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ロリの惑星  作者: 神原ハヤオ
【前章】ロリの惑星
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02「ようじょの国」その2

「おかげんはいかがですかぁ?」


 ナース幼女がベッド横にやってきました、

 元気ですよと答えると、にかっと笑って去って行きました。


 ……さて。


 眠りから覚めても、院内は幼女まみれのまま。

 じっとしているだけで、この奇妙な世界から抜け出せるとも思えません。

 

 だからこそ。

 今日はこの病院の外に出るのです。


「まずは……まともな服、から……」


 水色の病衣(ブラジャー無し)ではあんまりです。


 とりあえず駄目元で売店に行ってみましたが、あったのは子供用の下着ぐらい。

 よくよく考えたら、そもそもお金を持っていないのだから売店に行っても仕方がないのです。


 一度ベッドに戻って、ナースコールを押しました。


「はぁーい、よばれましたぁー?」

「ナースさんナースさん」

「なんですかなんですか?」

「体を拭きたいので、タオルを貸してくれません?」

「はいですぅ」


 お安い御用とばかりに、ナース幼女は元気良く去って行き、すぐに戻ってきてくれました。

 タオルを受け取り、礼を言います。


 トイレに行ってタオルを濡らし、体を一通り拭きました。


「くさくないかな……大丈夫かな……」


 これで多分……大丈夫……かな?


 ブラジャー、おりもの、上着、スリッパ以外の履物……。

 欲しいものはいろいろあるのですけど、とりあえずはこのまま出発することにします。


 廊下に出ると、さっそく『せんせぃ』に見つかりました。


「あれ? どこにいかれるので?」

「あの、おトイレに」

「あーー。きをつけてーー」


 ごめんなさいね。



ーーーー



 病院の外に出ると、そこは幼女の国でした。


 国民、総幼女。


 街を闊歩する幼女。

 車道を走るのは三輪車や自転車(まれに一輪車)。

 街並みは、まるで人形の家をそのまま大きくしたよう。

 ファンシーでスケールの狂うパステルカラー。

 商店街では、幼女が肉や魚や野菜ーーのオモチャを売っていました。


「やすいよぉー、やすいよぉー。お、どうだいおねぃさん、こんやはおさかなさんにしねーかぃ?」


 べらんめぇ幼女が魚の切り身(多分食品サンプル)を売っていました。

 何の魚なのか問います。


「たしか、さーんもとらとう?だったっけな……ほら、そこでおよいでいるぜぃ」


 魚屋のプールでは切り身のシャケが泳いでいました。


 商店街を抜けると、大きな川が流れていました。

 河川敷に座り込みます。


「夢……?」


 あるいは、ここが噂には聞く天国とやら?

 天国だとすれば、目の前にあるこの川が三途の川ということ……?



 夢でも見てるようなぼんやりした気分のまま、何気なく川の流れの先に目をやりました。


 おや、と感じるものが目に入ってきました。


 遠くからでも見つけられる背の高い建物。

 日本の細い円柱に、展望台が突き刺さっているような青いシルエット。


 その建物を私は知っていました。


 すっくと立ち、そこに向かいます。

 河川敷の道をしばらく歩いて行きました。


 だんだんと、幼女っ気がない場所になっていきました。

 ファンシーな町並みは、いつの間にやら古臭くも「普通の」住宅街に変わって行きました。

 人っ気もありません。

 人のいない街……。


 打ち捨てられた民家の住人は、背の高い草達でした。

 小さな交差点のど真ん中から、若木が天に向かって伸びていました。


 やがて目的の建物にたどり着きます。

 ガラス張りの青い塔。

 私の街のシンボルである建物、「ポートタワー」でした。


 ガラスはずいぶん汚れて色あせ、ところどころ割れていましたが……。


 ポートタワー、市の中心を流れる川、病院、商店街……。

 その地理関係が、記憶の中にある街の地図にピタリとはまっていきました。


 ……なんで?


 この一致が示す事実は、つまり……どういうこと?



ーーおねえちゃん、おとといまで『こーるどすりーぷ』になってたの。



 あの子が言っていた、腑に落ちない言葉。


 いや、まさか。

 それじゃあ、ここは……。


 走り出していました。

 川の流れのその先へ。

 ここが私の街であるなら、きっとそこに海がある。

 海の見える丘の上に、私の家があるはずなのです。


 そこに私の家があれば……どうするんだろう?

 私は「何を」確認しに行っているのだろう?


 捨てられた街を抜け、その場所が近づいてきます。

 足がどんどん重くなっていきます。


 怖い。


 今まで、こんなに怖いって思ったこと、なかった。

 お母さんも怖かったけど、あの事故のときも死ぬかと思ったけど……。


 事故?

 いつ事故なんてあったっけ?



 ぐるぐると混乱している間に、ついてしまった。

 そこで「見て」、すぐに理解しました。


 そこにあるのが、まぎれもない私の家であること。

 そしてもう今は、誰も住んでいないだろうということ。


 壁は汚れ、トタンの雨戸は錆びて朽ち果て、あるべき窓ガラスはすでに無く、吹きさらしの室内は床が抜けていました。

 

 しかし、私の家でした。


 嘘。

 こんなの、夢だよね。


 腰が抜けました。

 

 何をしたらいいのでしょう、こんなとき。

 いや、どうせ夢なのだから何もしなくてもいいのでしょうか。



 波の音。

 ずっと波の音。



 どれくらい経ったのでしょうか。

 西日が辺りに射し込んできました。


「こんなところでどーしたのかしら? おねーちゃん!」


 声の方に顔を向けます。

 黒く日に焼けた、ワンピースの幼女。

 麦わら帽がよく似合っていました。


「まいごなのかしら?」

「……そうなのかも」


 本当に、これからどこに行ったらいいんだろう。


「……日が暮れますけど、あなたは帰らなくていいの?」

「べつにいいの! かえるいえはないわ」

「え」


 日焼け幼女はカラリとした笑顔で言うのでした。

 まるで、なんてことないとでも言うように。


「お父さんやお母さんは?」

「おとうさん? おかあさん? うーん、よくわからない。あ、でもねえ、かえるばしょはないけどいくところはあるわよ!」


 行く所。


「……それは、どこ?」

「どこだっけ……?」


 どこですか……。

 

 と、そのとき、海から叫び声が聞こえてきました。



「幼女ですわぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!」



 浜に何かが上陸してきました。

 黒い怪人がこちらに猛スピードでやってきます!


「幼女分……幼分補給ですわぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」


 ロリコンと思しき黒い怪人が、日焼け幼女を抱き上げました。

 そしてあろうことか、そのやわ頬に自分の体を擦りつけ始めたのです。


「やわい! やばいコレやわい! やわいコレやばいわぁ!!」

「きゃはははははは! くすぐったいわよぉ、やめて、やめてよぅ!」


 幼女が笑うと、何かに弾かれたように怪人が離れました。


「ぅゎょぅι゛ょっょぃ!」


 何ですか。


 何なのですか、このロリコンの怪人は?!


「もぉぅひとり……いますわねぇぇぇぇぇぇ」


 怪人の矛先が私に!


 怪人が私に抱きつきました。

 ぬめぬめと湿った体表……全身に鳥肌が走りました。

 体が硬直して、身動きが取れません。


「や、やめっ……あっ……」

「やわい! やわ……い、けど、何でしょう……違和感を感じますわね……」


 怪人の腕が胸部に伸びます。


「ひゃうんっ」

「胸が……微妙にある……?」


 怪人がヘソ下にまで手をかけました。


「毛が……あれ、生えてますわ」

「や、ダメぇ!」


 あわてて両腕で怪人をつきはなそうとしました。

 ところが怪人は微動だにせず、私が逆にバランスを崩してしまいました。


 無様に尻餅をつきます。

 乱れた着衣を直しました。


「解せませんわ……幼女じゃ、ないというの……? 幼女じゃないなら……まさかーー」


 怪人が自らの黒い体表ーーよく見たら海藻ーーを剥がして投げ捨てました。


 現れたのは、眩く輝く白い体の女性でした。

 金色に輝く髪をなびかせて、まん丸の青い目で私を見つめていました。

 その関節は……球体関節ボールジョイント


「まさか、あなた……人間ですの?!」


【次回のロリの惑星】


 彼女は左手を腰に、右手で横ピースをきめました。


「世界の幼女をあまねく守る! スーパーアンドロイド、トゥインクル=トゥインクル 2ndですわ☆」

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