21話 天才魔導士と愉快な仲間たちは、西の森へ向かう
前話のあらすじ:初めての仲間は、頼りになるベテラン剣士と、残念なスキルを持った苦労人ザンネンと、ツンデレつるぺた天才魔導士だった。
ギルドから出発しようとすると、ファンクラブ会員と思われる人達から応援が飛んできた。
「ミリアちゃーん! 頑張れよー!」
「ミリアー! 早く帰ってきてくれ!」
「おい、一緒に行く奴ら! ミリアさまに何かがあったら承知しねぇからな!」
「ミリアたーん! こっち見てー!」
……。
…………。
(どうリアクションすればいいんだろう……。無視してもアレだし、笑顔で手を振るのも、微妙だし、うーん……)
私は悩んだ末に、にこやかに手を振って応え、冒険者ギルドを後にした。
トーマス達と共に町の門を抜けたところで、トーマスが口を開いた。
「先ほど話をしていた件だが」
恐らく戦いになった時の話だろう。
「俺は剣士として、他の皆が攻撃されないように立ち回るのが役割だ。ウチのパーティーは元々、後衛によりがちだ。ザンネンは弓、エリーは魔導士だから、俺しか前衛がいない」
確かにそうだ、魔導士の私が加わった事により、さらにそのカラーが強くなった。
ただ、私は魔導士ではあるものの、直接的な攻撃手段は剣での戦いだ。
時間を停止している間は前衛と言えなくもない。
「一応これから生死を共にする事になるから、ミリアの戦闘スタイルや、時間停止の事をちゃんと聞いておきたい。構わないか?」
時間停止で他の仲間の時間を止めないように出来ることは、話す方がいい。
ただ、時間停止を実質上無限に行えることは、今はふせておいた方がいいと思った。
MPの消費は確認していないけれど、森ウルフ討伐後に町の門から宿の部屋に戻った際には、ずっと時間停止をかけ続ける事が出来た。
ただ、私のこの能力は危険過ぎる。
時間をほぼ連続で止め続けられる事は、国家間の軍事バランスを崩すレベルの話だ。
時間停止レベル2による、私が認めた存在というのが、どれほどの対象数なのか、わからないけど。
万が一、10万人の兵とともに、敵軍の時間のみを連続で1分止められれば、とんでもない事になる。
それは避けた方がいい気がした。
(私は世界を征服したいわけじゃないし……)
まだ出会ったばかりの仲間なのだ。
隠し事をするのは気が引けるが、連続停止については黙っておこう。
「職業は魔導士ですが、私は時間制御スキルで時間を止められる以外には、魔法のようなものは使えないわ。このショートソードで近接攻撃してる。時間停止の能力は時間制限があるから、時間を止められるのは1分間。最近スキルのレベルが上がって、私が時間を止めている間に他の人の時間を止めないように出来るようになったみたいね」
私は差し支えのない範囲で自分の能力について話す。
無駄に大きすぎる力はやはり、伏せておいた方がいいと思う。
何かのきっかけでバレるかもしれないけれど。
「……聞いていた以上の力だな。つまり、ミリアが許せば俺たち4人以外の時間を止めて、その間に攻撃を行う事が出来るのか?」
「実証した事はないけれど、そうなるわね」
我ながら恐ろしい能力である。
「ちょっと待って、じゃあミリアが時間を止める間に、アタシが詠唱してる魔法とかはどうなるわけ?」
エリーがもっともな発言をした。
(うーん、私は魔法の詠唱なんてした事がないし、時間制御のスキルに関しては女神様から強く念じるだけで使えるって聞いてたのよね。そこのところ、どうなのかな)
私は逆にエリーに質問してみる事にした。
「エリー。私は時間停止を行う際に、時間を止める事を強く念じるだけで、特に何かを唱えたりせずに、時間を止められるんだけど、普通の魔法だと、呪文みたいなのを唱えるの?」
私はこの世界へ転生してから日も浅い。この世界における魔法技術の仕組みは知らなかった。
「……え? ちょっと待って、そんな魔法? いや、ミリアの場合はスキルだから使えるのか」
つるぺたロリ天才魔導士のエリーが混乱しているようだ。
「私はこれはスキルだと認識しているから、魔法かどうかはわからないのよ。魔法はスキルとは違うの?」
素直にわからない事を質問してみる。
「えぇー!? ミリアの歳でそんなことも知らないの!?」
歳の事は余計だ。
だいたい私は、この世界ではまだ18歳だしエリーと2つしか違わないし、この世界に来てからは1年どころか1週間も経過していない。
「スキルは能力だから、詠唱したりする必要はないわ! でも、魔法は全て詠唱が必要なの! 無詠唱とか、そういった技術は存在しないわ! だから、ミリアが時間停止をする前に詠唱を終わらせておいた方が、時間が止まっている間の出来事に対して、余裕を持てるから聞いたのよ!」
なるほど、エリーはよく組み立てている。
ただ、私は魔法を使う人と一緒に戦った事などないので、結果を知らない。
「エリー。私は他の人と一緒に時間を止めた事がないの。だから、やってみなきゃわからないわ」
「ふむ、それなら実際にモンスターと戦う前にミリアの時間停止を一緒に体験してみればいいんじゃないか?」
(それが現実的ね)
「僕もそれがいいと思います。いざ戦闘になってからでは遅いですからね」
「アタシもそれに賛成。 まだ時間も早いし、一回試してみましょ!」
初めて時間停止レベル2を他の人間に使う事になる。
少しの緊張はあるけれど、試してみることに異論はない。
皆の安全の為にも、私の今後の為にも、これは重要な事だった。
【天才魔導士エリーの魔法講座】
アタシの魔法講座を受講しようだなんて100年早いのよ!
で、でも、どうしても聞きたいっていうんだったら、教えてあげないこともないんだからねっ!
あなた達はアタシほどの才能は持ってないんだから、この講座でわかんない所があったら質問するのよ!
べ、別に丁寧に教えてあげるつもりなんかないんだから!
(どうしてアタシの講座はいっつも、紳士的なお兄さんばっかり集まるのかな?)
???……ツンデレつるぺた美少女だからじゃないかな……。
ごめんなさい、いつものです。
本編とは関係ありません。
いつも私の小説をお読みいただきありがとうございます!
よろしければそのまま本編(後書きも?)をお楽しみください。
今なら、ツンデレするエリーを間近で見ながら食事を楽しめるランチバイキングチケットを差し上げます。
ぺこり。




