初めての体験1
文章レベルが下降気味。
手直しすると思います。後、アフターストーリー書くかもです。
「……えっと」
彼が起き上がったのを見て居心地の悪そうな顔をする。
彼はまだ覚醒しきっていない頭を回した。
なぜ目の前に騎士がいるのか。
それも私服の見知った騎士が。
一つの考えに至った。
「すいませんでした!」
ベットの上で頭を下げた洋平。
行き着いた考えは無意識のうちに二人を部屋に連れ込んだことだった。
二人が布団の中に入っていなかったということは、手を出してはいないだろう。
そんな考えを持って何度も頭を下げた。
しかしそれで頭の中をこんがらがせられたのはアルとリルであった。
私たちがなにかしただろうか、と。
そしてアルも一つの考えに至った。
「こちらこそすいませんでした! こうなってしまうことを理解しておきながら、我慢できなくなって……やってしまって」
もちろん、アルが我慢できなかったことは悪戯することである。
だが彼からすれば手を出してしまったのか、と疑心暗鬼に陥った。
リルは二人が勘違いしていることに気付いていた。だがことの成り行きを見守ろう、と楽しんでいる。
そんな中、リルは彼を追い詰めるような言葉を放った。
「これは責任を取らないといけませんね」
アルに向けて言った言葉であった。
だがわざと勘違いするように考えられた言葉でもあった。
彼がどのように勘違いしたのかは、容易く予想できるだろう。
「アル、本当にすまない。……やってる時には楽しめていたか? あいにく記憶はないのだが」
「えっと……楽しかった……です。もう一度やりたいくらいに」
アルの言葉に「よかった」と声を漏らす洋平。
リルは笑いをこらえるのに精一杯であった。だがその我慢も限界に近い。そのためもういいか、と切り上げる。
「ヨーヘイ様は何もしていませんよ。やったのはアルです。それに乙女に関わるなにかを失ったわけではありませんし」
口元を手で隠しながらクスクスと笑うリル。
それでも彼が気付くことはない。良くも悪くも彼はとても感が鈍いのだ。
アルもよくわかっていないようで、小首を傾げていた。
少し時間が経過した。
考えがまとまり、ようやくことのあらましを理解した彼であったが、まだ自分を信じられない。
何度もアルに「なにもしてないのか?」と聞き、逆に「私からしかしてないですよ」と返される。今の言葉で七度目だ。
何度、聞いたとしてもすぐに納得できないあたり彼の優しさが垣間見える。
階段を三人で雑談しながら降り、階下にあるテーブル席に座った。
元々マリアベルはこの家でルームシェアをしたり、友人を呼ぶことが多いため何人いようと大丈夫なようだ。
テーブルに並ぶ六つの椅子の半分はもう座られており、テーブルには数点の料理が添えられていた。
アルとリルは驚愕した。
あんな音を奏でながらこのような料理を作れるのか、と。
黄金色に焼かれたハンバーグに少し赤みの強いソースがかかっている。それが一人一個ずつ並んでいるが、サイズは違うようだ。
洋平の分だけ大きい。中皿一杯の大きさでありながら、タレもかかっているため零れそうである。
そしてボウルに入ったサラダ。肉の入ったスープ。最後にパンである。
アルとリルはエミルとラルが席に座っていることに一瞬驚くが、すぐに状況を察した。
食事をしていきなさい、というマリアベルの優しさなのだと。
空いている席はマリアベルとエミルの間の席と、リルの両端である。
流石の彼でもマリアベルの隣は気恥しいし、ラルの隣も少し怖い。そんなことを考えて止まっていた。
そんな時だった。
「早く座りなさい」
そう言って隣の席を叩いたのはラルであった。
マリアベルの前でラルの隣の席を叩き、早く来いと何度も催促している。ラルを除く騎士の者たちは暖かい目をしてそれを見守っている。
そんな中で彼は隣に行かない、という行動ができるわけがない。
言われるがままに隣に座り他の二人が着席するのを待つ。最終的にマリアベルとエミルの間の席はアルが、ラルのもう片方の席はリルが座った。
周りがフォークに手をかけた時に彼だけ手を合わせた。
形だけであったがあまり気にされないように少しの間だけ。そのままハンバーグをナイフで切り取り、口に入れる際に「頂きます」と小さく言う。
聞こえたのであろうか、ラルは不思議そうな顔をしていたが。
彼がそれを口に含んだ瞬間に肉汁に襲われた。店に並ぶような一瞬で流れ出す肉汁。少なくもなく多くもなくでとても美味しい。
彼は頬をほころばせた。それを見て嬉しそうに笑うラル。
「美味しかったかな?」
マリアベルの言葉が食卓に響いた。
「はい、こんなに美味しいハンバーグ久しぶりに食べました。これをマリアベルさんが?」
「ヨーヘイのハンバーグはラルが」
「あっそれは!」
マリアベルの言葉の途中で立ち上がるラル。
わかりやすい行動であった。彼のハンバーグだけラルが手をかけた。それも丹精込めて。
最初はエミルが全員分やろうとしていた中で、「私がやるから」と無理に手を出したのである。
まあラルからしたら助けてくれたお礼という意味合いではあったのだが。
だが姉であるリルと共にいる時も料理を作るのはラルであった。少し大きなハンバーグをきちんと焼き、ましてや肉汁を閉じ込めるのは御茶の子さいさいである。
彼はそんな二人の行動を見て、「仲がいいんだな」とほのぼのとした。
ラルが作ってくれたことはわかる。だから彼は、
「ありがとう、すごく美味しいよ」
とラルに笑いかけた。ラルはそのようなことをされるとは思っておらず、ましてや彼を異性としては見ていない。そのため笑い返すだけにとどまった。
その後、何事もなかったかのように食事を続けた。
自分の量を食べきりラルの方を向く。斜め上から見るとつり目は少し垂れているように見え、大きな目であることもわかった。
不意にラルは視線を感じとって斜め上を見た。
一瞬、ほんの一瞬だけ彼と目が合ったラル。
すぐに視線を逸らしたが、近くで見つめられドキドキした。
私なにかしてないかしら、と目を上下左右に動かしながら何もないことを確認する。
そんなラルを見て大丈夫かな、と心配をする彼。
また目が合った。今度は確実に睨まれた。
「何イチャイチャしてるんですか」
リルの声が響いた。
アルとエミルはナイスとばかりに親指を立て、マリアベルはあーあと頭に手を当てた。
「えっ……いちゃいちゃ……?」
彼は心底わからないとばかりに顎に指を当てた。悩んでみたがわからないようだ。
反対にラルは「イチャイチャなんて」と声を荒らげた。隣に座るリルが「どおどお」と宥めかけるが、本当に「どおどお」と言っているために「私は馬か!」と噛みつかれる。
彼はこの世界にも馬がいるんだな、と関係ないことを考えていた。
◇◇◇
そのまま四人は泊まることとなった。
というのも食事を終えた後に出したワインが問題だった。
彼は元の世界では未成年であるが、この世界では立派な成人である。
がぶがふとまではいかないが、ある程度の量を飲んでいた。
少し口に含み喉に流す。アルコールの強い刺激と葡萄のような甘さが口の中に広がった。
もちろん、騎士の四人もマリアベルも飲んでいた。
アルコール度数は十五度程度。そこまで強くはない。
そして値段が高いこともあってジュースのようでもあった。
少しずつ飲みながら水も飲む四名とは違い、ただワインを喉に流し込むアル。そんなアルが倒れるのは時間の問題だった。
「仕方ないわ」と笑いながら家に泊まるように言ったマリアベルに、三人は頭が上がらない。
アルを二人一部屋の部屋に運び込んでいた。先にエミルが向かっており布団等を任せている。
時々「ううん」と艶かしい声をあげるアルにドキドキしながら階段を上った。歩く振動で胸の感触を背で感じていたことは、秘密にしたいのであろう。
赤くなりながらも部屋に運び、布団の上に下ろす。「まだー」と彼に甘えようとするアルを見て、昼の凛々しさがどこへ消えたのかと苦笑した。
それを見たエミルも苦笑するしかなかった。
「おやすみなさい……です」
エミルの笑顔が咲いた。それも特大の守らなければいけないほどの美しさを持つ花。
「ああ、また明日、な」
甘い雰囲気のせいであったか、彼はエミルの頭を撫でそんなことを呟いた。
エミルの視界には部屋を出ていく洋平の姿しか、目に映っていたなかったのだった。
そんな彼は疲れを感じていた。そしてそれと同様の恥ずかしさも。
なぜエミルの頭を撫でてしまったのか、雰囲気に流されそんなことをやった過去の自分を殴りたくなっていた。
そのまま自身の部屋の扉を開ける。そのまま死んだようにベットに体を任せた。
いつから話が進むと勘違いしていた?
すいません、力不足でした。
奴隷とダンジョンの二つは次回辺りにちょびっと出てきます。次回更新は土曜日くらいかと。
後、タイトル回収もダンジョンに入ってからです。もう少しお待ちを。
※イベント多すぎたのでラルの部分をなくします。
これからもイヤホンをよろしくお願いします。出来ればブックマークや評価等もよろしくお願いします。




