18話 アレが届いたので早速試着する
前話のあらすじ:チャラそうなチンピラを撃退した。
「うーん、やっぱり南区でレインコートを買って、それから西区で食料と野宿を快適にするグッズを買い込むかなぁ」
午後の行動予定を考えながら、いったん宿に戻る事にした。
野宿グッズを買い物するにしても、私の所持金は金貨2枚、銀貨3枚、銅貨28枚。
後のお金は部屋に置いてあるので、お金を取りに戻る必要があった。
宿に戻ると、宿のスタッフが私へ声をかけてくる。
「マンシュタイン様、南区の服屋からドレスが届いております。受付でお預かりしておりますが、お渡ししてもよろしいでしょうか?」
2日前に注文したドレスが届いたようだ!
「持ってきていただけるんですか? 助かります」
「すぐにお持ちしますので、おかけになってお待ち下さい」
私は高級宿のロビーに置かれたソファーに腰を下ろす。
(ドレス楽しみだったのよね! 後で早速着てみよう)
数日前まで男だったはずなのに、もうそんな事を忘れかねないほどの女ぶりだった。
ドレスについてあれこれ考えていたら、すぐにスタッフがドレスを持ってきてくれた。
「お待たせいたしました。こちらです」
「持ってきてもらってありがとう」
(さて、早速部屋に戻って試着……といきたいけど、とりあえず買い物を済ませなきゃ)
いったん部屋へ戻り金貨の入った袋を腰にさげてから、西区の中でも冒険者向けの雑貨類の品揃えが豊富だという店へ向かう。
「お店の情報はあらかじめソーマに聞いたけど、ここかな?」
冒険者ギルド程ではないけれど、大きい建物だ。
中へ入って行くと、地球で言えばアウトドア用品店のような店だった。
パーティー向けだと思われる大型の皮製テントから、保存が効く干し肉や豆類まで、何でも揃えてある。
(テントは同行する人が持ってるかもしれないけど、寝袋とかあるのかな?)
私は冒険者としては初心者なのだ。
自分で考えるよりも、近くにいた女性の店員さんに聞いてみる事にした。
「こんにちは。冒険者をしてるんですが、野宿用に何が必要なのかわからなくて……」
「いらっしゃいませ。お一人で行動する予定ですか?」
「いえ、西の森の調査の為にパーティーで行動する予定です」
「パーティーでしたら、テントを持っているかもしれませんね。毛布は持っていた方がいいと思います。あとはカバンが最低必要だと思います」
カバンは確かに必要だろう。
毛布をそのまま持ち歩く訳にはいかないし、他の物を持ち運ぶのにも必要だ。
「店内をご案内しながら説明しましょうか?」
「お願いします」
店員さんに案内されながら、必要な品物に目星をつけていった。
全部持ち歩くと大変なので、店員さんがカートを押して商品を運んでくれる。
(さすが大きいお店はすごいわね。他の冒険者のお客さんもたくさんいる)
私が一番悩んだのは、カバンだ。
リュックサックや手提げに肩掛けと種類が多い。私は悩んだ末に肩掛けのカバンにした。
毛布や着替えなどを入れなければいけないので、それなりにサイズの大きいカバンだ。
「ふー、これで一通り揃ったかな?」
「はい、1~2泊程度ならこれで十分だと思います」
最終的に私が購入したのは……
・毛布
・肩掛けカバン
・レインコート(皮製)
・タオル4枚
・クシと歯ブラシ
・水筒
・小袋2個
・紙10枚
・石鹸
・保存食3日分
以上だ。
色々と買いこんでしまった。
私はこの世界に来てからずっと高級宿に泊まっている。
タオルやクシなどの日用品は部屋のアメニティを使っていたので、生活必需品も一緒に買う必要があったのだ。
レインコートは南区で買っても良かったけれど、薄手の皮で作られた身動きの取りやすい、野外活動向けの物があったので、それを購入した。
紙はアレの時に使うのだけれど、美少女(元男)の口からは言えない。
レジで支払った金額は金貨5枚。
特に毛布とカバンがダントツに高かった。
「一緒に見てくれて助かりました、ありがとう!」
「こちらこそたくさんお買い上げいただいて、ありがとうございました」
こんな所でもジェイドに貰った金貨が生きてくる。
本来であれば、初心者冒険者には毛布なんて買えない。よくて体がすっぽりくるまるサイズの薄い布だ。
私はこの世界に来てすぐにジェイドと出会い、金貨100枚もの大金を受け取って(貢がれて)いるので、お金に関しては困っていないのだ。
(一度ぐらいはジェイドの家に挨拶しにいかなきゃね)
買った荷物をカバンに詰め込んでから店を出ると、もう辺りは日が暮れかかっていた。
「ドレスを試着しなきゃいけないし、今日は宿に戻りますか!」
カバンと金貨の入った袋を置いてお風呂に入る。
「ドレスを着るとなると、先にお風呂に入った方がいいよね」
高かったし汚したくないのだ。
もちろん自分のおっぱいを洗っているのだけれど、もう揉んだりはしていない。
もうこの体になってから数日経ったので、いまさら興味が湧いたりしなかった。
(体といえば……もともと男だった私が男の人を好きになることあるのかな……)
実をいえばジェイドにクラっと来た事はある。
でもまだ自分が男と恋愛するイメージが持てなかった。
ドキドキする事はあるけれど、それが男に対する恋愛感情なのか、自分でもまだわからないのだ。
私は童貞で、恋人も一度も出来なかった、恋愛がどういうものか知らなかった。
それに、この世界に来てまだ日も浅いし、冒険者としての生活も始まったばかりなのだ。
せっかく違う世界に来たのだから、世界を見て周りたい。
勇者になって魔王を倒そうだなんて考えは起こらないけど。
後から後から出てくる悩みに頭を抱えていたら……
ふと、私はなんだかんだで、ジェイドの事を考えていた自分に気付く。
「はっ!? いかんいかん! 私はまだその気になれない! というかそもそもこれが恋愛感情なのかわかんないんだってば!」
お風呂のお湯にブクブクと顔を沈めながら、真っ赤な顔を隠すのだった。
「ふう。なんだかお風呂でサッパリするつもりが、いろいろ大変だったわ」
お風呂から出て、自慢の黒い髪をとかしながら、やっと恋愛の事から気分を切り替える。
そう、ドレスだ。
ドレスを着るのだ。
「ジェイドに悩まされている場合じゃない!」
私は手慣れた動きで髪をとかし、下着を身に着け、風呂場を後にする。
向かうはクローゼットだ!
……結論。
小さい鏡なので、全身をしっかり確認できた訳ではないが、とんでもない美少女がそこにはいた。
「自分で自分を褒めるのもアレだけど、これは本当にキレイね」
やはり女性は服装で印象がまったく変わる。
「どこかのお姫様みたい」
このままティアラを乗せたら、お姫様だと思われても不思議ではない。
町で生活していると色んな女性を見かけるけれど、私ほどの美少女はいなかった。
「あちゃー、スマホがあったら写真撮れたのに……? この世界って写真とかあるのかな」
技術の進み具合は地球でいえば中世だ。
だが、冒険者ギルドのカード印刷機のように、この世界には魔法で機械技術を代用しているものがある。
この宿の水道設備だってそうだ。
「後で宿のスタッフに聞いてみる価値はありそうね」
ドレスを着て、写真を撮ってもらう。
良い写真になるに違いない。
後に私はこの判断を後悔する事になるが、それはまだ先の話である。
ドレスを着て夕食を食べに向かうと、私はもう誰からも視線を集める状態だった。
男性のみならず女性の宿泊客も私へ視線を投げかけてくる。
しかし、私はそんな状況はもう慣れているので、気にすることもなく食事を……。
(今日はワイン飲んじゃえ)
結構この状況を気に入っていたのであった。
【ザイゲル流剣術トレーニング講座のコーナー】
諸君、わたしの剣術トレーニング講座によく参加してくれた!
1回参加につき銅貨50枚は格安価格だぞ!
これから諸君らは、わたしのような大剣を振り回す為に必要なトレーニングをおこなう。
まず、片手で剣を持ち、もう一方の手には丸めた紙を持つ。丸めた紙を放り上げたら、それを大剣で素早く切る!!
この丸めた紙を空中で切断出来るようになるのが目標だ。
では、声を出しながら始めるぞ!
一に筋肉ぅ! 二に筋肉ぅ! 三も四も五も筋肉ぅ!!
???……マスター。本部の偉い人が見えたので、お連れしましたよ(キリッ)
……違うんです! 職務中に副業をしていたわけでは……。
すいません、いつものです。
本編とは関係ありません。
いつも私の小説をお読みいただきありがとうございます!
よろしければそのまま本編(後書きも?)をお楽しみください。
今なら、上半身裸のギルマスブロマイドを1冊まるごと差し上げます。
ぺこり。