14話 ミリア vs オオカミの群れ
前話のあらすじ:女の子らしくお花を摘んでいたら、トラブルの匂いがした。
キュルッキュルッ!
「またあの鳴き声か。しかも今度はずいぶん近くから聞こえ……!」
鳴き声が聞こえる方向へ振り向いた途端、言葉が詰まる。
視線の先には20頭以上のオオカミのような生物がいた。背中に小さい木のようなものが生えていて、体格はオオカミ同様。
「なんでこんなにたくさん……!!」
オオカミ達はすでに臨戦態勢。
私の隙をうかがいながら、なだれ込むタイミングを計っているようだ。
(っていうか、何でオオカミが鳥みたいな声で鳴いてるのよ! 普通ウォーン! とかじゃ!? まだせめて、ワンワンの方が理解出来るのに!)
異世界のモンスターは見た目と鳴き声が、地球とは異なるようだ。
(先手必勝といきたい所だけど、時間停止は30秒が限度。作戦を考えたいけど、オオカミは待ってくれないでしょうね)
私とオオカミの群れとの距離は30mほど。
(時間停止を発動するのは間合いに近付いてから。仕留める事より時間内で距離をしっかり取る事を優先!)
キュオオオ!
キュキュオオオオッ!!!
オオカミ達が一斉にほえる? いや鳴く? どっちでもいいや。
(来る!)
私はショートソードを抜き放ち、邪魔になる鞘を地面に投げ捨て、身構える。
オオカミ達が突っ込んでくる!!
「……ここ! 時間停止レベル1発動!」
小さな衝撃と共に、私以外の全ての時間が止まる。
1、2、3、4……
頭の中で数えながら、一番近いオオカミの首を切り落とすべく、ショートソードを思いっきり振り下ろす!
ズガッ!
首の骨で剣が止まる。
(くっ! 一発で切れない!)
私の腕力と剣の腕ではオオカミの首を一刀両断とはいかなかった。
その上、ショートソードもゴブリンからの略奪品なので、切れ味もよくないのだろう。
考える暇も無いので、何回もショートソードを叩きつけて骨をへし折り、残った肉を切り落とす。
「1頭でやめる!」
もう20秒は経過していると思う。
距離を取る為に逃げるべきだ。
私はオオカミ達の逆方向へ走る!
……とはいえども、私は所持金を腰に下げたままだし、おっぱいが重い。
ちなみに胸には布を巻いているので揺れは多少は抑えられている。
(宿にお金置いてくれば良かった!)
そうたいした距離は稼げなかったが、オオカミが再度動き出す前に2~30mは離れられた。
そしてオオカミの時間が動き出す。
キュオオオ! ……キュッ!?
私が首を叩き落とした奴の周辺にいたオオカミが、突然仲間が死んだ事で驚いたようだ。
しかも、目前に迫っていたハズの獲物との距離がいきなり離れたのだから、なおさらだ。
(あれで驚いたっていう事は、それなりの知能はあるみたいね。仲間が死んでも気にかけずに突っ込んでくる程には獰猛じゃない)
全て殺さなくても、この状況は終わる!
そう確信した私は、驚き戸惑っている仲間に気付かず、突っ込んできたオオカミに対して、再び身構える。
時間停止スキルを連発するのはこれが初めてだ。
スキルを連続使用する為のクールタイムやMPの消費がどうなっているのかはわからない。
MPについては時間があれば確認出来るだろうけど、今は無理だ。
(……私はきっと、連続だったとしても時間を止められる)
何故かそう思えた。
オオカミが再び迫ってくる。
「時間停止!」
今度は一発では切れない事を想定して、剣を振り下ろした後ですぐ、振りかぶり叩きつける。
「よし! 次!」
(今度は10秒経過。もう1頭やれるはず!)
さらにもう1匹の首を叩き落とす。
そして距離を取る。
その繰り返しで、その後3回ほど時間停止を行い、オオカミを9匹倒した。
さすがにオオカミ達もバカではない。
この相手には勝てない! そう気づいたオオカミ達は逃げ散っていく。
「ふう、何とかなって良かった。さすがは時間停止」
周辺には背中から小さな木を生やしたオオカミ達の死体。
「く、くっさぁ……」
先ほどまでは必死で戦闘していたので、気にならなかったけど、野生のオオカミなのだ。
臭いのも当然だ。
「おえぇぇ……。毛皮とか持ち帰るべきなのかもしれないけれど、この匂いはちょっと……」
私は必死に我慢しながら、元々の目的である癒し草の採取を終えて、帰路に着く。
「戻ったら剣を買い替える事も考えなきゃ。あ、そういえば結構オオカミを倒したけど、スキルの経験値はどうなってるんだろ?」
三叉路まで戻ってきた私は、街道の脇に腰を下ろして、パーソナルウィンドウを開いてみた。
「スキル……と。あ、経験値が溜まったのかな? スキルツリーの先が表示されてる」
今の私が使えるのは時間停止レベル1だ。
30秒間の制限があるけれど、女神様の時間さえも止まる。
そして、今新しく選択出来るようになったのは【時間停止レベル2】
時間停止レベル2の所にタッチして、スキルの説明を表示する。
「これは……。またえげつないわね……」
画面に表示された説明はこうだった。
【時間停止レベル2】:自分と、自分と時を共有する事を許した存在を除いた、全ての存在の時間を1分間停止する。
「自分と時を共有する事を許した存在を除くっていう事は、私が許可した相手は時間が止まらないっていう事かなぁ……?」
時間停止レベル2の効果について検証したいが、私には一つ問題があった。
「オオカミの臭いが染みついちゃったら嫌だし、美少女が臭いなんて色々と問題だらけだよ! 早く町に戻ってお風呂入りたい!」
クンクンとチュニックを嗅いでみると、やはり染みついている。
私は顔を歪ませながら、町へと急いだ。
【豆知識のコーナー】
よくぞいらっしゃった。ここは登場人物についての豆知識を授けるコーナーじゃ。
ぷよりんというモンスターの名前が出てきたのう?
気になってしょうがない! はよ作中で説明せよ! という紳士淑女はググってみるのじゃ。
版権とか色々ありそうじゃから、ここでは詳しく説明出来んからのう。
あ、これか!と納得するに違いないじゃろうて。
ほっほっほ。
ごめんなさい、ネタです。
ぷ〇ぷ〇にケンカは売ってません! 本当です! 許してください。
ちなみに本編とは無関係……だと思います。
いつも私の小説をお読みくださいまして、ありがとうございます。
よろしければそのまま先をお読みください。
今なら、ギルドの受付嬢と一日デート出来るチケットが貰えます。
ぺこり。