ダンジョンと奴隷
久しぶりのステータスです
「それでこんなに稼げたのね。……規格外だわ」
そんな声をあげたのはマリアベルであった。
食事も終え、今日の成果を聞かれた彼があるがままに話をしたのだ。隠し部屋のことは内緒ではあったが。
彼はあははと頬を掻き、マリアベルを見ていた。冒険者ギルドから得たお金は銀貨二十四枚。後はドロップアイテムだ。
それにそのドロップアイテムを使えば、知っている錬金レシピを作れる。
それに気付いているのだが、彼は作るか悩んだ。
最悪なことにエイトの街には、錬金ギルドというものはない。
他の街にはあるのだが、そこまで行く気もさらさらない。
商人ギルドにも登録しておこうか。
それに仲間がいた方が戦わなくて済む。
彼は自堕落に生きたかった。例えるなら安定の給金の貰える人のヒモになりたい。
そんなことを考えていた。
さすがにそこまではマリアベルも気付けていなかったが、
「また気持ち悪い顔してるわよ」
彼の口からはヨダレが垂れていた。
彼の頭の中には女の子に生活させてもらい、面倒の殆どを執事やメイドにしてもらってる姿しかなかった。
とてもわかりやすいゲス野郎である。
「……明日はもっと稼げると思います」
平静を装い先程のことをなきものにしようとした洋平。しかしそれは失敗に終わる。
「まあ、それはいいことよ。変なことにお金を使わなければ、ね」
そんな強めの釘さしは彼の心に残り続ける。
ーーなぜバレた!ーー
彼の魂胆はこうだった。
今日中に魔力を使い切って道具を作る。それを明日売り払い夜の街に繰り出そう、と。
彼は男である。思春期真っ只中の少年がそのような事に興味がないわけがなかった。
そしてマリアベルにとってそれは無駄。
よってその作戦は失敗に終わった。
ーー早く稼いで家を買おうーー
紆余曲折し、そのような結論に至った。とんだ自由の履き違えである。
「それで、ちょっと準備するのでもう部屋に戻りますね」
そうして席を立つ洋平。
マリアベルはそんな姿を見て微笑んだ。
部屋に戻った彼は一つのウルフの皮を取り出す。安価で手に入る素材であり、色々なものへと変化させられるのだ。
もちろん、原価が安い分、あまり高くは売れないが。
「まずは……爆弾とか地雷とかいいな」
それは比較的容易に作れるものである。
確かに元の世界では作るのにとても費用や時間がかかるだろう。その中に魔力や魔石という物がなかったのだから。
まず爆弾というものは火薬が膨張し、エネルギーを解放するために飛び散る。それによって多大なダメージを与えるのだが、それは魔力で補える。
それは進化種の魔石で代用できる。
そう考えた彼は一つ、ゴブリンソルジャーの魔石を手に取り、火魔法を纏わせた。
「……うん、できた。……一応、見習い付与士も獲得できたし」
魔力を何かに纏わせる事に特化した職業。それが付与士の説明であった。だが真価はそこではない。
職業を弄り、下のように彼はさせた。
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金倉洋平
人族 レベル9
ジョブ
1.槍士LV6 2.格闘家LV6 3.見習い魔法使いLV6 4.見習い付与士LV1
スキル
色欲6、強奪6、槍術3、格闘術3、付与5、腕力強化7、千里眼4、鑑定眼4、身体強化5、錬金術6、農業1
魔法
火4、水4
パッシブスキル
幸運、経験値上昇
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「うーん、まあできるかな。一応、鑑定眼には火の魔石ってなってるし。……うん」
彼はウルフの皮一枚につき、一つの火の魔石を入れた。このままでは爆発をしないため、中に魔力を充満させた。
落ちた毛皮というのは鞣されていない。つまりは中に油分などが豊富に含まれているのだ。
そしてウルフの毛皮の悪い点であり、今回は良い点になった特徴の中に、薄いというものがある。
比較的薄いのだ。ダンボールのように衝撃を吸収することもない。
つまりは燃えてしまえばいいのだ。その考えに彼は至ったために、火の魔石を作成し入れた。
火の魔石は割れると炎を出す。そして中に充満した魔力というものは、魔力でできた何かと結合しやすい。
この時に強いエネルギーが作られるのだ。
彼は数回失敗したものの、そのままゴブリンソルジャーの魔石が無くなるまで作成し続けた。
◇◇◇
その次の日、彼はベットにうつ伏せるように倒れていたのを感じながら起きた。
とても眠そうに瞳を擦り、階段からテーブルに降りた。時間はとても遅く、彼が寝坊してきたことは想像に容易い。
「やっぱりいないか……」
テーブルにはパンとその上に目玉焼きが置かれ、スープがあった。
そしてそこに隠されたように置かれた手紙。封はされておらず昨夜の内に急いで書かれたものであることを伺えた。
中から取り出した紙を上から下まで読み込んだ彼は、一つ息を吐いた。
簡単に言うと中に書かれた言葉は、あなたに触発されたから冒険者家業をもう一度やってみるわ、である。
そしてもう一枚の三つ折りされた長方形の紙。
ゲームをよくやっていた彼にとって、見慣れたものであった。
「奴隷商人……への紹介状……」
それは彼が欲していたものであった。
商人になるからには、正規の奴隷商人などとも関係性を持ちたかったのだ。
そして奴隷の是非。
仲間がいるかいないかで戦力が変わるのを、マリアベル自身がよく知っていたからこその判断であった。
そして手紙を包む袋から出てきた一つの鍵。
レゾン・デートルの鍵であった。
ーーここまでよく信用されたなーー
そんなことを考えながら、彼はにやけ朝食を終えた。塩だけで味付けをされており、彼の舌をとても感動させた。
そのまま彼は鍵をかけてジャックに向かったのであった。
ジャックに向かう最中は昨日のような変化はない。それを彼は感じて少し安堵した。
鍵はなくさないように収納され、今回彼がジャックに向かったのも爆弾の威力を調査するためだ。
そして今回それを売るつもりでもある。
奴隷商人への紹介状は完全に考えていなかったのだが。
ジャックに着いた彼は変わらず中に入っていく。中の冒険者は多く、昨日のようなことをするつもりもないため、彼は千里眼を使用した。
マップには多数の人がおり、奥で動かず待っている人もいる。
彼はそれを見てすぐにそこに向かった。最短距離のため数分でその場に着き、扉を開ける。
中にいたのはパーティーが三組だ。いずれもその先の重厚そうな扉の奥へ行きたがっているのか、足をうずうずとさせていた。
フロアボスと階層は扉で隔離されている。普通の扉の奥に準備室のような部分がおり、その奥の重厚そうな扉が開けば次の人が入れる。
ちなみにだが、パーティーの最高人数は八名である。それ以上がいない理由はその重厚そうな扉の奥へ、九人以上だと入れないからだ。それもゲームの設定で仕方なく、だが。
一時間が経過した。
そこでようやく彼の番となったのだ。
彼の前のパーティーが入って二分も経たず、その扉は開いたのである。他は十数分とかかっていたのにだ。
そしてその理由は中に入って知ることとなる。
彼が一番に見たものは大きな二足歩行の狼が、男女の若いパーティーの人員を食らっていたところである。
次回、フロアボスと書きましたが、申し訳ございません。本当に次には戦うのでもう少しお待ちください。
これからもイヤホンをよろしくお願いします。できればブックマークや評価等もよろしくお願いします。




