追放された俺とパブで働く幼馴染の婚約者との未来は?
勇者のパーティを追放された俺は仕方なく生まれ故郷のコハド村に帰った。
なぜか、俺の家が黄金を贅沢に装飾した豪邸になっていた。
村人の期待を裏切ってしまい、罵声を浴びせられないか心配していたのだが、何があったのだ?
家に入ると、ほぼ裸の美女たちが、料理と酒を用意して待っていた。
俺は一旦家から出ると、誰か村人を探した。しかし、薪を割っている者も、洗濯をしている者も、最近人気のストリッパーの話をしている者もいない。
村長の屋敷を訪ねてみると、『売り出し中』と書かれていた。
「ブラッド、あなたなの?」
俺が振り向くとそこには、幼馴染の婚約者ナーシャがいた。
「やっぱり、ブラッドだったのね! お帰りなさい。無事で良かった」
ナーシャが俺に抱きつく。
「キャッ!」
ナーシャは俺の股間が普通の状態ではないことに驚く。
だってさ、今しがたほぼ裸の美女たちを目の当たりにしたのだ。男なら誰でもこうなるだろう。
「もうブラッドったら気が早いのだから……。まだ結婚もしていないのに……」
「あのさ、ナーシャ。村のみんなはどこに行っているの?」
「みんな、勇者のパーティに入った村の英雄のブラッドのために、各地に出稼ぎに行っているわ。黄金の家見た? みんなでお金を出し合って建てたのよ。寄付してくれた貴族の方も大勢いたわ。あっ、まさか、あの女性たちと……」
「うううーん!」
俺は首を強く横に振って否定する。
「あれは、村の男たちが、ブラッドが帰ってきた時に喜ぶだろうって、住まわせているの。ブラッドには私がいるから、邪魔よね?」
ナーシャの目の奥が凍る。
「もちろんさ。すぐ出て行ってもらうよ」
残念だが仕方ない。
「あっ、私、お婆さんの形見のネックレスを取りに来たんだった。あのネックレス、都会では高く売れるみたいなの。今度はね、みんなでブラッドの黄金の巨大像を作る計画なの。若い男たちは遠洋漁業に行ったわよ。私も勇気を出して、パブで働いているのよ。お触りとかはないお店だから安心して」
勇者のパーティを追放された俺のために、婚約者がお婆さんの形見を売ろうとしていて、水商売をしている……。
「それじゃ、ブラッド。しばらく、ゆっくりしてね。ブラッドが帰って来たってことは、勇者たちと魔王を倒したということでしょう。出稼ぎに行った村のみんなに手紙を書かなきゃ。あっ、お店のお客さんにも話したらチップをはずんでもらえるかもしれないわ。大好きよ、ブラッド。村の、私の誇りよ」
チュッ。ナーシャは俺のほっぺたにキスをすると、お婆さんの形見のネックレスを取りに家に向かう。
「あの女たちは追い出していてよー!」
ヤケクソに、あの美女たちと夢のようなひと時を過ごしとから逃亡しようかと思っていたら、念を押されてしまった。
さすがに、俺のためにパブで働いているナーシャを裏切れない。
股間はすっかり大人しくなっていた。
すると、そこに伝書ドラゴンが飛んで来た。
手紙には、
『ブラッド、お前の“2・5・5”のスキルが必要だ。追放した俺が悪かった。大至急戻って来てくれ』
と書かれていた。
どうやら魔王は、予想以上に強敵だったようだ。
だが、俺の“2・5・5”のスキルが発動すれば、どんなに魔王が強くても、必ずハッピーエンドになる。
勇者は実力で魔王を倒したいと言い出し、俺を追放したが、勇者は勇者で今の俺と同じように周囲から半端ない期待を背負わされ困っているのだろう。
よし、早く勇者のパーティに戻って、魔王を倒し、ナーシャに水商売をやめさせよう。
しかし、“2・5・5”のスキルが発動しなかったら、魔王に返り討ちにあい、ナーシャと結婚できないのか……。
俺とナーシャ、出稼ぎに行った村人たち、勇者の運命を決めるのはあなたです!