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ガラスの靴を姉に渡す  作者: 桜 舞華
王子様現る
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6

「うふ、ふふふふ……!」


 ね、姉様⁉︎


 突然、姉様が不気味に笑い出した。それは、今まであたしが聞いたことのない様な笑い方。


「姉様……その笑い方はダメです!」

「あら、ごめんなさい。レティ。あまりにも嬉しすぎて、私我を忘れてしまったわ」


 姉様は、ぴったりのガラスの靴を指差して柔らかく笑った。

 そっか、姉様そんなに嬉しいのね!


「姉様が嬉しいなら、あたしも嬉しい!」


 紛れもない本心を言うと、姉様は一瞬残念な子を見る様な目で見た後に兄様に視線を向けた。


「アレク様」


 鈴が鳴る様な美しい声。

 兄様は、ハッとした様に姉様を見た。見つめ合う。美男美女……いいよねー!


「……」


 姉様は兄様の耳に口を近づけ、何か囁く。愛の言葉かしら。あたしも知りたい!

 あぁでも、姉様があたしに言わないと言うことは、あたしに伝えたいわけでは無いと言うことよね。

 ならば、我慢よあたし。


「……婚約してください、リリアナ・シェスタ令嬢」


 兄様は一瞬暗い顔をして、それからにっこりスマイルで姉様に婚約の申し込みをした。


「えぇ、喜んで。アレクシス・ミランダード様」


 姉様はとっても幸せそうに微笑んだ。


 やっぱり、姉様と兄様は結ばれる運命にあったんだわ!


「姉様、おめでとうございます!」


 あたしは心の底から拍手した。姉様、これで将来も安定ね!何と言っても、財産だけは有り余るほどあるアレクシス様だもの。

 小耳に挟んだのだけれど、兄様の個人財産だけで我が家は持ち直すほどあるんだとか。


 やだ、お金せびったりしないわよ?


 そんな心の葛藤は全部飲み込んで、あたしは姉様を祝福した。姉様は天使の微笑みであたしにありがとうと言った。


「兄様も、おめでとうございます」


 あたしが言うと、兄様は複雑そうに弱々しく笑った。姉様が兄様を見つめると、弱々しそうな笑顔が満面の笑みになった。

 兄様、そんなに姉様に見つめられて嬉しいとは。どこまでも運命的な2人なのねぇ。


「あれ、姉様。アマンダを知らない?それに、お母様もいないわ」

「アマンダさんなら、さっき洗濯物が!と言って何処かへ行ったよ。それから、シェスタ伯爵夫人なら、やだもうこんな時間と言って、屋敷を出て行かれたよ」


 ……え、姉様が婚約していると言うのに?

 求婚されたというのに?


 我が家のお母様は、少しずれているのかもしれない。


「そんなことより、リリィ、レティ」


 兄様は、真剣な表情で切り出した。そんなことより、と言うほどの話題がありまして?


「何でしょう、アレク様」

「2人には、今日からでも僕の屋敷に来て欲しい」

「屋敷?」


 はて、兄様には“僕の”と言える屋敷はあったかしら。


「あぁ、2人は知らなかったんだっけ?僕は、君たちに会えなかった10年の間、愛おしい姫君を迎えに行くため資産を増やし、屋敷を買って……色々してたんだよ」


 え、何それ初耳ですよ。


「あら?アレク様、麗しの深窓のご令嬢方とデートなさっていたのでは?」


 姉様……このタイミングで聞くの?

 姉様は時折間が悪い。


 これも、お嬢様故だろうか。



「デート?あぁ、違うよ。ご令嬢の中には、独特の知識を持っている方もいるからね。その方達に話を聞いたり、事業のお手伝いを令嬢たちのお父様に頼んでもらったりしたんだ。ちなみに、人妻?とか言われる人たちも一緒だよ」


 兄様は、令嬢達に好かれる様な微笑みで熱愛報道をぶった切って行った。


 あたしとしては、姉様一筋であればなんでも良いんだけどね。


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