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彼は帰還する1

 生憎と日はまだ傾いておらず森には日が照らされている。


 コロニーの壊滅を彼自身が確認して、素材も進化種は全て、ゴブリンは三割が炎に巻かれ捨てざるを得なかったが七割は獲得できていた。


 これで依頼完了、そう意気込みコロニーを出た時だった。


 ふと彼の耳に声が伝わる。

 嬌声のような悲鳴のようなどっちつかずな声。その甲高さから声を出したものが女性だということには気付けたが他はてんでダメだ。


 日はまだ背丈が五メートルはある木の上に存在する。時間は十分にあるだろう。


 そう結論づけた彼はレヴァティーン片手にその場に向かった。


 ステータスの上昇でより早くその場に到着した彼の目には、甲冑を纏う騎士が数人映る。


 そして騎士たちが相手をしているのは彼が一番知っている存在だった。


「ゴブリンの残党か……」


 ゴブリンソルジャー二体をリーダーとしたゴブリンの群れ、総勢十三体が騎士を屠ろうと剣を向けていた。


 コロニーの残党と決めつけた彼であったが、その理由は簡単であった。


 武器を持っている、ただそれだけのことだった。もしかしたら殺した冒険者などの遺品を装備しているとも考えられたが、きちんと手入れをされているところを見ると否定できる。


 そしてそれがわかった彼の行動は早かった。


「援軍はいるか?」


 ゴブリンソルジャーに気を取られ背後から攻撃されそうだった騎士。


 その後ろに周りレヴァティーンで受け流しながら彼は聞いた。


「お願いしたい、簡単なお礼ならする!」


「了解」と呟いて攻撃を仕掛けてきたゴブリンの首を飛ばす。


 傍から見れば簡単そうに見えるが、やって見るとそうはいかない。ある程度の力を持ち武器の鋭利さを理解していないとできない。


 ガキンと音が響いた。

 彼の背後にいた騎士がゴブリンソルジャーと鍔迫り合いになっている音だ。ジリジリとその距離を詰められていきダメージを受ける一歩手前。


 だが彼がそれを許さない。


「邪魔だ!」


 騎士の背後からの一突きはゴブリンソルジャーの腹を貫く。


 そして体制が崩れたのを好機とした騎士の剣戟が入る。


 一手目は体に浅い傷が付いた程度、二手目は腕を飛ばした。

 そして三手目に心臓付近を貫かれゴブリンソルジャーは光に変わった。


「騎士全員同じ場所に集まれ! 各個撃破されるぞ!」


 彼の怒号に近い声が響く。

 数えた結果、騎士は四名いた。やられそうになっているのは二名。


 他の二名は彼の後ろで守られていた一人と、勇猛果敢にゴブリンの腕を飛ばす一名だ。


 だが戦況は良くない。彼一人なら三分とかからないが、力をあまり誇示したくないのと、騎士が思いの外弱かったのが相まって時間がかかっていた。


 そのために出た言葉だろう。

 彼の強さを理解しているからか後ろの騎士も大声で同調した。良くも悪くも後ろの騎士がリーダーらしく一箇所に集まり始める騎士たち。


 そこからは騎士たちを邪魔者だとは言えなくなった。


 戦い方を学んでいるからか少し単調な攻撃ながらも、何度も連携を重ね敵の攻撃を防ぎ始める。


 それこそ先程までの戦いとは打って変わっていた。

 その間に騎士たちが苦戦をするであろうゴブリンソルジャーの元へ向かう。


 彼の速度に追いつけるはずもなくゴブリンソルジャーは守ることしかできなかった。だがグループのリーダーをやっているからだろうか、初手や二手目などでは殺すことはできない。


 初手で横に大振りに振った槍は、後に下がったゴブリンソルジャーに当たらず空を切る。


 好機と見なしたゴブリンソルジャーは剣を向けて駆け出したが、彼は体制を立て直すためにくるりと一回転する。


 その際に二手目の回転斬りをしたのだが、やはり本能からか上に飛んだゴブリンソルジャーにかわされる。


 空中で剣を突き出してきたゴブリンソルジャーは、彼の頬を軽く切ることに成功した。


 だがそれまでだった。

 小さく呟いた「火球」の言葉。


 彼の目の前でゴブリンソルジャーは背を焼かれ光に変わった。


 その頃には騎士たちはなんとかゴブリンを四体までに削っていた。勲章であるゴブリンの素材がそこかしこに落ちていた。


 格式ばった剣戟はゴブリンにはいとも容易くかわせた。それが何回も来なければ、の話だが。


 前の剣戟をかわせば斜め横からの剣戟はかわせない。そこまでのステータスを持ち合わせてはいないからだ。


 ゴブリンが殲滅されるのにはそう時間はかからなかった。


 それを確認してから近くまで寄る洋平。

 パチパチと手を叩きながら寄っていったため道化の香りが酷い。


「凄いですね、もしかして街の騎士の方なんですか?」


 わざとらしく小首を傾げながら聞く。

 そんな彼の意図に気付かずに目、鼻、口を隠す、いわゆるサレットを片手に抱え礼をする騎士たち。


 やはり全員が金髪であり目は青、平たい顔ではなく凹凸の激しい外国人のような顔つきであった。


 それも全員が女性であり、もし戦闘に負けていたらどうなっていたか。彼はそう考えると身震いした。


「いえいえ、そのせいで負けそうになってしまいました。……お若いのにお強いですね……」


 何年も戦闘訓練を積んで自信も同時に築き上げていたのだろう。それが壊され遠い目をしたリーダー格の女性がそう言った。


「あの……お名前は……?」


 長いながらに癖毛のためかくるくる丸まった髪が印象的な少女が彼にそう聞いた。


 彼は顎に手を当てながら、「洋平です」と返すと嬉しそうに「ありがとうございました」と笑い返している。


「ヨーヘイ殿、助かりました」


 次にそう答えたのはリーダー格の騎士だ。


 元の世界の人の性分なのか、「いえいえ」と言って謙遜する彼を見て目を輝かせる騎士。


「颯爽と助けに入るその姿、とても感服しました」


 勇者を見るような目で彼を見つめ、時折瞳を滲ませる。彼はそれに気付けなかったかのように演じ、笑いながら「みなさんのお名前も聞かせてもらえますか?」と聞き返す。


「アル・レストです。一応このグループのリーダーをしています」


 短髪で肩ほどまでの金髪を風になびかせた、クールなリーダーが一番に答えた。身長も彼より少し低い百六十五程度だろう。

 そのため少し見上げられているのが彼をドキドキさせる。


「エミル……です……」


 先程名前を聞いた少女がそう答えた。

 百五十五程度で四人の中で一番小さなその少女はオドオドとそう答える。緊張しているのか癖毛を伸ばして丸めてを何度も行い、彼を見つめて目が合ったら逸らしてを繰り返していた。


「リルだよ。こっちはラル。姉妹なんだ」


 そう単調に答えたのが最後の二人である。

 身長はアルとエミルの間くらいであり、とても似た顔をしている。


 違う点は目だけだ。少しつり上がっているのがラルで、垂れ目なのがリル。髪型も同じツインテールになっており、綺麗というよりも可愛らしいという言葉があっている。


 そして少し彼に敵対心でもあるのか、ラルは睨んだ目をやめようとはしない。


 アルが制したとしてもだ。


「そうなんですね。ここにはなんで来たんですか?」


 率直な疑問を聞いた彼であったが、騎士たちは少し驚いた顔をしながら返した。「ゴブリンのコロニーの話を知らないんですか?」と。

はい、ダンジョン都市の騎士四名との出会いでした。誰がヒロインなのでしょう。

もう少しで奴隷が出てきます。モチベを上げなければ。


これからもイヤホンをよろしくお願いします。出来ればブックマークや評価等もよろしくお願いします。


そして最後に仕事の目処が立たない……。

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