9話 女性らしい服を買おう
前話のあらすじ:高級宿にメロメロになり、2泊追加した。
宿の人に聞いた通り、南区には衣料品店がたくさんあった。
庶民向けのよくあるチュニックや、ウールや皮で出来たズボンなどを取り扱う店や富裕層向けのタキシードやドレスを取り扱う店など、色々だ。
「今日はとりあえず宿に戻っても浮かないようなドレスを探そう」
目の前にある高級そうなドレスを取り扱うお店へと入っていく。
店内はきらびやかな装飾が施されたドレスから、シックなドレスまで、様々なドレスが展示されている。
あ、俺まだ童貞だった。どうしよう
(うぉーい! 来たのはいいものの、私は女性服なんて選んだ事ないし、ましてやドレスなんて未知の世界だよぉー!)
目をグルグルさせながらパニックになっている所へ、女性の店員さんが助け舟を出してくれた。
「こんにちは。ドレスをお探しですか?」
「ひゃい!?」
「うひゃあ!?」
大絶賛パニック中の所へ声をかけられたので、ビックリして変な声が出てしまう。
つられて店員さんまで驚いてしまったようだ。
「ご、ごめんなさい。田舎から出てきたばかりで、ドレスみたいな服を買うのは初めてなんです」
「いえ、こちらこそ驚いてしまってすみません。ドレスは初めてなんですね。じゃあ最初はご自身をどういう風に見せたいのかイメージなさるのが良いと思います」
「自分をどういう風に見せるか。ですか?」
「はい、シックなドレスであれば落ち着いた女性に見えますし、きらびやかなドレスですと、明るく華やかな女性のイメージになりますね。ドレスは普通の服以上に、お客様の性格や他人からどう見られたいのかを表すんです」
難しい、生前の私は彼女もいなかったし、服装に気を遣った事なんて無かった。
どうしたものかと頭を悩ませていると、店員さんが提案してくれた。
「そうですね。お客様はお顔もお美しいですし、スタイルも抜群ですから、デザインは派手過ぎない方が、お客様自身の美しさを邪魔しないかと思います。色合いも派手な色ではなく、お客様を引き立てつつも、可愛らしさをアピールする薄めの緑や水色などのドレスがお似合いかと思います」
「あ、じゃあデザインは地味目で、色は水色のドレスでお願いします」
「かしこまりました。採寸させて頂いてもよろしいでしょうか?」
「はい、お願いします」
店員さんがメジャーを取り出し、私のサイズを測っていく。
途中で、うわぁ大きいとか、えぇ、細い……。とか店員さんがつぶやくが、聞こえなかった事にしよう。
「えぇと、お客様に合う水色のドレスを仕立てるのに2日程かかりますが、よろしいでしょうか?」
なんだと、2日もかかるの?
だがしかし当然である。出来合いの普段着であればまだしも、ドレスである。
顧客毎に身体のサイズは違うのだから、1から仕立てるのは当然だ。
私の見識不足だった。
でも、ドレス欲しい。
「はい、2日後で結構です。料金はおいくらでしょうか?」
「当店は純シルクのドレスのみの取り扱いですので、金貨10枚です」
(じ、じゅうまい……。きんかじゅうまい……。)
でもやむを得ない。
宿で周りの視線をスルーして我慢するのは簡単……では無いけど、いつかどこかでドレスが必要になる事もあると思う。
「それでお願いします」
「はい、ありがとうございます! ドレスが仕上がりましたらお届けに上がりますが、どちらへお届けしましょうか?」
「西区のザ・イーグル・ミリアルドに届けて頂けますか?」
「わかりました。そちらの受付へ預けるように致します。他にご質問はございますか?」
「ドレスの洗濯はどうすればいいでしょうか?」
「当店へお持ち頂ければ無料で洗濯致します。お客様がご滞在されている宿でしたら、頼めば有料で洗濯してくれると思います」
「なるほど、他は大丈夫です」
「お買い求めありがとうございます」
高い買い物だったけど、私は満足していた。
私がドレスを着た姿を見てみたかったのだ。
(やば、これじゃどこのナルシスト……。でも元々私は男だから、この今の絶世の美少女がドレスを着てる所を見てみたいと思うのは仕方がない)
それに、女性が自分の容姿を気に掛けるのは当たり前の事だし、と納得した私。
南区にある他の衣料品店も見て回り、普段着やちょっとしたお洒落着を買い足していく。
「結局ドレス以外で金貨2枚分も買い物しちゃったなぁ」
この世界の衣服はそれなりに高い。前世ほど工業が発達していないので、普段着だろうと手作業で縫っているので高い。
ドレスの店は金貨払いOKだったが、普段着を売っているような店は金貨NGだった。
途中で手持ちの銀貨が無くなったので銀行で両替までして買い物した。
「うふふー♪ これで服にはしばらく困らないわー♪」
私はドレス1着。
普段着のチュニック2着と皮のズボン2着。
ワンピース1着と、帽子1つ。
ロングスカート2着とシャツ4着を購入した。
ちなみに、この世界ではブラジャーはまだ開発されていないようだった。
代わりに、サイズの大きい女性の揺れを抑える布(身体に巻いて使うらしい)があったので、それを買ってみた。
「結構散財しちゃった気がするけど、布の服1着じゃ洗濯も出来ないしね。女性は清潔でないと!」
私は山のようになった荷物を抱えて、宿へ一旦戻るのであった。
ミリアの所持金:金貨85枚、銀貨10枚、銅貨82枚
銀貨と銅貨が増えたのは銀行で両替した為です。
相当ジャラジャラさせながら歩いてます。
ここまでお読みくださり、ありがとうございます。
よろしければそのまま本編(後書きも?)をお楽しみください。
???……お礼に私がぱ〇ぱ〇してあげます! 元男だけどね!
ぺこり。