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68話「呪詛原液」

「えっと……ディスペルカースは、ちゃんと命中したように見えたから……効果が凄く少ないっていうことよね」

 エミナは、瑞輝のディスペルカースが命中した黒い紙をまじまじと見ている。


「そうなの?」

 瑞輝も、エミナの隣から黒い紙を覗き込んだ。

「あ……あれ?」

 黒い紙には、変化はこれといって見て取れない。端の方にエミナのディスペルカースによって出来た白い部分があるだけだ。

「なんか、変わってないね」

「ある程度の効果が無いと、この紙、反応しないから……」

「そうなの……」

「でも、この様子だったら、すぐに効果が表れるようになるんじゃないかな。ディスペルカース、二回目で打てたんだし」

「そうなの? うーん……もうちょっと上手くいくかと思ったけど……」

「難しめの魔法で、複合魔法の要素もあるんだから、これでも上出来だと思うよ。普通は何回も練習して、ようやく打てるようになるんだから」

「そうなのかい?」

「そうだよ! 後は威力を高めるようにするだけだから、練習を、回数こなすのがメインになるかな。体に馴染ませて、心にも馴染ませていく感じになると思う」

「ふうん……練習は、普通の魔法と同じなんだね」

 瑞輝はセイントボルトを覚えた際にも、似たような練習方法をした。セイントボルトは光属性の攻撃魔法で、複合魔法よりも格段に簡単に感じる。なので瑞輝は複合魔法や難易度の高い魔法には、それなりに特殊な練習方法があるものと思っていたのだが……。


「普通の人は、打てるまでに時間がかかるから、精神統一の練習だとか、複合魔法の思考を論理的に勉強したりとか、しないといけないこともあるけど……瑞輝ちゃんの場合、出来ちゃったから……後は、普通の魔法と同じように練習するだけだよ」

「そうなんだ……」

「でも、攻撃魔法と補助魔法の複合で、難易度も高めなディスペルカースは、威力が上がるのも普通の魔法よりも遅いはずだから、これからも時間がかかるかもしれないわ」

「なるほど……」

 ファンタジーRPG風に考えるなら「経験値が溜まりにくいか、必要経験値が多いスキル」といった所だろうな。と、瑞輝が心の中でRPGに例えた。


「行き詰ったり、何か分からない事があったり……他にも何か、行き詰ったりしたら遠慮無く言ってね。ディスペルカースは一筋縄じゃ使いこなせない魔法だから、何でも協力するよ」

「うん……ありがとう、エミナさん」

「あ、そうだ!」

 エミナはポケットから、皮の袋を取り出し、更にその皮の袋の中から中身を取り出した。


 瑞輝は、エミナが皮の袋から黒い小瓶を取り出したと思った。

 しかし、黒い何かが微かに蠢き続けている様子が分かった時、瑞輝はすぐに、実は小瓶が黒いのではなく、透明な小瓶に、黒い何かが入っているので黒く見えるのだと、瑞輝は思い直した。


「それは……?」

 なんだか嫌な感じがした瑞輝は、瓶の中の黒い何かに警戒しながらエミナに聞いた。

「呪いの元……って言ったらいいのかな? これに紙を浸すとね……」

 エミナさんが小瓶の蓋を取って、開いた瓶の口を、紙の白い部分に触れさせた。すると、瓶の口から黒い何かが紙に染み込んで紙を黒くさせ……紙は、エミナさんのディスペルカースを受ける前の、最初の状態のように真っ黒になった。


「白くなっちゃった部分の中心に浸すがコツなんだよ。最低限の量で満遍無く呪いが染み渡るの」

「そ、そうなんだ……」

 呪いの補充のやり方は分かったが、瑞輝の呪いへの警戒心は解けないでいる。


「あれ、ミズキちゃん、なんか警戒して……あ、そっか。これ、呪いだもんね。でも、大丈夫。確かにこの瓶の中には、ちょっと濃い状態の呪いが入ってるけど、だからこぼれないように口が小さくなってるんだよ」

 エミナが瓶の口を瑞輝の方に向けて付き出し、瑞輝に見せた。

「うん……」

 瑞輝が恐る恐る瓶に顔を近付けて見ると、確かに、少し普通の瓶とは違う。瓶は、主に円筒状のガラスで構成されているのだが、その円筒状のガラスの部分は、上部にいくにつれて徐々に先細っていて、最終的に、直径一ミリメートルあるかどうかくらいの太さの穴が確保出来る程度の太さになっている。


 エミナは、瑞輝が瓶の様子を確認したのを見て取ると、一ミリの穴を閉めるのに見合った大きさの、ごく小さい瓶の蓋を閉めた。瑞輝には、瓶の蓋はコルクのような素材で出来ているように見えた。


「この瓶に入ってる限りは、蓋を閉め忘れたりしても、急に漏れることは無いから影響は無いと思うけど……瓶が割れて、呪いが一気に外に出た時は、場合によっては危険かもしれないから、私かシェールさんか……居なかったら、誰でもいいから近くに居る人に言って、呪いが漏れた事を知らせてね」

「う、うん……」

 思った通り、結構危険な物らしいと、瑞輝は瓶の中身のことを理解した。瓶の口が小さくなっているのも、瓶自体を割ることでしか中身の呪いの力を発揮させにくくさせているためだろう。


「はい、そんなにびくびくする必要は無いけど、瓶を割らないようにだけ気を付けてね。こうやって……」

 エミナが、瓶を皮の袋にしまった。

「普段は柔らかい素材の袋にしまっておけば、万が一落とした時にも安心だから」

「ああ、なるほど……うん、そうするよ、ありがとう」

 瑞輝がこくりと頷いて、エミナから呪いの入った小瓶を受け取った。

「使い方、分からなかったり、忘れちゃったりしたら、その時も聞いてね」

「うん。じゃあ……」

 瑞輝が紙を壁に留めて、紙と距離を取り始める。


「穢れしその身に解呪の(げん)を……ディスペルカース!」

 瑞輝がディスペルカースを放った。魔法の練習再開といったところだ。


 エミナは、傍らの椅子に座りながら、そんな瑞輝の様子と、まだ頼りなさそうなディスペルカースの輝きを見ながら微笑んだ。


 瑞輝は暫く、ディスペルカースを黒い紙に向けて何度も打ち続けたが、黒い紙は、一向に白くなりそうにはなかった。


「瑞輝ちゃん、疲れてない?」

 瑞輝の練習の様子を、ずっと惚れ惚れした様子で見ていたエミナが、ふと、瑞輝に声をかけた。

「うん……でも、もうちょっと……穢れしその身に解呪の(げん)を……ディスペルカース!」

 瑞輝は魔法を詠唱したが、ディスペルカースは手の平から出ず、代わりに眩暈がして、体が少し傾いた。


「やっぱり、ちょっと休憩が必要だよ。今日はこの辺にしたら? 魔力が充分な状態でやってみたら、また結果は違うかもしれないし」

「うん……それがいいみたい……」

 瑞輝は、体を少しふらふらとさせながら、エミナの部屋のベッドに腰を下ろしたのだった。

魔法を撃つだけでも、結構大変なのです。

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