28話 地竜討伐の夜
前話のあらすじ:エリーから一緒にお風呂に入ろうと提案され、動揺を隠せないようです。
「お、お風呂? 私とエリーが一緒に入るの!?」
「うん! 女の子同士だし、別におかしいことはないでしょ?」
それはそうだけれど、色々と問題が……。
そもそも私は自分以外の女性の裸なんて見たことがないし……。
だいたい元男だし……。
(でも興味はとってもあります! だって、元男だもの!)
やっぱり女になっても、元男としての興味は隠しきれないのだ。
とりあえず今は森の中だし、お風呂なんて無いので、いったんそれに関しての雑念を振り払った。
「そうね、帰ったら一緒に入りましょう」
「わーい♪ あ、べ、別にすごく喜んでるわけじゃないからねっ! ちょっとうれしかっただけなんだから!」
忘れた頃にツンデレするようだ。
夕食を食べ終えた私たちは、エリーに魔法で水を出してもらって、食器を洗って水筒に水を補充していく。
水を入れてもらっていると、エリーが話かけてくる。
「ミリアお姉ちゃん、その水筒の水を使って、タオルを濡らして体や顔を拭いておくといいよ。トーマスとザンネンは自分たちのテントで拭くから、私たちも拭きにいこうよ」
(な、なんですって!? いや、まだそんなわけには……!!)
てっきり町へ帰ってからだと思っていたので、まだ心の準備が出来てない。
今日はとりあえず順番に拭くのがベターだと思う。
「ありがたいんだけど、教えてもらったばかりのライトを、色々使ってみたいから後で拭くね。ごめんねエリー」
「あー……。魔法を覚えたばかりの時って、色々やってみたくなるわよね。アタシも経験があるわ。じゃあ、アタシは先に拭いてるねー」
「うん、私も後で行くわ」
エリーに申し訳ない気もしたけれど、いきなり一緒に体を拭くなんて、刺激が強すぎる。
自分の体はもう見慣れたけれど、他の女の子は別だ。
「あまり遠くには行くなよ。夜の森は危険だからな」
トーマスが自分たちのテントに入る前に声をかけてくれた。
「すぐ近くで練習するわ。気にかけてくれてありがとう」
トーマスに手を振った後で、私はテントや焚き火がある場所からほんの少し離れて、ライトを使ってみる。
「ライト」
暖かみのある光が周辺を照らす。蛍光灯のような白い光ではなく、白熱灯のような色合いだ。
大体10mぐらい先までは明るく見える。
(魔法って便利ね。私も色々勉強してみよう)
パーティーとして一緒に行動していく上で、時間停止以外にも出来ることを増やしておきたい。
(やっぱり、エリーが唯一使えないと言っていた聖属性の魔法か、剣の腕をあげるのがいいのかな。あ、帰ったらまずは剣を買い替えよう)
とりあえずゴブリンソードは買い替えるべきだと思う。
しかも、ゴブリンから奪って以来、一度もメンテナンスしていない。
普通は研いだりするべきなのだろうけど、ここ数日のスケジュールが色々と過密していたので、後回しになっていた。
何回かライトを練習して時間も経った、もうそろそろエリーも、体を拭き終わっているだろう。
そう考えた私は、テントへ戻る。
「おかえりお姉ちゃん。アタシはもう拭き終わったから、テント好きに使っていいよ」
「ただいまエリー。私も拭いてくるわ」
テントへ入り、まずは服を脱ぐ。
さすがに今日は森ウルフと対峙した後で、地竜と連戦だったので、かなりの汗をかいていた。
脱いだ服を小さい布袋へとしまい、生まれたままの姿で、体を拭いていく。
(今日はさすがに疲れたな。まさかあんなのと戦うことになるとは……。何とか勝てて良かったわ)
見慣れた自分の体を拭き終わったら着替えるのだけど、替えるのは下着と肌着だけ。
旅行に来たわけじゃないので、上着はそのままだ。
髪はどうしようもないので、クシだけ通してそのままだ。
一通り終わってからテントの外へ出ると、みんなはもう焚き火の消火にかかり始めていた。
「あ、ミリアお姉ちゃんも終わった?」
「ええ、ちょうど終わったところ」
「火を消したらもう就寝しよう。明日はミリアルドへ戻って報告を行うぞ」
「そうね、今日はさすがに疲れたわ。明日もよろしくね、トーマス」
私たちはそれぞれのテントに分かれて入る。
「ミリアお姉ちゃん結構いい毛布持ってるんだね! さすがのアタシでも、このクラスの毛布はちょっと買えないわよ」
ジェイドからもらったお金が無かったら買えない金額だったので、エリーが羨ましがるのも無理はない。
「じゃあ、私と一緒の毛布で寝る?」
「いいの!? さっすがミリアお姉ちゃん! 優しい♪」
エリーと一緒に毛布に入ったところで私は気づく。
(は、初めて女の子と一緒に寝る!? わ、私こんな野外で初の毛布インしちゃうの!? ど、ドキドキが止まらない……)
目がさえて眠れない私とは逆に、エリーはあっというまに寝息をたてはじめる。
……あれ? ドキドキはしてるけど、女性に対する欲情のようなものが全然……湧いてこない。
シチュエーションに慣れていないことで、ドキドキはするものの、だからといって隣で寝息をたてている美少女に対して、手を出したいとかそういった感情は湧いてこなかった。
あるとすれば、ツンデレだけれど素直に私を慕ってくれるようになってきた彼女に対する親しい感情だけだ。
先ほどまではバクバクと音を立てていた心臓も、落ち着きを取り戻してきた。
……寝よう。
まだ幼さの残る顔つきをした女の子の寝顔を見て、また一つ『男がなくなった』と寂しさを感じながらも、私も眠りにつくのであった。
ふと思いついたアイデアで、お米と小麦がギャグまみれの戦争をするコメディー短編を投稿していたら、後書きネタを用意する時間が無くなりました……。
申し訳ありません。
後日この話数にも後書きを追記します。
いつも私の小説をお読みいただきありがとうございます!
引き続きこの小説をお楽しみいただければ幸いです。
ぺこり。