異世界最強武器はイヤホンのようです1
週二投稿できて良かったです。
やっと本題に入って行けたような気がします。
(気がするだけかもしれない……)
マリアベルがいなくなった瞬間に洋平の体へと抱きつく人がいた。
「お体は大丈夫ですか?」
「あっ、ああ。えっと、アオ、どうかしたのか」
洋平は不思議そうにアオへそう聞く。
現に今まであまり話をすることがなかったにも関わらず、洋平を労わるように壊れやすいものに触れるように優しく触っている。
「……悪魔は以心伝心するものなのです。アカも言わないだけで本当は嬉しいんですよ。だって私たちのためにもゴーレムを倒したんですよね」
「以心伝心、か。……そうだな」
「悪魔というだけで嫌われるんですよ。その分、扱いも酷いです。でも主は真の主と思える人でした。奴隷という最悪な繋がりであるのに、主と繋がれて本当に嬉しく思います」
アオは洋平に顔を向けニコリと微笑んだ。
嬉しそうにそして離れることを嫌うかのように力を入れる。
「アオ! 私も行っていい?」
「うん。アカもヨーヘイさんを主と認めてもいいよね」
アカは頭を縦に振った。
両脇に少女を抱えながら洋平は二人を見ていた。少しずつ少女たちの体が光を帯び始め、抱きつかれている人にもそれが及び始めた。
瞬間、光が舞った。
ダンジョンの敵が倒れた時の光ではない。淡いながらにその瞬間を愛しく、頭に永遠と残すような輝かしさ。
少女の顔が変化していた。
少し大人びたような、そんな雰囲気を纏うが身長は変わらない。一番の変化といえば肌の色と角の大きさである。西洋の少女のような真っ白い肌は元からなかったかのように黒くなり、それすらも美しいと思わせさせるほどだ。角は少女の顔の半分ほどの大きさはある。
「これがバフォメット……なのか」
「知っていたんですね。そうです、しかもハーフでありながら純血である異色のバフォメットです」
「だから人族のようにも、悪魔の姿にもなれるのよ。この姿は認めた人にしか見せないから」
少しだけ視線がくすぐったいのか、俯きながらアカとアオは言った。
「あの時に撃ってしまった魔法がありますよね。あの時は本当に申し訳ありませんでした。それでですね、今ならあの威力の数倍の威力を誇ります。この状態なら近接も任せてください」
握りこぶしを作りながらアオは力説する。
「悪魔は元々、両方が得意なのよ。それに龍を殺せる種族とも言われているからね。まあ、そのうち主を超えるわ。ただその後は私たちの後ろで守られていればいいのよ」
アカは少し恥ずかしそうに床を見つめながら言う。
「超せればいいな。俺という壁はそこまで小さくはないぞ」
笑いながら、それでいてその声を心強く感じながら抱きつく二人を強く抱き締めた。
「そういえばこの姿だと要らぬ誤解を招くわね。何かいい方法がないかしら」
アカは甘ったるい空気に少し耐えきれなくなったのか、抱きつきながらそう聞いた。
洋平は少し頭を悩ませてから首を捻る。道具自体は少ない。今から物を作ることはできないだろう。
そんな中で一つのアイテムを取り出した。
「これは……ゴーレムの?」
「そう、魔核。それでもしかしたら」
段々と魔核に入れるMPを増やしていく。一度全てを使い切ってから、全回復しているため少しだけ戦闘前よりMPは高い。
そしてある程度注いだところで変化が起こった。
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進化石
道具を進化させる。生物には使用できない。
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そんな説明がかかれた黄色い石のようなものだ。それを洋平は指で摘み弄る。
「……失敗か。割と使えそうなものにはなったけど」
「初めて見たわね、なんか面白そう」
洋平はグングニールとイヤホンなど倉庫の中の素材以外を出してみる。少し悩んだ後、二人を見た。
「これはなに? 白い紐?」
「ああ、これはイヤホンっていうものなんだ。っておい」
アカは先の進化石を持ちながらイヤホンをもう片方に持った。そして合わせるかのように二つをぶつける。
結果は進化石がなくなっただけだった。イヤホンに変化はない、はずだった。
「はっ?」
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神器 イヤホン
所持者の望んだものへと姿を変える。この道具を破壊するためには、その道具が神器でなければいけない。能力は不壊、自動発動、千変万化、状態異常無効。
所持者や使用者はこの道具を持つ金倉洋平が認めたもののみである。その他の者が使用することを禁ずる。
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「やっぱり、良い方へいったのね。悪魔の直感を舐めたらいけないわよ」
ケラケラと笑いながら洋平の顔を見るアカ。
「これは……すごいな」
「ええ、こんな道具見たことないわ。主は異世界の人でしょう?」
アカは確信したように聞いた。アオも首を縦に振る。
「……そうだ、俺は地球っていう場所から来た。それにこの世界のこともいくらかは知っているよ」
「そうなんですね。それじゃあさっきの石をもう少し作れますか? 多分、まだこのイヤホン? は強化できます」
アオは急かすように洋平の右腕を上下に振る。洋平は倉庫内から先の魔核を四つ取り出し片手で進化石を作り出した。
踏んだくるように石を取り、アカはまたイヤホンへとぶつける。
三つ目をぶつけた時だった。
「この石はもう要らないよ。後は倉庫に入れておいた方がいいと思うわ」
洋平は少し不思議に思いイヤホンに石をぶつけてみたが石はなくならない。
「本当だ、これも直感?」
「そうよ、まあ主と会った時には発動しなかった使えないものね」
「いやいや、十分だよ。やっぱり二人を買って正解だったな。……ってそうじゃない。二人の姿を惑わせる道具を」
「もうイチャイチャは済んだの? あら、二人ともより可愛くなったわね」
気配を察知できるようになった洋平や、それらに長けているはずのアカやアオを出し抜いてマリアベルがまた部屋に入ってくる。
そのためにアカもアオも悪魔の姿から人の姿へと戻すのを忘れていた。
「これを渡すのを忘れていたのよ。シーアからお礼だって金属類ね。これで二人にピッタリの腕輪でも作ったら?」
そう言い残してマリアベルはまた部屋を去った。台風のようなその行動にポカーンとしながらも、洋平は置いてかれた袋に手を突っ込む。
銅や鉄、鋼、銀がその袋には入っていた。さすがに金やダイヤモンド、異世界特有の鉱石は入っていない。
その中から一番高価な銀を取り出しMPを注ぎ始める洋平。マリアベルの言う通り腕輪を作ろうとしていた。サイズは二人の手首を触って合わせる。
最後にあるスキルを付与させながら腕輪を作る。さすがにそのスキルのランクが高すぎたようで壊れそうになっていたが、一つの道具をまた使用する。
余った進化石だ。そしてそれは作られた。
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銀の腕輪
付与、色欲(認識阻害)
アカを思いながら作られた腕輪であり、使用者はそのものに限られる。使用者に対する認識を変化させることができる。
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同じものをもう一つ作り洋平は深い溜息を吐いた。途中で進化石が足りないために同じものを作った上でだ。
「さすがにMPを……使いすぎた……。二人とも、手首を出して」
二人の細い腕に銀色の輝かしい、二人にしか使えない道具が付けられる。アカもアオも瞳を潤ませて、また抱きついた。
そして洋平は突っ伏すかのように椅子に座ったままテーブルの上に体を乗せ瞳を閉じた。
やっとタイトル回収会です。
戦闘やこれからの進路を含めた話で二、三話続きます。そしてそこからスローライフに向かい始める予定です。
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