27話 アレを倒したものの、日が暮れてきたようです
前話のあらすじ:地竜をやっつけた
みんなで倒した地竜を、それぞれが興味深く調べる。
「トーマス、こんな硬いウロコによく剣が通るわね」
「俺の剣はそれなりの品だ。ウロコとウロコの隙間を狙えば、刺さらないこともない」
私のゴブリンソードで試しにウロコの隙間を突き刺してみようとしたけれど、見事に弾かれた。
「目はそれほど硬くないね。なんとか僕の弓でもダメージが入って良かったよ」
「へっへーん! トドメを刺したのはアタシよ! あ、も、もちろんミリアお姉ちゃんのMPを分けてもらったからっていうのもあるからねっ」
「そういえばさっき、エリーはライトニングの威力に驚いてたみたいだったけど、どうしたの?」
(自分が使う魔法だから、威力を知らないことはないだろうし……?)
「うーんハッキリ言えば、ミリアお姉ちゃんに分けてもらったMPが思ったより多くて、威力が想定以上に高かったの。まさかあれほどの威力が出るとは思わなかったってわけ」
気になったのでパーソナルウィンドウを開いて、MPの数値を確認してみる。
そこには500と表示されていた。
「エリー、MPって普通の人だとどれくらいあるものなの?」
「アタシは天才だから800ぐらいはあるわ! 魔法学院の歴代魔導士の中でも、5本の指に入るくらいのMP量ね!」
……!?
ちょっと待ってほしい。
ツンデレつるぺたロリ天才魔導士のエリーで800。
しかも、魔法学院で5本の指。
(500って結構高い方なんじゃ……)
「エリー、いま確認してみたんだけど、私のMP500あるみたいなの。これって高い方に入るの?」
MP500ってどこかの車の型番か、銃器の名前みたいである。
「えぇ!? お姉ちゃんのMP、500もあるの!? 魔法学院でトップクラスに入れるよ!」
「や、やっぱり結構高い方なのね。エリーの魔法威力アップに役立ったのなら、良かったわ」
別段チートな数字では無さそうだけど、十分高い数字のようだ。
ちなみに他のスキルの確認もしようかと思ったが、とりあえず疲れたので今度にする。
「ふう。さすがに僕も疲れたよ。まさか地竜を倒せるなんて夢みたいだけどね」
ザンネンはため息をつきながらも、うれしそうだ。
「よく倒せたものだ。ミリアとエリーのおかげだな」
トーマスも疲れがどっと出たようだ。
その後、私たちは森ウルフを倒した場所へ戻り、毛皮を全て剥いだ。最初は私もその臭いが不快だったけれど、段々と慣れていった。
ちなみに毛皮の剥ぎ方はザンネンに教えてもらった。キレイに剥げなくて一頭分無駄にしちゃったのは、ナイショだ。
毛皮剥ぎには時間がかかり、日が暮れ始めた頃。
「もうそろそろテントの設営を始めよう。今日中にミリアルドへ戻れないこともないが、暗くなった森の中を移動するのは危険だ」
そういえばエリーの魔法で照明になるようなものはあるのだろうか?
「エリーは照明のような魔法は使えるの?」
「もちろん使えるわよ! ありがちだけど、ライトっていう初歩魔法。簡単だからテント張りが終わったら教えるね」
「ありがとう。後でよろしくね」
私とザンネン、エリーとトーマスに分かれてテントを張る。
私はテントを張ったことがないので、ザンネンに教わりながら作業を進める。
「ザンネン、この木はここの穴に通せばいいの?」
「惜しいけど、その隣だよ」
「あー! アタシ本当にこの作業苦手だわ! トーマスお願いだよー! 代わりにやって?」
「俺が代わりに全部やってしまったら、エリーの為にならんだろうが。経験だと思ってちゃんとやれ」
「ぶー!! トーマスのケチ!」
みんな地竜と戦っている時は、本当に緊張が漂っていたけれど、無事に倒せたことで余裕も出て、いつも通りの空気が戻ってきつつある。
私にとっても心地よい、暖かい空気だ。
そして、私たちはテントの設営を終え、焚き火を起こした。火を囲みながら、自然と会話が広がる。
火は人の心に安心感を与える。
人類が大昔から、生活の中で火の存在を大事に思ってきた証拠だ。
ザンネンが小さな鍋を火にかけて、スープを作ってくれているようだ。
その間に私はエリーにライトの魔法を教わった。エリーの言う通り、少し練習したら出来た。
この世界の魔法とは、本人の持っているMP量が多いか少ないかに、大きく左右されるそうだ。
使いたい魔法があっても、その属性に対する適正が無かったり、MP量が足りなければ使えない。
その反面、その属性に関する適正があり、MP量さえ足りていれば、魔法を発動させるイメージと、詠唱さえ出来れば魔法を扱えるという仕組みらしい。
「エリー、教えてくれてありがとね」
「み、ミリアお姉ちゃんになら、ちゃんと教えるわ!」
エリーは可愛らしい。
ふと、自分がすっかり女言葉にも慣れてきたことに気付く。
(やっぱり体は女性なんだから、段々と慣れてくるのね。男だった時には、こんなに自然に可愛らしい女の子と会話出来なかったな)
「ミリア、即席で悪いけどスープが出来たよ。飲むかい?」
ザンネンがカップに入った暖かいスープを差し出してくれる。
「ありがとう。いただくわ」
ザンネンがトーマスとエリーにも乾燥野菜と干し肉が入ったスープを配り、4人の夕食が始まる。
私たちは、地竜を倒せたことに話を咲かせながら、食事をとる。
「ミリア。もし良かったら、俺たちと一緒にこのままパーティーを組まないか?」
トーマスが切り出す。
私の答えはもう決まっていた。
一人で冒険者を続けるよりも、この仲間たちと一緒に冒険したい。
「ええ喜んで。これからもよろしくね」
「僕もミリアが一緒に来てくれるなら、冒険者として心強いよ!」
「やったー! これでミリアお姉ちゃんと一緒に生活できるよ! 帰ったら『一緒にお風呂』入ろうね!」
あ、私まだ童貞だった。どうしよう。
【ザンネンの日常を紹介するコーナー】
やぁ、僕だよ。
今日は僕の日常生活を紹介しようと思う。
5時 起床
6時 けん玉を練習する
7時 朝食
8時 冒険者ギルドに向かう
9時 トーマスやエリーと合流して、クエストに向かう。
12時 昼食 食べ終わったらけん玉を練習する
16時 ギルドへ戻り報告
17時 帰宅 弓の弦を調整したり、矢じりを研いだりする
18時 夕食
19時 けん玉を練習する
20時 読書
21時 就寝
どうだい?意外とけん玉練習してるでしょ。
スキルにかまけてたら、世界一の座はキープできないかもしれないからね。
僕はストイックなんだ。
ごめんなさい、いつものです。
ちなみに本編とは関係がありません。
いつも私の小説をお読みいただきありがとうございます!
よろしければそのまま本編(後書きも?)をお楽しみください。
今ならザンネンの愛用しているけん玉と、同モデルの最新型を差し上げます。
引き続きこの小説をお楽しみいただければ幸いです。
ぺこり。