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10話 ミリアルドの冒険者ギルド

前話のあらすじ:ドレスや服を大人買いした。


 宿へ戻り、昨日から2泊延長した部屋へ買ってきた衣類を置き、パーソナルウィンドウを開いて時間を確認する。


「あら、いつの間にかお昼過ぎてる。お昼ご飯どうしようかなぁ」


 町で店を探してもいいのだが、この後冒険者ギルドにも行きたいのだ。


 迷ったあげく、私は宿のティーラウンジで簡単な食事を取り、出かけた。


「冒険者ギルドはこの西区にあるんだね。西区に宿が集中しているのは冒険者ギルドがあるからなのかなぁ」


 ミリアルドの町は区画によってカラーが異なる。


 西区は宿屋や乾燥食料を取り扱う冒険者向けの店が集中した区画。


 南区は銀行を中心として、町民の生活に必要な店や、高級品店が並ぶ区画。


 東区は鍛冶屋や大工屋などがある職人街区画。


 北区は行政機能や市場などがある区画である。


「そろそろ着くかな……っと、あった!」


 冒険者ギルドは2階建てで、高さは無いが敷地面積がとても広かった。


 入り口は大きな門のような扉が正面にあり、両隣に普段の出入りに使用しているであろう扉があった。


「この門は何に使うんだろ?」


 門の用途がわからないが、とりあえず門の左の扉から中へと入る。


 冒険者ギルドの中は2階まで全て吹き抜け……というより、2階建ての高さを持つ1階建ての建物だった。


 入り口向かって右側に【冒険者登録受付】と書かれたカウンターがあり、その左側に【冒険者相談受付】、さらにその左に【落とし物受付】があった。


(落とし物受付って何……?)


 よくわからないが、更に建物の中を観察していく。


 入り口向かって左側は【クエスト受付】その右側が【クエスト報酬受付】さらに右側が【クエスト相談口】だった。


「こっち側は何となく理解出来るかな」


 そして、入り口向かって正面には何枚ものボードが貼られており、その両脇にはバーカウンターや、食事を提供する店があった。


「冒険者の憩いの場も兼ねてるわけね。面白そう。それにここなら、昨日ワイン飲めなかった代わりに、美味しいお酒が飲めるかも!」


 いやいや、当初の目的を忘れちゃだめ。と自分に言い聞かせつつ、冒険者登録受付へと向かう。


「こんにちは。冒険者登録ですか?」


 小柄で可愛らしい女性だ。異世界の冒険者ギルドの受付はなんで決まって女性なのかと、前世のパターンを思い出しかけたが、今は目の前のギルド嬢と会話中だった。てへぺろ。


「はい、どうすればいいですかね?」


「冒険者に登録するには、この書類を書いてもらってから、この特別製の板へ手を当てて頂きます。板に手を当てると、あなたの適性が判りますからその後の事は後で説明しますね」


 私は受付嬢から登録に必要な用紙を受け取り、記入していく。


「えぇと、ミリア・マンシュタイン、18歳……っと。えーと性別は女。出身地……出身地!?」


「どうされました?」


「い、いや何でもないです」


 滝のように汗が流れ出る。異世界から転生してきた私に出身地などない。


 しいて言えば日本だが、そんな事は書けない。


 どうしようかと思っていたら、受付嬢が助け舟を出してくれた。


「あのー……。出身地は都合が悪ければ書かなくても構いませんよ? 魔族の方なんかは嫌がりますし。出身地を書くのは、同じ出身地の方と仲良くなりやすいように冒険者カードに表示する為なんです。だから、別に空欄でもそこまで問題ないですよ?」


 光が見えたー!!


「あ、じゃあ空欄にしときます。はい」


 その他の項目も記入して、受付嬢へ用紙を渡す。


「では、次はこの板に手を置いて下さい」


「はい」


 受付嬢が差し出してきた板に手を乗せる。


 すると、板が不思議な光を帯びてきて、その光は受付嬢の隣にある機械へと流れ込む。


「はい、これで適性チェックも完了です!」


 受付嬢の隣の機械からカードが印刷されて出てくる。


「職業は魔導士ですね」


「魔導士……ですか」


(ファイアーボールとか使えるようになるのかな)


「次にあなたの適性はー……。あなたの適性は……。時間って何ですか?」


「え?」


「ええと、冒険者カードには普通は火水風土とか、そういった基本的な属性魔法に関する適性や、剣術や格闘術などの体術、それか斥候に必要な気配察知などの適性が記載されるはずなんですが……。時間というのは初めて見ました」


「あ、あはははは……。ま、まぁそういう事もありますよ。多分」


 やはり私の時間制御スキルは規格外のようだ。


 疑いの目を向けてくる受付嬢から、視線を外す。

 

 今はとりあえず目の前の受付嬢には時間制御スキルの事は黙っておこう。


 そう思った、のだけれども。


「時間制御スキルとか、あなたは神様か何かですか?」


「ほえぇぇ!?!?」


 冒険者ギルドの適性判別装置(謎の板)は優秀だった。


 適性どころか、私のスキルまでお見通しだった。


「……何故わかった。さてはお主忍者だな」


「いえ、忍者が何なのかわかりませんけど、あなた今、心の声がそのまま出てますよ、多分」


「はぅあぇ!?」


 もはやどうしたらいいのか、私にはわからない。


「……はぁー。いえ、まぁ変わったスキルを持ってる方が来る事もありますから、別にいいんですけどね。先輩に聞いたのは、けん玉に絶対失敗しないスキルとか。私が見たのは、どこから石を投げても必ず自分の頭にブーメランのように戻って来るスキルをお持ちの方でした。」


「いや、そのスキル冒険者としてどこで活用するのか、まったくわからないですよね」


「……これから冒険者登録して頑張ろうと意気込んでいる方に、そのスキルをお伝えする時は、私も辛かったです」


「あなたも大変なのね……」


「でもこれはちょっとギルドマスターに報告しなきゃいけない案件かも……」


 冒険者登録しに来ただけなのに大事になりそうだ。


 良い事なのか悪い事なのか、私には判断が付かない。


「えぇと、それで報告しなきゃならないっていうのは、私のスキルに何か問題があるっていう事……?」


「そういう訳ではないのですが、こんなスキルは見た事も聞いた事もありませんし、報告しなきゃ私の責任問題になりかねないんです!」


 目の前の小柄ながらも可愛らしい女性が、私のスキルを組織に隠蔽して立場を悪くするのは、転生前の紳士的な私(自分的に)からすると許せない。


「えぇと、報告して貰ってもいいですけど、あんまり大事にしないでくださいね?」


「ご納得頂けたみたいですね! ありがとうございます」


 私は目の前の可愛い受付嬢の立場を考え、紳士的な行動を選択するのであった。 


 そして、私にはもう一つ不安があったので、受付嬢に恐る恐る尋ねる。


「と、ところで、冒険者カードに表示された私のスキルは時間制御だけだった?」


 私の不安は、異世界言語聞き取り発音と、異世界言語読解記述のスキルがバレていないかだ。


 女神様がくれたスキルであり、どこからどう見ても異世界から転生してきたようにしか見えない。


(これがバレたら本格的に大事に……)


「はい、時間制御スキルのみでしたね」


「良かったー!!!」


「? 何が良かったんですか?」


(あ、口に出ちゃった)


 どうやら異世界言語聞き取り発音と異世界言語読解記述のスキルについては、冒険者カードに印字されていないようだ。


 異世界転生した事は言わなければバレないだろう、と心をなでおろす。


「い、いやちょっと。あははは……」


「じゃあ、先に冒険者ギルドのシステムと冒険者カードの使い方をご説明しますね。その後で私と一緒に、ギルドマスターへ会って頂きます」


「え? 私もいきなりギルドマスターに会うの?」


「その方が話も早いですし、私だけ先に報告しに行っても、どうせ連れてこいって話になりますから……」


「まぁ、それはそうよね」


 私はいきなり大事になった事に戸惑いつつも、受付嬢の説明を聞くのだった。


ちょっと会話パートが続きましたが、もうすぐ戦闘もあります。


ここまでお読みくださり、ありがとうございます。


引き続き本編をお楽しみいただけると幸いです。


ぺこり

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