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ブラッド・メモリー  作者: じんぱる
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 「可愛いー!!!ね!正道君この子誰!?銀髪!外国の人なの?肌すべすべ!!!おめめは真っ赤とか凄いよね!お人形さんみたい!実はお人形さんが正道君によって命を吹き込まれたとか!?凄いよ流石正道君!!!」

 「離せぇ!!!息ができん!苦しいんじゃあ!!!」


 佳代はエーラを抱きしめてまるで初めてぬいぐるみのプレゼントを貰った少女かのようにグルグルと回していた。


 「おい、佳代その辺にしといてもらえないか?エーラが困っているぞ」

 

 正道の言葉でようやくエーラがどうなっているか理解した佳代。「あ!ごめんね!」とエーラをようやく解放する。「世界が回るんじゃ~」とまだフラフラしているエーラ。そしてまずいことになったと頭を抱えたい正道。状況は混沌に満ち溢れていた。


 そしてエーラを見つめていた佳代が思い出したかのように話し出す。


 「ていうかこの子本当に誰なの正道君?」


 ギクッとなる正道とエーラ。お互いに視線を合わせて瞬時に思考を合わせる。


 「と、遠い親戚でなしばらく俺ん家で世話することになったんだよ!なぁ、エーラ!」

 「そ!そうなんじゃ!!!これからよろしくなのじゃ!!!」


 冷や汗をかきまくる正道とエーラ、だが佳代は納得したのかうんうんと頷く。


 「正道君にこんな外国の親戚がいるなんてびっくりだよ。でもなにをこんな玄関先で言い合ってたの?ご近所さんの迷惑になっちゃうよ?」

 「いや、エーラの服えお買いに行こうと思ってな」

 「こやつがお前は留守番だと言って我を連れて行こうとせんのじゃ!我はすごーく楽しみに待っておったのにひどいんじゃ!」

 「な!?バカお前!?」


 してやったりと裏でくっくっくっと笑うエーラ、勿論そんなことを聞かせれば佳代は黙ってはいない。


 「正道君、それはどういう事なのかなぁ?」


  佳代の攻めるような視線に思わず戸惑ってしまう。


 「いや、だってな。危ないだろ、変な事件とか起きるかもしれないし…宇宙人とか超能力者とか…」

 「どういうことかな正道君?」

 「いや…その…な?」

 「???」


 心底そんなことを信じそうにない彼女に目の前の銀髪の少女がまさか人外ですよ〜、なんて言えるはずもなく正道はしぶしぶ言葉を失うしかなかった。




 

 「ていうかなんでお前までついてきてるんだよ佳代?」

 「だってこんなかわいい娘の服選びとか聞いたらついていきたくなるのが女子っていうもんですよ!」

 「まあ、別にいいけどよ...」


 現在、正道、エーラ、佳代は町のショッピングモールにきていた。

 

 「凄いのぅ、中はこんなふうになっておったのか」


 ショッピングモールの中を見回して目を輝かせているエーラを見て正道は不思議だと思う。


 魔女、とエーラ自身名乗っていたから実年齢と容姿は比例しないと思っていたからである。


 つまりはロリババアだと思っていたのであったが…


 「お主の思っている通りじゃぞ。ただこのような場所には近づくことはなかったからのぉ。超能力者というものはできるだけ他人の目に見られては都合がわるいからの」


 正道は少し寂しそうな表情と共に正道は自分の思考を読んだように答えたエーラを驚きの表情で見る。するとエーラはフッと鼻で笑い言う。


 「お前さんの表情はわかりやすいんじゃ。そんなに驚くこともなかろうに」

 「そんなにわかりやすいか?」

 「うむ、超絶にわかりやすいの。サルとチンパンジーを区別するぐらい簡単じゃ。」

 「それは本当にわかりやすいのか!?」

 「なんだお主そんな事も知らんのか?サルは日本人顔で、チンパンジーは外国人顔じゃ!」

 「怒られろ、色んな人に怒られろ」


何でじゃ正しいじゃろ!全然違うだろ!と言い争っている二人は周りの人の注目が集まってきていることにも気づかない


 「おーい二人とも遅いよー!!!」


 佳代が二人を呼ぶ。それを聞いてようやく正道は自分たちに集まっている視線に気づき顔が赤くなってしまう。正道は小走りで佳代の元に向かう。

そんな正道にたいしてエーラはしばらく佳代と自分から離れていった正道を眺める。




 「いかんせんはしゃぎすぎておるな」




 そんなエーラのつぶやきは誰にも届かなかった。





 「ところでロリババアっと言ったこと覚えておれよ正道…」


 その呟きは聞こえなかったはずのに、正道





 「可愛いよぉ~エーラちゃん!今度はこっちのも着てみてよ」

 「たっ!助けるのだぁ!!!あーーーー!!!」


 佳代の着せ替え人形とかしているエーラ、

佳代の服の趣味とエーラの趣味があっていたのか最初は二人ともノリノリであったが時間が経つにつれて佳代がヒートアップしていった。どこから持ってきたのかわからないがメイド服や巫女福、コスプレ衣装まで持ってきてからはもう止まらない。そして、着替えた物の評価を言う事が正道の仕事となる。


 「うさぎさんだよ!どうかな?」

  バニーガール

 「キャバクラじゃありません。却下」


 「結婚式はグアムとかでやりたいなぁ~」

  ウエディングドレス

 「生活に支障がありすぎるぞ、却下」


 「次に月にいくのはエーラちゃんかな?」

  宇宙服

 「もう完全にファッションの領域から逸脱しているだろ!却下!」


 完全にツッコミ役に成り下がってしまった正道は頭を抱える。本当にどこからそんな衣装を持ってくるのかと興味がわいてきてしまった。

 いっその事このカーテンを開けてやろうかと思っていた矢先佳代が試着室の中から出てくる。


 「これだついに天国へヴンを見つけたよ。正道君」


 そう恍惚の表情で語り出す佳代、その後ろにはまるで黒いゴスロリのような服をまとったエーラがいた。


 「まあ、確かに似合うけど日常的に着る服装じゃないだろ」

 「ふふーん、そう言うと思って他の服も買ってまーす。まあこの服は勝負服ということで」

 「勝負服ねぇ…」


 確かに綺麗な長い銀髪と白い肌には黒い服が似合っていた。それに本人も言っていたようにフリフリしている。


 「どうだお主よ最高の美とはこういう者のことを言うんじゃぞ」


 へとへとになりながらも威厳を保とうとしているエーラを見て、正道は自然と笑みがでた。


 「なんじゃ?何故笑うんじゃ!?へんか?へんなのか?」

 「ちげぇよ、そんなんじゃねぇよ」

 「いや、絶対そうじゃな!そうに違いないのじゃ!」

 「だから違うって」

 

 ぶつぶつと文句を言っているエーラをしりめに正道は会計を済まそうとする。


 「3万7000円になりまーす。お買い上げありがとうございましたー。」


 今世紀最大の悲鳴を上げたのは言うまでもない…

 



 「どんな買い物してんだよ。俺のこずかい今月は勿論、再来月までパーじゃねぇかよ…」


 ぐったりとフードコートにある机にうなだれる正道は燃え尽きた灰のようになってしまっていた。


 「ごめんって言ってるよ~正道君、ちょっと夢中になり過ぎちゃったんだよ~」

 「まあ、我の美貌がタダで見れるのだ良い買い物ではなかったかの?」


 そんな言い訳をする二人に抗議の目を向けつつ、いつまでもへこたれててはしょうがないと正道は気持ちを切り替える為に座っていた椅子から重い腰をあげる。


 「ちょっと便所に行ってくるわ」

 「わかった~、じゃ私達はパフェでも食べよ、エーラちゃん!お代は私が持つから」

 「ぬ!?パフェとな?そやつには以前から興味あったのじゃ!」


 そんな楽しそうにはしゃぐエーラ達をみてどこにそんな体力があったのかと疑問を持ちつつ正道は席をあとにする。



 

 


 「ふぃ~」


 用を足してひと段落した正道は手をふきエーラと佳代の元に戻ろうとしながら正道は思う。


 (あいつらが仲良くやれていて良かった)


 超能力者、普通の人間には持っていない物を持つもの。他人と大きく異なるものは迫害される。正道はそいうものを良く知っていた。自分自身そうだった。器用に生きる事なんてできずそこらじゅうに敵を作った。いや正確に言えば気づかないうちに出来ていた。嫌だと思うことに精いっぱい抵抗した。泣いている人がかわいそうで代わりに戦った。そして…


 「気が付いたらこのざまだろ」


 傷だらけの自身の拳を見る。親には遠ざけられ、高校でもほぼ一人。佳代や寛太だけだ。あいつらは何故か俺の事を怖がらない。ありがたかった。


 そしてだからこそエーラが普通な人間である佳代と仲良くしているのを見ると、安心した。

 全然大丈夫なのだとわかったのだから。


 「だけどこれ以上の出費は勘弁して欲しいな」


 フードコートに戻るための一歩を踏み出す。しかし、そこで正道は違和感を覚えた。あんなに騒がしかったショッピングモールが静まり返っているのである。あれだけ人が大勢いたのに静寂に包まれている。だがその静寂のなかに1人だけ立っている人物がいた。


 黒いフードに黒いコートに全身覆われて容姿は全くわからない。

 そこにいるのが当たり前のように立っていて、そこにいるのが不思議な感覚をさせる。   

 奇妙、一言で言い表すのならこの言葉。


 正道は身構える。明らかに普通ではない状況に対して自分自身が緊張しているのがわかった。額には汗が流れる。


 だが黒服はそんな正道にたいしてどうすることもなく一歩も動かない、ただ正道の前に立っているだけ。

 そんな状況に我慢ならず正道は黒服に問いただす。


 「お前は一体何者だ」


 だが黒服に反応はなくやはりただ立っているだけだった。そんな黒服の対応にしびれを切らした正道は無防備にも近づいてしまう。


 だがその瞬間正道は腹に何かに殴られたような衝撃をうける。


 「がっぁ?!」

 

 身体が吹っ飛び雑貨屋に突っ込む、息ができなくなる。

 

 「姿を現せ血の魔女…」


 ようやく話したかと思えばそれ一言で再び口を閉ざす黒服。加えてその声はどこか濁っていて男か女かもかわからない。

 正道は痛む身体を何とかして隠す。息を整え腹を確認する。鈍器に殴られたように痣になっている。


 「くそが、一体何が起こったんだ?」


 怪我をするのは慣れてはいるが今回の攻撃は何をされたのか全く分からなかった。  

 容姿も攻撃方法も全くわからない。わからないことだらけ、手の出しようがない。


 「もう一度言う、姿を現せ血の魔女」


 黒服が声を張る。正道がどこに潜んでいるのかも既に知られているだろう。

 (まさか本物の超能力者ってやつか)

 エーラの顔を思い出しながら心の中でぼやきながら強気に言い返す。


 「おいおい、一体何の話だ?全く話についていけないなぁ」


 せめてもの抵抗だ、正道自身しょぼいと思うがこうでもしないと取り乱してしまいそうだった。

 しかし、そんな正道に対して黒服は拍子抜けした言葉を吐く。


 「よかろう、これは警告だ。次私が訪れた時には覚悟してもらう」


 そういうと黒服は踵を返す。

 驚いた。まさかこんな言葉一つで対処できると思っていなかったからだ。


 「おい!ちょっと待てよ!」

 

 「一発殴られて終わりとかふざけんな!」そう正道は思い叫んだが既に黒服の姿はなく。ショッピングモール内も元の騒がしさを取り戻していた。


 「一体なんだったんだよ。全く。」


 正道のその言葉だけがそこに残された。


 


 

 「あれぇ?どこ行ってたの正道君?随分と遅かったね~」


 そんな風にパフェを食べ終えてのんびりと答える佳代の様子を見ると正道が巻き込まれた騒動は周囲に認知されていないという事は明らかであった。


 「エーラ…」

 「うむ、わかっておる」


 エーラは椅子に座りながら頷く。どうやらエーラはしっかりと気が付いていたようだ。

 エーラがわざとらしくハキハキと口調で言葉にする。

 

 「うむ、少し疲れたのだ。お主よそろそろ帰宅するに丁度良い時間ではないか?」

 「そうだな、佳代それでいいか?」


 そう聞かれた佳代は少し考えこむような仕草をしたあと笑顔で言う。

 

 「エーラちゃんが疲れたちゃったならしょうがないね。じゃあ今日はもう帰ろうか」


 そう言って佳代はスッと立ち上がると「早く早く」と先に行き手招きをする。

 その姿はどこか寂しそうに見えなくもなかった。

 

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