第6話 複雑な事情
入学式も無事終わり、その後の授業(?)も無事に過ごせた愛梨は早くも友達となった康と奏太に別れを告げ帰路についていた。
帰る途中、近くのコンビニに寄り晩御飯を買う。
「ふむ、今日はから揚げ弁当とサラダにするか」
さて、皆さん。
今コンビニ弁当を買っている愛梨を見て、「お前、金持ち設定じゃねぇのかよ」と思った人いると思います(思っていない人もいるかも知れませんが・・・・・・)。
実は神無月家の子、つまり跡取りの権利がある子は代々決まりとして十六になるまで神無月を名乗ることが出来ず(ちなみに愛梨は今まで天野愛梨と名乗って公立の学校に通っていました)、そして十六から成人するまで神無月家から配給される毎月のお金でやりくりして一人で生活しなければならないのです。
そして愛梨も長男、優介の変わりをしながらもその決まりに則り住む所とお金を持たされてこの春、家からポイッと外に放り出されましたわけです。
そして現在、愛梨が住んでいるのは・・・・・・
「よし、着いた。
ホント、学校から遠いんだよなぁ、皐月荘って」
私立青空高等学校から徒歩三十分、結構遠いところにあるアパート皐月荘。
何故そんなに遠いところに住むのか。
何故そんなに遠いのに徒歩なのか。
それは全て神無月家だとばれないため。
『というか、神無月家のことよりも女であることのほうが隠すの必死なんだけどね、私・・・・・・』
ガチャ、がチャ。
そう思いながらもドアの鍵を開ける。
「ただいま」
そう言いながら愛梨は返事のない部屋に入る。
これがこれからの日常になるはずだったのに・・・・・・静かで地味な日常を目指したはずなのに・・・・・・決して周りがそうさせてくれないことを愛梨はもうまもなく直感することになる・・・・・・。