2章1話 方針
短いですが区切りがいいので投稿しました。
後、ある程度ワンスからエイトの道のり省きました。時間があればアフターストーリーで書くかもしれないです。というよりも本当はアフターストーリー書きたいです(願望)
白い空間の中に洋平はいた。
ここに来るのは二度目だ。確か列車事故で死んだ時以来だろう。
そんなことを考えながら先を歩いていく。自身がよく見ていた光景。何もなく、ただ真っ白い面白みのない世界。
ただただ朝目が覚め、昼には学業という名の将来役立たないものを覚えさせられ、大学でのネームバリューを求められることを指導され、夜には楽しむことすらわからずに寝てしまう。それの繰り返しの世界だ。
「……いや、静奈といる時間は違った、かもな」
そんな独り言が反響する。夢にしては痛覚も視覚も、それに聴覚も効きすぎる。
耳を澄ませば聞こえてくる自分たちが死ぬ時の絶叫。自分が選んだスキルに失敗はないことを洋平は強く信じたかった。
そして最後に見えた映像は必死にスキルを選ぶ幼馴染の姿だった。
◇◇◇
朝から重いため息を吐き起床した洋平。
体を起こしたベットはギシギシと音を立て、元の世界ではないことをより実感させる。周囲は見たことのある道具ばかりが置かれていた。
「……旅で疲れたからって……気を抜きすぎた」
壁際にいたのは二人の少女である。小麦色の肌に大きめの角、そしてあまり高くない身長。だが服がはだけている、なんてこともなくただ寝息を立てていた。
洋平はそっと胸をなでおろす。手を出すつもりはさらさらなく、なんならこの世界で生きていく上でパーティや奴隷の人に手を出せば、後々関係が拗れていくのは身をもって知っていた。
そう、元の世界で同じ部活の後輩と付き合ってしまった時のように。
洋平は文化系の部活にしか入ったことがない。運動系と文化系の違いは、別れた後が本当に辛いのだ。一室にて少ない部員の人たちと会話をする。その際にぎこちない動作をすれば疑われる。それを知っているから、やはり手を出すことはできない。
決心をして部屋の外へと出る。
あまり月日も立たない中で聞きなれた調理の音が室内に響き渡る。階段から降りた洋平はいつもの席に座りそれを見てしまった。
体躯が自身より大きい女性の格好をした男性。恥じらっているのか小さく鼻歌を歌い慣れた手つきで食事を作っていた。
調理を終えたのか、その鼻歌はピタリと止まり踵を返してキッチンを出る。
「あら、起きていたの」
「マリアベルさん、おはよう」
マリアベルは「おはよう」と返してから、間違いなく洋平の部屋へと向かった。それを見てアカとアオが自身の部屋で寝ていたのは、マリアベルの差し金ではないかと疑い始める。
「……おはよう……ございます」
「おはよう、主」
アオは少し恥じらいながら、アカは眠たそうに欠伸をしながら挨拶をする。洋平は「おはよう」とだけ返しマリアベルを見た。
マリアベルは何かを言うこともなくキッチンから食事を運び、簡易的な朝食が始まった。
日常的な会話をしながらの食事を終え、自室にていつもの姿に変わる。最初と変わっているのは右手首に白いイヤホンが巻かれていることだろうか。
スキル、不壊は物質が壊れることがなくなり、その武器の価値を高める。そうマリアベルは言っていた。
これに関してはゲームの時にはなかった。それもそうだ。ゲーム内では武器が壊れることはないのだから。そのため洋平は驚きながらとてもありがたがった。ただ一つのことが脳裏をよぎる。
レヴァティーンもこの世界では消耗品なのではないか、ということだ。ここで洋平は武器進化石をレヴァティーンに使用してみた。それがワンスからエイトの街に戻ってすぐのことだ。
だが無意味だった。手から武器進化石が消えることもなく、レヴァティーンが進化することもない。少し不思議に思いながらも「そういう設定なんだな」と思うしかなかったのだ。
そしてそのレヴァティーンはプレイヤースキルである異次元倉庫の中にしまわれている。ここぞという時以外使わないようにするためだ。そのために今、洋平に武器はないのだ。
着替えも終え外へ出た洋平の目の前にはマリアベル特注の服を着たアカとアオがいた。二人は武器を持たず素手に何かを纏っている。
少し不思議がりながらも「そうなんだな」と無理やり納得させ、そのまま外へ出た。
久しぶりのエイトの街に懐かしさを覚え深呼吸をする。洋平は確かにこの街が好きなのだということをこの時、理解した。
「アカ、アオ。今日はまずアントンの所へ行きたいと思うんだ」
「前の商談の話ですね。昨日二十は作ってましたし」
シーアのお陰か、洋平は鉱石をふんだんに使い二十四もの生活魔法を付与した銅腕輪を作成していた。もちろん、商談にあった通りローマ字でYOHEYと綴られている。
「そういえばアレはなんて書かれていたんですか?」
「ああ、ヨーヘイ。つまり俺のことだよ」
この世界においてローマ字の表記はない。書いた字は勝手に翻訳される。だがそれは日本語で書いた時のみだ。ローマ字に関しては翻訳もされずに未知の字として異世界では扱われるのだ。
そして作成の際にアカとアオが一番驚いたことがある。それは、
「すごいですね。魔法ならまだしも付与などを無詠唱で行えるなんて」
詠唱と呼ばれる長ったらしい魔法言語がないことだった。魔法言語と言ってもただ、辺りを照らす火球なら『我が眼前を照らす火の玉、火球』程度で良い。つまりは想像力補正のためにそれが使われるのだが、洋平はそれなしで行えていることがアカとアオにはとても珍しいし、尊敬できることなのだ。
簡単に言えば「私たちの主とても凄い」である。
だが先の銅腕輪二十四個で銅は枯渇した。銀などもあるのだが洋平はそれを使わずに残してある。
彼の頭の中にはこれからの商談を終えればお金が入る。それで武器を買って能力を付与しよう、そんな考え方をしていたのだ。
そして製作の話や洋平への褒め言葉を言っている間に一行はその場所へと着いた。スレイヴ、約一週間ぶりであった。
次回は商談と武器屋ですかね。シーア以外のドワーフ出るのかな(適当)。
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