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16話 怪人と再び相まみえる

前話のあらすじ:ミリアルドの町中を時間停止しながら()け抜けた

 クエスト報酬受付の受付嬢と、途中から合流したソーマと一緒にギルドマスターの執務室へと向かう。


「まさかとは思うけど、今日もハアハア聞こえてきたりはしないよね……?」


「今日は大丈夫だと思います。ミリアさんが報酬受付に行ってる間に、今日ミリアさんが来たという事は伝えてありますから」


(私は冒険者ギルドに来るだけでギルドマスターに報告が上がるような立場なの……)


「ソーマが最初にミリアさんを担当しているから、今後はソーマが全部窓口を担当したらいいんじゃない?」


「ミリアさんだけ特別扱いしたら他の冒険者さんから不満が出るじゃないですか」


「それはソーマにも悪いし、遠慮しておくよ」


 フンッ! フンッ! フンッ!

 ハアハアハア

 うおおお!


「……ねぇソーマ、今日もハアハア聞こえるし、うおおお!とか言ってるんだけど……」


「……ちょっと待っててください」


 ソーマが執務室の扉を開け放ち、中へと入りながら扉を閉める。


 ちょっと! なにやってるんですかマスター! 


 さきほどミリアさんが来るから筋トレは控えてくださいと、頼んだばかりじゃないですか!


 すまん! ちょっと時間がかかるだろうから、その間だけでもと思ってだな。


 いいから早く服着てください! 服! 急いで!


 扉の向こうからソーマとザイゲルさんのやりとりが聞こえてくる。


(やっぱり脱いでたのね……)


 ミリアルドの変態(軽度)は、今日も平常運転のようだ。


 とりあえず部屋からソーマの罵声が聞こえなくなったので、受付嬢と一緒に中へ入る。


 ソーマはザイゲルさんの背後に控えていた。


 私はザイゲルさんの座っているソファーの反対側に腰を下ろす。


「やあミリアさん。よく来てくれた」


「こんにちはザイゲルさん、まさかこの短期間でまたお会いする事になるとは思いませんでしたが……」


(相変わらずすごいマッチョボディーだ)


 クエスト報酬受付の受付嬢が報告を始める


「マスターに報告事項があります。西の森で森ウルフの群れが発生したようです。20頭以上の規模で、癒し草の自生地(じせいち)で、昨日ミリアさんが遭遇(そうぐう)されたとの事です」


「なんだと!? 西の森は広いから、群れからはぐれた個体が目撃される事はあっても、癒し草が生えている辺りは、森の中でも外側のはずだ。そこに20頭規模の群れが現れたとなると、一大事だな」


「はい、癒し草の採取場所として、低ランク冒険者がよく向かう場所でもある為、森ウルフが目撃された事は、ただちに冒険者に告知する必要があるかと」


「癒し草の採取クエストを受けるクラスの冒険者では、森ウルフの相手どころか、逃げるのも難しいだろう。告知は当然だが、癒し草は需要も多いから採取出来なくなるのは困るな。現地を調査して、可能であれば森ウルフの群れを排除せねばならない」


(ザイゲルさんがまともだ……)


 仕事でまともじゃなければギルドマスターになっている訳が無いので当然だ。


「ところで、時間を止められるミリアさんに聞くまでも無いかもしれないが、森ウルフの群れと遭遇した後はどうした?」


「逃げても追いかけられるかもしれないと思って、9頭倒しました。死体はそのままですけど」


「9頭も倒した!? 一人で?」


「そうなりますね」


「時間を止められるとは聞いていたが、森ウルフはかなり危険なモンスターだ。ミリアさんは戦いの才能もあるようだな」


 私自身は時間停止スキルのおかげだとしか思えない。あるとしたら、戦いの組み立ては上手かもしれない。


「そうでもないと思うんですが……」


「一人で森ウルフを9頭も倒したとなると、ギルドマスター権限でCランクに上げよう」


「え?」


 いきなりそんなにランクアップしていいのだろうか


「森ウルフ目撃の件は、ミリアルドの冒険者ギルド全体に告知するのだ。その際にFランク冒険者が撃退しただなんて知れたら、無謀な低ランク冒険者が森ウルフに挑みかねないからな。Cランク冒険者の凄腕が倒した。とした方がギルドにとっても、低ランク冒険者にとっても、良い形になるのだ」


 確かに、私が倒したと知られる事はほぼ無いにせよ、低ランク冒険者の保護という意味では、ザイゲルさんの提案は正論だ。


「わかりました。私が森ウルフを9頭倒した件までは公表されないんですよね?」


「もちろんだ。安心してくれ。冒険者カードを貸してもらえるか?」


「どうぞ」


 私は冒険者カードを取り出し、ザイゲルさんに差し出した。


 ザイゲルさんは執務机に置いてある機械に私のカードを通して操作する。


 ピコーン!


 気の抜けた効果音が鳴った後で、私のカードが上書き完了したようだ。


「これがCランクの冒険者カードだ。ソーマ、後でCランクについて、ミリアさんに説明を頼む」


「わかりましたマスター」


 ソーマがこちらを向いてニコッと笑いかけてくる。

 

 可愛らしい。


「ところで、西の森の調査についてだが、悪いがミリアさんにお願い出来ないか?」

「私ですか!?」


(あの臭いオオカミとまた対峙しなきゃダメなのー!?)


 そう、森オオカミは臭いのである。前回は美少女としてあるまじき臭いを移された。


「あのー、私じゃないとダメでしょうか?」


「思う所はあるかもしれないが、他の冒険者パーティーに向けても調査依頼を出すから、一緒に調査すれば危険は減るはずだ。それに、9頭も倒した実績があるのだから、冒険者ギルドとして、どうにかお願い出来ないだろうか」


 ザイゲルさんが頭を下げてくる。


(確かに9頭倒したし、他の冒険者さんを危険に(さら)さない為には仕方がないかな。それにギルドマスターに頭を下げられたんじゃ、断りづらいよね)


「わかりました、引き受けます」


「おお! それは有難い! ギルドから報酬も別途用意するから、頼んだぞ」


 仕方がない。臭いについては町へ戻り次第、時間停止でなんとかしよう。


 邪道(じゃどう)な使い道かもしれないけど。


「ところでマスター、先日の件はミリアさんにお伝えしても構いませんか?」


 ソーマがザイゲルさんに質問する。


「そうだったな。森ウルフの件で忘れる所だった。構わない」


「ありがとうございます。ミリアさん、実は先日冒険者ギルドに領主様の長男であるジェイド・ミリアルド様が訪ねて来られました」


 ジェイドが? それよりなんで私にジェイドが来た事を伝える必要があるのだろう?


「そうなの? それが何か私に関係があるの?」


「ミリアさんが冒険者登録しに来た次の日に、ミリアルド様からミリアさんについて依頼を受けまして」


「え? どういうこと?」


「ミリア・マンシュタインという、とてつもない美少女が冒険者ギルドに来るかもしれないから、冒険者登録なり、クエスト依頼なりで目撃したらミリアルド様に伝えるように言われたのだ」


「それで、ちょうどミリアさんに防具屋をご紹介したばかりでしたから、もしかしたらそこにいるかもと伝えたんです」


(そういうことかー!!)


 ジェイドはあの日、私があの防具屋に来る事を知っていたかのように登場した。


 すでに情報はソーマから入手していたのにあの男は


 こんな所でまた貴女と再会出来るとは奇遇だな


 とか言っていた!


(やっぱりものすごい策略家ね。ジェイド恐るべき)


 悪い男ではないし、世話にもなっているので、気持ち悪いとか思った訳ではない。


「そうだったのね、私も何でミリアルド様にあんな所で会ったのか疑問だったのよ」


「あまり女性の居場所を話すのはよくないかとも思ったんですが、ミリアルド様の立場上のこともあって、ミリアさんの居場所をお伝えしない訳にもいかなかったのです。もしご迷惑だったらごめんなさい」


 そう言ってソーマはぺこりと頭を下げてくる。健気な娘である。


「迷惑ではないから大丈夫。ソーマ、頭を上げて」


「はい、すみませんでした」


「気にすることないわよ」


 ソーマはえへへと、笑顔に戻る。

 

 可愛い。


【ジェイド様による意中の女性を射止める為の10手順教室】


「…ミリア、吾輩が変な発言をしないか気になるのはわかるぞ」


「だが、吾輩の後ろにいる作者のマジな目つきをよく見るのだ。アレは吾輩の行動いかんでは、作品から消し去るつもりに違いない」


「ジェイド様がいないと作品が続きませんから心配はいりません。私が作者に文句を言っておきますから、今日はこれでおしまいにしましょう」


「ミリア、君はなんて優しいのだ…」


「ふふっ。でも、色んな所で私の居場所を報告させて私に会おうとするのは止めてくださいね?この件に関しては、帰ってからお仕置きしますから」


「ま、待てミリア! はやまるな! アー!」


ごめんなさい、ネタです。


ちなみに本編の今後の展開とは関係ありません。


いつも私の小説をお読みくださいまして、ありがとうございます。


よろしければそのまま本編(後書きも?)をお楽しみください。


今なら、ジェイド様にストーキングされるという栄誉を(さず)けます


ぺこり。

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