえ、恐らくもう癒し草の自生地まで出てくることはないだろう」


「おぉ! 25頭も倒したのか!? それだと輸送隊を向かわせる必要がありそうだな。後で手配しよう。癒し草の自生地にもう出ないというのはどういうことだ?」


「推測に過ぎないが、森ウルフはより脅威的なモンスターから逃れて、癒し草の自生地近くまで出てきていたようだ。森ウルフを討伐した後で周辺を調査したんだが、地竜がいたので討伐した。信じられないかもしれないが、確かに地竜だ」


 ザイゲルさんと、ザイゲルさんを監視していた受付嬢がポカーンとして固まる。


 ソーマがザイゲルさんの目の前で手をブンブン振って、ザイゲルさんの意識を引き戻した。


「地竜がいたことにも驚きだが、あの地竜をたった4人で討伐したのか!? 信じられないが、実際に西の森へ行けばわかることなのだから、本当なんだろう。普通なら軍を動員して討伐するか、Aランク冒険者の複数パーティーで対応するような相手だぞ」


「ほとんどミリアの時間停止と、エリーの魔法のおかげだ。俺とザンネンは補助しただけにすぎない」


「さすがだな。地竜を恐れた森ウルフが癒し草の自生地へ逃げてきていたとすれば、地竜が討伐されたから森ウルフがわざわざ自生地近くまで出てくることは無いだろう。よくやってくれた!」


 私も誇らしい気持ちになる。


 私一人では成し遂げられなかったことだけど、みんなと一緒に成し遂げた。


 今回の依頼の報酬も入るし、少しゆっくりしたらみんなと冒険しよう。


 そんな事を考えていると。


「今回の報酬の件は、領主様はもちろんのこと、国へも報告して対応させてもらう。なんせ地竜を討伐したのだからな。まずは地竜と森ウルフがまだ新鮮な内に輸送隊を向かわせたい。地竜だから解体のことも考えると数百人規模になるぞ」


 さすがに地竜ともなると、国にまで報告が上がるのか。


 もう止めようもないけれど、どんどん話が大きくなっていく。


 輸送隊の規模も数百人……、確かにあの巨体を考えると解体するのにも、運搬するのにも人手は必要だ。


「すまないが、運んでくれた森ウルフの毛皮4枚の買い取り代は、後でまとめて支払わせてもらって構わんか?」


「ああ、それで構わない。俺たちも輸送を手伝った方がいいか?」


「地竜の死体の場所を教えてもらう必要がある。輸送隊が編成出来るまで、ギルド内で少し休んでいてくれ」


 戻ってきたばかりなのに、また西の森へ向かうことになるが、死体の鮮度問題を考えるとやむを得ない。


 私たちは一旦ザイゲルさんの執務室を離れて、ギルドのロビーへ向かった。

【ギルマスと受付嬢の日常コーナー】


こんばんは。私はミリアルドの冒険者ギルドで働く受付嬢の一人です。


今日は私たち受付嬢とギルマスの日常を紹介したいと思います。


まず、ギルマスは隙あらば剣の練習か、筋トレをしようとするので、来客がある時は本当に大変です。


冒険者の相手ならまだしも、行政の偉い方やギルド関係の偉い方が見える時には、私たちが先手をとって動かなければなりません。


あ、今日もギルド本部の偉い方がお越しくださいました。


あの方は逆にギルマスを驚かせるのが楽しいとお伺いしておりますので、あえてそのままお通しします。


ハアハア!フンフン!うおぉぉ!!


ガチャ。


マスター。ギルド本部の方が見えましたよ(キリッ)


こ、これは先日の……!! 違うんです! 職務をサボって筋トレしていたわけでは!!



ごめんなさい、いつものです。


ちなみに本編とは関係がありません。


いつも私の小説をお読みいただきありがとうございます!


よろしければそのまま本編(後書きも?)をお楽しみください。


今なら受付嬢たちの日常を描いた短編小説を1本描き…ません。

この話は無かったことにしてください。


引き続きこの小説をお楽しみいただければ幸いです。


ぺこり。

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