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95話「冬城家二階」

「さあ、探すです!」

 玄関から冬城の家の中へ入った梓が、自分を鼓舞するように、大きめな声をあげた。


「ち……人ん家ってだけなのに、どうしてこう不気味なのかね」

 駿一がぼそりと言った。冬城の家の中は静まり返っている。梓がチャイムを鳴らし、大声で冬城の名前を呼んだのとは対照的とも思える。何者も受け入れ、しかし、何者も受け入れない。存在感の無い無味無臭の静寂が、駿一にはとても不気味に感じた。


「ええと……どこから探せばいいんだろ」

 瑞輝が家の中を見回しながら言った。この家を探すということは、家に入る前から分かっていたが、実際、家の中に入ってみると、どこから手を付ければいいのか分からない。

 玄関を上がってすぐの右手には階段があって、二階へ上がれそうだし、正面には、居間らしき部屋が、半開きの扉から覗いている。左右にも通路があるようだし、階段の向かいの左手には大きな扉もある。


「庭の広さに相応の、結構な広さの家みたいだからな」

「そうですか? 庭に比べると、ちょっとこじんまりしてるような気がしますけど……」

「ん……そうか。そう言われるとそうかもしれん」

「ああ、いえ。私の方が、ちょっと感覚が狂ってるかもしれないので。ほら、神社暮らしですし」

「ああ、そういうことか」

「そう考えると梓さんの家も、かなりの広さなんだよねぇ」

 瑞輝が、梓が神社に住んでいる様子を思い浮かべて、感嘆の声を発した。

「そうだな……おっと、雑談は置いておいて、探そうぜ。警察でも呼ばれてたらまずいだろ」

「そうですね。理由を話せば許してくれる……かもしれないですけど、どっちみち面倒な事にはなるでしょうし……」

 警察を呼ばれることには、梓も危惧している。理由を話せば許してくれるかもしれない。あくまで「かもしれない」が付く。警察が来る前に証拠が見つかれば、信じてもらい易くはなるだろうとも思うが、それにも「だろう」が付いてしまう。全てを分かっていたとしても、警察は厳しく対応するかもしれないということだ。その辺りは、どの程度、オカルトに理解のある警察がくるかによる。なので……。


「……運任せですよね、結局は。で、運なんて、自分の意思ではどうにも出来ないです。さあ、探すです」

「お……おう……」

 俺達は、結構危ない橋を渡っているんだよなと、駿一がたじろぐ。


「ええと、手分けして探す? 結構広いし」

「そうだな。二階と一階で分かれてもいいが……」

「いえ……固まっていくのが無難でしょう」

 梓が首を横に振った。

「呪いが仕掛けてある可能性は、十分にあるですからね。あの怪物以上の強敵が出る仕掛けだって、無いとは限らないです。外と違って、ここは冬城さんの領域ですから。冬城さんが時間をたっぷりとかけて仕掛けた呪いもあるかもです」

「あー……そうだよね。よく考えたら、折角、僕と駿一君と一緒に行動して戦力を集めてるんだから、分散させちゃだめか……」

「そういうことです。なんか、駆け引きし慣れてる感じですね、瑞輝さんは」

 ジュブ=ニグラスの呪いを使いこなせていると見なしてもいいほどの、呪いに対しての圧倒的な知識。それを持つ冬城を、梓は警戒するしかない。


「ええ? その……あはは……」

 瑞輝が笑って誤魔化す。異世界の事は、あまり人には話したくない。何となく、そう思うからだ。


「さて……まずは二階から行きましょうか。親は一階の居間、子供部屋は二階って、相場は決まってるです」

「そ、そうなの?」

「さぁ……?」

「勘です。大体、そんな感じがするです」

「随分身勝手な相場だが……とにかく、行ってみようぜ」

 駿一が促すと、梓が歩き出し、二階への階段を登っていく。階段は、横のスペースは広くて通り易いが、最近の家にしては、一段一段が結構な高さなので、上る時に腿を大きく上げないといけないので、少々疲れる。


 階段を登りきると、目の前を横切るようなフローリングの廊下に出た。廊下は少し狭めだろうか。廊下を挟んだ向かいには二つの扉がある。階段の側には、階段を挟んで左方向と右方向に一つづつ扉がある。

「二階に部屋が四っつか……やっぱ、広めだな」

 駿一が廊下を進みながら言った。

「言われてみると、やっぱりそうですね。ええと……ここからいきましょうか」

 梓が、階段側の、左側のドアを掴んだ。

「どうせ全部の部屋を調べるですから、近い所からいきましょう」

 梓がそう言いつつ、ドアを開けた。

「ああ……ここは関係無いですね」

「ん……トイレだな。よくよく考えたら、端っこにある階段の、更に端の狭いスペースだもんな」

「想像は付きますよね、言われてみれば確かに。なんか幸先悪いですが……もう一つの方はかなりの広さでしょうね。こっちも行ってみましょう」

 梓が廊下をスタスタと歩いていく。着いたのはトイレと同じ、階段の側にある、もう一つの部屋だ。向かいの二部屋は、ドアの様子から均等な面積が割り振られているように見えるが、階段側は、そうでもない。階段と狭いトイレが隅に追いやり、この大きな部屋が階段側の殆どを占有していると考えられる。


 ――ガチャ。

 梓がドアを開ける。

「んん? これは……」

 窓にはカーテンがかけられていて、外からの日差しが遮られているので暗い。

「ええと……これですか」

 スイッチを見つけた梓が、それを押した。

「やっぱり、書斎ですか。雰囲気がそれっぽかったので、なんとなく分かりました」

 部屋の中は、殆ど本棚で埋められているようだ。思った通り、書斎らしい。梓は納得すると、書斎の中を進んだ。

「この書斎は……」

 梓が、本棚の中央で立ち止まり、本棚にしまってある本、全体を見渡す。

 医学事典や国語辞典が並んでいたり、古い小説があったり。また、図鑑のようなものや、専門書の類もある。本だけではなく、CDも書斎に並んでいる。

「洋楽……古いやつですね。ああ、こっちにはレコードもあるですから、きっとそうです」

 ジャケットの雰囲気や、近い位置に置いてあるレコード盤から、梓は、この書斎にしまわれているCDは、主に古い洋楽のCDなのだろうと当たりをつけた。

「ううん……家族の書斎というより、父親の書斎といった雰囲気ですね、どうやら」

「冬城のじゃないってことか……」

「そっか、呪いの本とか、あるかもしれないから……」

 駿一と瑞輝も、書斎に並ぶ本を、きょろきょろと見回している。


「ええ。何か手掛かりになるようなものがあるかもしれないと思ったですけど、情報は本だけじゃなく、ネットにも沢山ありますからね。図書館でコピーも取れますし……でも、一応、一通りは見てみましょう。冬城さんのものが紛れてる可能性もあるですから」

 梓達は、書斎の中を一通り、ざっと調べて回った。

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