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彼は行動を起こす7

時間見つけて書いたので少し短いです。

 半身を乗り出した洋平に対して、変わらず壊れたように「グギャア……グギャア……」と呻き続けるゴブリン。


 一歩、前に踏み出せば嬉しそうに汚い顔をよりクシャッとさせる。


 そんなゴブリンたちをどうすればいいのか、まだ結論付けられない洋平。


 殺してほしいように見えたのは間違いではないのだろう。現にレヴァティーンを前に突き出せば喉元を見せる。


 そこを突いてください、そんな言葉が彼は聞こえたような気がする。もちろん、ゴブリンは洋平たちと同じような言葉は発せられない。


「死にたいか?」


 そんな問いかけに理解してか知らずか首を縦に振るゴブリンたち。目からは大粒の涙を流し、恐怖からの解放を切に願っていることがうかがえた。


 だからだろう、リーチの長いレヴァティーンの横薙でゴブリンたちが死んだのは。


 一薙だけだった。痛みのないようにするためか、首元に一閃しただけ。そこから出血を起こし目を剥きながら彼女たちは死んだ。


 血が噴出したためか、周りには血溜まりができる。彼の脳内にはゴブリンの笑顔だけが浮かんでいた。


「汚い……けど綺麗か」


 そんな独り言を零して意図的に唇を三日月形に裂いた。自分の言葉を馬鹿げていると思ったから。


 人と魔物はわかり合えない、そんな気持ちが強かったからだろう。ただ襲ってくるだけのゴブリンなどと自分が似ているなど思いたくないのだ。


 少しばかりの戸惑いと、少しばかりの苛立ちを胸に抱きながら素材を回収する。


 それを解消するために次の部屋へと向かった。

 カンカンと響くその部屋にはゴブリンが八体いた。いや、進化手であるゴブリンアルケミスト、ゴブリンたちの武器を作っていた張本人だ。


 彼は音も立てずに作業をしているゴブリンアルケミストたちに手をかざす。


「強奪」


 鉄の塊に触れなにか操作をしていたはずなのに、それのせいでスキルを使うことができなくなる。


 一瞬でアルケミストたちは気付いたが、強奪の失敗もなかったせいか、後ろを振り向くまでの数秒でゴブリンアルケミストは全滅した。


 彼が手に入れたスキルの中には、もちろん錬金術も含まれていた。


 それを確認してステータスを開き、ジョブの四つ目に見習い錬金術師が付けられた。これは錬金術に携われば獲得できるジョブである。


 ここで彼が気にすることなどなかった。

 ただのゴブリンと似た存在が死んだ。それ以上でもそれ以下でもない。


 彼の苛立ちは解消されなかったため、次の部屋へと向かった。


 次の部屋にいたのは桑を持っただけのゴブリン。それだけなら良かったかもしれない。


「グギャア……グギャア……」


 息もたえだえな一体のメスゴブリンを犯す三体のゴブリン。そして英気を養っているのか横になっている数体。


 これでも一応、上位種だ。

 ゴブリンファーマー、農業の力を持つゴブリンだ。そのためか桑を装備しており、ゴブリンアルケミストよりは強いがその力はゴブリンソルジャー程度だ。


 そのため彼の気配に気づけるわけもない。メスゴブリンを、孕ますことしか頭にないものに気づけるわけもないが。


 胸糞悪さから彼は小さく「強奪」と呟く。


 やはり失敗はしない。スキルレベルだけが理由ではないだろう。


 彼はなにも言わずに外に出た。入口付近ではキングがゴブリンのグループを倒しているところが見えていた。


 そして彼は少し離れた。

 あえてゴブリンのグループがやられたのを見計らって、だ。


 小さな声が響いた。


「火球」


 下卑た笑みを浮かべながら彼はゴブリンキングの目の前で、相手側の拠点となる場所を潰した。


 小さな火の玉が民家を蹂躙する。

 ゴブリンキングの瞳にはまだ生きている仲間が炎に消えていくように思えただろう。


 実際は仲間の殆どが既に死んでいるとわかっていたら、ここまで怒りに身を任せることはなかったかもしれない。


 まだ生きている仲間がいるかもしれない、そんな焦燥感や希望があったからこそ、その元凶を早々に殺し救出に向かう算段を立てた。


 いや本能がそうさせたのだろう。そして彼はそれを見て酷く嘲笑した。


 知能を捨てるということは、戦いにおいて武器を捨てることと同義だと思えたからだ。下手をすれば罠にかかってしまう可能性も高くなる。


 だからこそ不意打ちで一撃を喰らわせようとした。

 初手は強奪をかけることから始まった。失敗しなかったため、彼は即座に攻撃態勢をとった。


「火球」


 民家を燃やし尽くした小さな火の玉がゴブリンキングに向かっていく。当たる数秒前だった。


 前へ飛んだ、ただそれだけだった。


 彼が嘲笑った本能がゴブリンキングを生かしたのだ。


 それを見て少々驚きながらも、まだ攻撃態勢の取れないゴブリンキングを後ろから見つめる。やはり魔物は獣と同じで知恵などない。

 だからこそ……


 コンマ数秒がとてもゆっくり流れた。

 振り返ろうとするゴブリンキングが首を動かしたのを見計らい、彼は手に持つレヴァティーンに力を入れた。


 醜悪な顔のままで一つの物体が首からずり落ちた。勝ちを確信したようなそんな表情。


 そのままそいつは光に変わっていき、ただの素材とかした。


「呆気ないな」と内心喜びながらもそう口に出す洋平。


 レヴァティーンはゴブリンキングの血で少し赤く染まっていたが、彼の纏うローブは依然として真っ黒く染まっていた。

もう少しでゴブリン編終了です。

次はダンジョン&奴隷編に入るのでよろしくお願いします。

多分、次話あたりでヒロインが出てくるかなとか考えています。ファンタジー要素を盛り込みたいので何がいいんでしょうね。

ちなみにこの作品の元の作品のエルフの二名は確定で出てきます。いつ頃になるかな……(遠い目)


これからもイヤホンをよろしくお願いします。出来ればブックマークや評価等もよろしくお願いします。

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