13話 初めてのクエストは薬草採取
前話のあらすじ: 防具を買いに行ったら、女心の防壁を崩されかけた。
途中で、サントスさんと挨拶した。
近くを通るのだから挨拶するのは当然だ。
「こんにちは、サントスさん。今日は売れ行きどう?」
「おう! 今日もキレイだね! 最近姉ちゃんがしょっちゅう寄ってくれるお陰か、男の客がえらく増えてな! 助かってら」
「それは良かった! また今度買いに来るね!」
サントスさんと別れ、冒険者ギルドへ到着した。
今日もギルドのロビーはたくさんの冒険者でごった返している。
私は、ソーマに挨拶しておこうと、冒険者登録カウンターへと向かう。
ロビーに冒険者はたくさんいるが、毎日何十人も新規登録する訳ではないので、ソーマの窓口は空いていた。
「こんにちは、ソーマ。昨日は色々とありがとう」
「あ、ミリアさん! こんにちは。今日はクエストを受けに来たんですか?」
「うん、最初だからあまり危険の無いクエストを受けるつもりだけどね」
「その方が良いと思います。ミリアさんはモンスター退治の経験はありますか?」
「遭遇したゴブリンを1匹やっつけた事はあるけど、それだけね」
「え? ゴブリンを一人でやっつけたんですか!?」
何かマズい事でもあるのだろうか。
「時間を止めてその間に倒したんだけど……」
「はぁ……。さすがですね。ゴブリンは知能が低いですが、人間と同等の筋力を持ち、自前で採鉱して鍛冶まで行い、集団生活しているモンスターで、普通の人間だったら殺されてもおかしくない危険なモンスターですから」
「うんまぁ、スキルのお陰で何とかなったかな」
「それなら、Fランクの依頼で困る事は無さそうですね」
「あまり慢心しないように頑張るわ。ありがとね、ソーマ」
「いえいえ、頑張ってください」
ソーマの所を離れ、クエストボードへと向かう
「えーと、Fランクのクエストは……と」
今あるのはクエストの内で、Fランクで受注可能なものは以下の通りだ。
・癒し草の採集:西の森に自生する癒し草を2kg採集して持ち帰る。報酬銀貨1枚
・家のお掃除代行:掃除する。きれいにする。報酬銅貨60枚
・町の排水路のドブさらい:作業服は支給します。報酬銀貨1枚
・エミーリアおばさんの肩たたき:肩こりを素早く解消すべし。報酬銅貨30枚
・ぷよりんの討伐:町の西の平原に発生するぷよりんを討伐して、ぷよぷよゼリーを2個持ち帰る。報酬銀貨2枚
その他は掃除や草抜き、配達のような雑用の依頼がほとんどだった。
(っていうか、ぷよりんって何!? スライムならわかるけど、この世界ではぷよりんなの!?)
とてつもなく気の抜けた感じの名称だが、惑わされてはいけない。
いかにも弱そうなネーミングでも実は難敵かもしれない。
「ぷよりんが非常に気になるけど、受けるクエストは薬草採取にしとこう」
依頼用紙を剥がして受付に持っていく。
クエスト受付はさすがに冒険者が並んでいるので、順番待ちだ。
(男性の受付係って何でいないんだろう。冒険者の比率自体男性が多いからかな?)
ざっとロビーを見渡す限り、冒険者の男女比は7:3くらいだ。
女性は出産子育てもあるし、冒険者は基本的には肉体労働なので仕方無いのかもしれない。
順番がやってきたので受付嬢に薬草採取の依頼用紙を渡す。
「薬草採取ですね。近頃は西の森に入る冒険者から、モンスターの目撃情報が増えていますので、十分気を付けて下さい」
「どんなモンスターなの?」
「情報で上がってくるのはワイルドキャットがほとんどですね、動きは素早いですが、ツメで引っかいてくるか噛みついてくる程度なので、死にはしませんから大丈夫です」
「わかったわ、情報ありがとう」
「気を付けて行ってらっしゃい」
受付嬢に手を振り、冒険者ギルドを後にする。
んー! と背伸びしてから町の西側にある門へと向かう。
「よし、今日が私の冒険者デビュー記念日! 気合入れて癒し草採るぞー!」
町の門番さんに会釈してから、町の外へ出る。
門番さんに二度見どころか三度見された。
町中を歩いていてもよくある事だけれども、男だった時にそんな経験は無かったので、ちょっと気分が良くなる。
(さすが私。二度見される程美少女)
あまりうぬぼれると、痛い人だと思われる事ぐらいは知ってはいるけど、うぬぼれではなく、女としての自信に繋げればいいじゃないか。
そう私は思う事にした。
私はポジティブ思考を心がけているので、あまり後ろ向きには考えないようにしているのだ。
町から歩いて30分。
西の森は町からそれなりに離れており、門から伸びる街道の途中で、三叉路を曲がった先にある。
「結構大きな森ね。町から見える時はそこまで思わなかったけど、近くまで来ると大きく感じる」
うっそうと茂った、というよりは幻想的な空気が漂う美しい森だ。
キュルッキュルッ……。
鳥のさえずりが心地よい……?
「あれ? 鳥の鳴き声だよね? たぶん」
何となく違和感があるが、明確に何に違和感があるとは言えない。
こういった感覚が気配を感じるという事なのかな。
(というか元々、武術の心得も無いし元凡人の私に危険なんて察知できないけど)
気にしても仕方が無いし、森の中へ足を踏み入れ癒し草を探す。
「あ、これが癒し草ね。たくさん生えてるからコツコツ採ればすぐ集まりそうね」
癒し草はタンポポのような見た目で、花びらが白色の淡い光を帯びている。
クエスト担当の受付嬢から聞いた話だと、聖属性の魔力を地面から吸い上げて花に蓄える為、光るのだそうだ。
「キレイな花……。クエストの分より多めに採って、宿の部屋に飾ってみようかな」
ほんわかとした表情で、癒し草の採取を進めていたのに、異変が起こった。
いつも私の小説をお読みいただきありがとうございます!
引き続きこの小説をお楽しみいただければ幸いです。
ぺこり。




