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第16話 もう、これは全部夢であってほしい。

「あっ、そうだ。

はい、これ」

柚透が思い出したかのように持っていた書類を愛梨に渡す。

「?

何ですか、これ?」

そう言いながらも受け取る愛梨。

手渡されたのはある程度の分厚さの冊子で、表紙には「これから寮で暮らす諸君のためのガイドブック」と書かれている。

パラパラとめくってみた大体の内容は規則についてであった。

「基本、結構自由なうちの学校だけど、一応、規則あるんだよ。

大体でいいから目、通しといてね」

「はぁ、わかりました」

『大体って言われても、規則はきちんと読まなきゃなー。

でも、この中途半端な量の多さって・・・・・・やっぱ読むのに時間掛かりそーだな。

はぁー』

小さく心の中でため息をつく愛梨。

そんな愛梨の前を歩いていた柚透の歩行が止まった。

「あっ、ここだ。

優介、君の部屋だよ」

そう言われて、愛梨は視線を冊子から上げて、目の前を見る。

ドアの横にはプレートがあって、ちゃんと「神無月優介」と書いてあった。

それを見て少し愛梨はドキッとする。

まだまだ慣れない名前だが、この名前とともにこれからの大事な“青春”を体験していくことに愛梨は期待を抱く。

もちろん、不安は大きいが、この寮での新しい暮らしに対して少しながらわくわくしている愛梨。

『あー、ここで暮らすのも、ちょっと楽しみかも』

そうまじまじと名前が書かれたプレートを見つめていた愛梨は、「神無月優介」の下にもう一欄プレートが入っているのに気がついた。

「!!

あれ、もう一人・・・・・・?」

しかし、そのプレートは、上からガムテープがこれでもかと言うほどに張っており、書かれているはずの名前がわからない状態であった。

愛梨の質問じみた言葉に、柚透がそれに気づく。

「あっ、アイツ、またやったな」

柚透が少し困ったかのような顔で後ろ髪をかく。

「また」ということからこれが初めてじゃないのだろう。

そんなことよりも愛梨は一つ気になった。

「えっ、アイツって、俺、一人部屋じゃないんですか?」

恐る恐る柚透に聞いてみる愛梨。

もしも、一人部屋ではなかったら、愛梨はプライベートも“優介”でいなきゃいけないことになる。

「まさか」と少しビクビクしている愛梨に柚透は笑顔を向け、部屋のドアをゆっくり開けながら言う。

「ん?

あぁ、ここの寮、人少なくて、俺と優介以外に、一個上の二年と君と同じ一年の奴しかいないんだ。

だから部屋は腐るほど余っているんだが・・・・・・ほら、その規則に<同学年の相手がいる場合、共同で過ごすこと>って書いてあるから、さ」


それを聞いた時と柚透が部屋のドアが開け切った時は同時だった。


そして、その瞬間、目にしているものと耳から入った情報が脳に入った瞬間、愛梨は叫びそうになった。


地声よりも高く、しかも高校生男子が出せないであろう高さの声を自分の口から出るのを止めるのがやっとだった。


だから顔に出た表情は隠しきれなかった。



「っ!!!!!」




愛梨は本気で現実逃避したくなった。






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