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ガラスの靴を姉に渡す  作者: 桜 舞華
王子様現る
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「レティ?ねぇ、どこ、レティシア」


 ……姉様が呼んでる。行かないと。

 あたしは、レティシア・シェスタ。お父様は由緒正しき伯爵家の当主。お母様は侯爵家の令嬢。


 血縁的に、あたしは伯爵家の令嬢。ただ、普通のご令嬢と違うのはあたしが没落貴族の令嬢であることだと思う。

 あたしが生まれた時は確かに裕福な貴族の家だった。だけど、あたしが5歳ぐらいの時には家は傾き始めていて、7歳の時には完璧に家は没落した。

 お父様は気位が無駄に高い人だったから、最初事業が失敗した時に、それを認めずに次々と他の事業に手を出したのがいけなかったんだと思う。お母様も見栄っ張りで、我が家の財産問題を考えることはなく散財に走った。

 姉様も以下同文。


 没落してようやく、お母様は節約を始めて、お父様もまともに働き始めた。目が覚めなかったのは姉様。蝶よ花よ、姫よと育てられた姉様は、優しくて自慢の姉様だけど、少しばかりプライドが高すぎる典型的な高飛車令嬢。


「レティ!早くきてちょうだい!」


 ほとんど家具のなくなった、形だけの伯爵家。メイドもほとんど解雇してしまったから、10年経っても自分の身の回りのことが出来ない姉様のお世話はあたしの仕事。

 少しばかり高飛車で、贅沢で、夢見がちなこととかを省けばあたしの大事な姉様だから、今のところは文句もなく姉様のお世話をする。


「はぁい、姉様。今行くわ」


 メイド達が使わなかったお仕着せを着て、あたしは姉様の元へ向かった。


 姉様は、天蓋付きのベッドで座り込んでいた。ちなみに、10年前はあたしも似たようなお姫様っぽいベッドで寝ていたのだけど、没落した時に売りに出した。

 すっごい安くしか売れなかった。貴族の調度品は品が良いのだけど、庶民はそんなもの使わないし、貴族は古いものなんて買わない。だから、当然。

 持ってるのが値打ちだったかも、と少しだけ後悔した。でも、明日のご飯ぐらいにはなったのであたしは満足。


「遅いわ、レティ。私が呼んだらすぐに来てちょうだいよ」

「ごめんなさい、姉様」

「何をしていたの?」

「朝ごはんの準備よ」


 余談だけれど、姉様の名前はリリアナ・シェスタ。愛称はリリィで、お母様やお父様にはリリィと呼ばれている。

 透き通るような白い肌に、細い肢体。金の髪に、青い瞳。小さな桃色の唇。巷では神様の〔愛玩人形ビスクドール〕と言われているらしい。

 あたしの容姿は、お父様譲りの栗色の髪に、最近畑仕事も始めた故の少し焼けた肌。それから、青とは言えないむしろ黒色に近い深い藍色の瞳。お世辞にも愛玩人形ビスクドールとは程遠い。


「そう。朝ごはんの準備……ね」


 姉様はすごく不満そうだった。多分、料理人コックが作ったものじゃないのが嫌なんだと思う。

 流石にそこまでのスキルは持ち合わせていないので、庶民的な料理しか出せない。唯一残ってくれたメイドのアマンダに教えてもらった料理だから。

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