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ロリの惑星  作者: 神原ハヤオ
【後章】ロリの惑星:創世記(じぇねしす)
18/27

17「終の里」その1

 眠れませんでした。

 眠れるわけがありませんでした。


 私専用に用意された部屋で、天蓋付きのベッドにもぐり、布団の中でもんもんと蠢きます。


 明日は『終の里』を回って、妹を探さなければいけない。

 だからそう、きっとまたたくさん歩かなきゃいけないのです。

 体力温存のためにも、今は寝たほうがいいに決まっているのです。


 でも眠れない。

 それもこれもトゥインクルさんが悪いのです。

 トゥインクルさんがあんなことを言うから!

 「愛してる」なんて、今まで誰にも言われたことなかったのに……それがまさか、同性で、しかもアンドロイドに言われるだなんて!

 不意打ちにもほどがあるというものです。


 思い出してまた、布団に顔を埋めました。



ーーーーー



 そうこう考えているうちに、空が白んできました。

 こういうときは、外の空気でも吸って落ち着こうと布団から這い出ます。


 大バルコニー(露天風呂に改装されていました)に出て、水平線を見ます。

 もうちょっとしたら、水平線の先に朝日が昇ってくるはずです。


「おねえちゃん、はやいね」


 寝間着姿の幼女さんがバルコニーに出てきました。


「起こしちゃいましたか?」

「ううん、トイレにおきたの」

「……トイレ行くんでしたっけ?」

「なんか、きょうはでるかなって」


 何も出ないと思いますけどね、何も食べてないんだから……。


「……最近気がついたんですけど、幼女さんって人間から生まれた幼女さんと、そうじゃない幼女さんとで分かれてますよね?」

「うーん、むずかしいことはよくわかんない。こどもだから」

「ええと、じゃあ」


 言葉を噛み砕きます。


「お父さんやお母さんはいるのですか?」

「おとう……? なにそれ」


 この子は多分、人間から生まれた幼女さんではないのでしょう。

 人間から生まれた幼女であるタクトさんは、他の幼女とは違う雰囲気でした。

 なんというか、大人っぽいというか。

 そして……人とは違う種族であることが滲んでいたというか。


 でも一番、特異な雰囲気だったのは夢の中に出てきたあの幼女さんです。

 金髪碧眼の幼女さん。

 あのどこかトゥインクルさんに似たーー


ーー愛してます、人間さん。


 ああ、なんでまた思い出してしまったのでしょうか……。


「ど、どうしたのだいじょーぶ? かおがまっかだよ……」

「いえ……気にしないでください……ちょっと昨日のことを思い出しちゃって……」

「ーーなぜ君たちは朝風呂に入らないんだ……!」

「ひゃあっ」


 突如、露天風呂の湯の中から全裸のドクターが出現しました。

 体から湯気が出て、メガネは湯気で曇りきっています。

 いつからそこに……。


「こっちが何時からスタンバッていたと思うんだ! 気をきかせて幼女を裸にしてくれてもいいぐらいじゃないか!」

「なんというか、安心します。ドクターが相変わらずみたいで……」

「私もいますわよ……」

「ひゃああああ!」


 ぬっと、これまた乳白色の湯の中から全裸のトゥインクルさんが現れました。

 いつからそこに!


「どうしたのですか、人間さん。顔が真っ赤ですわ」

「朝、焼け、です!」

「あら、本当ですわね」


 振り返ると、確かに空が茜色に染まっていました。

 朝日が水平線の向こうから顔を出したのです。

 

 顔を出したのは朝日だけではありませんでした。

 黒い影が水平線から姿を見せました。


 それはまるで山脈。

 この世の果ての壁。


 ドクターの移動城が近づくにつれて、壁が全て巨大なビル群であることがわかってきました。


「嘘でしょ……あれが……」

「いや、場所的には間違いない。あれが『終の里』だよ……」


 『終の里』という名前から、もっと牧歌的な場所を想像していました。

 ですが目の前に現れたのは、複数のビルが無計画に融合してしまったような、いびつな建造物の壁だったのです。



ーーーーー



 接岸してわかったことがありました。


「この壁はボクの城と同じだ。浮いているんだよ、コレで」

「コレが浮いている? でかいなんてモノではありませんわよ……どういう原理で浮いているのですか」

「何らかの莫大なエネルギー源がある、とか?」


 見上げると首が痛くなるほどの摩天楼です。

 その摩天楼が幾つも横に連なって、海面に巨大な壁を築き上げていました。

 どのビルもコンクリートむき出しで、どこまでも無機質でした。


「とにかく中に入ってみないことにはわかりませんわ」

「でもどこからだい?」


「あ、あ〜。スピーカーってこれでいいのかニャ?」


 摩天楼から声が響きます。

 壁そのものがしゃべっているかのような大音響です。

 そしてアニメ声でした。


「ようこそ、終の里へ! 今案内へ向かうニャ!」


 壁の一部が門となり、そこから手すり付きの連絡通路がバルコニーに向かって伸びてきました。

 空に浮いた連絡通路の先頭には、何やら小柄な少女が怖がりもせずに立っていました。

 満面の笑みのその少女は、露出度の高い服を着ていて、猫耳で、尻尾が生えていました。


「……猫耳だ……! ジャパニーズ萌えだ! Kawaii!!」


 連絡通路が城のバルコニーまで到達しました。


「幼女型のアンドロイド……ですわね?」

「そうだニャ、トゥインクルお姉ちゃん! ニャーは終の里の案内アンドロイド、ペタバイト娘々(ニャンニャン)だニャ!」


 毛皮の手袋をした腕を顔の前に持ち上げてポーズを取りました。


「私の名前を?」

「お父様からよおく聞いているニャ。ということはその人間が……ふーん、なるほどニャぁ?」

「なんですの」

「なーんでもないニャー。そんなことよりついてくるニャー」


 ペタバイト娘々(ニャンニャン)が連絡通路の上で手招きをしました。

 連絡通路は海上数十メートルに浮いています。

 腹の奥がひゅんとなりました。

 ここを渡っていかなければいけないのですか……。

 

「どうします」

「なんか腑に落ちないところがあるけどまぁ……行ってみようじゃないか」


 トゥインクルさんとドクターが先に、バルコニーの手すりを超えて連絡通路に足をかけました。

 私も覚悟を決めました。

 

 柵を超えて連絡通路に足を踏み出します。

 手すりにしがみ付きながら、なんとか壁を目指して、這うように進んでいきます。



ーーーーー



 終の里の内部は、さながら夜の工場でした。

 無人の機械が唸り声をあげながら何かを生産していました。

 しかし暗い……。

 トゥインクル・ライト(トゥインクルさんの光る目)の光だけが頼りです。


「ここは工場区ニャ。生活区で必要な全ての資材を作っているのニャ」


 ペタバイト娘々が説明を始めました。

 曰くーー終の里は、巨大な円のような形をしていて、その円周部が工場区となっているのだそうです。

 生活区はその内側に広がっているということでした。


「どうしてこんなに暗いんですの? 灯りは?」

「そりゃ全自動だからニャ。人間が作業をしない以上は、灯りをつけておく意味がないニャ。それにーー」


 突然ドクターが素っ頓狂な声を上げました。


「今幼女がいた! しかも裸の! 裸の幼女がいた」

「それは本当ですの?!」

「ああ、その機械の影だ!」


 トゥインクルさん達があわてて機械の裏手に回りました。

 トゥインクルライトがなくなったら、もう一歩も先に進めません。

 あわててその後を追いました。


「あ、勝手に行動するんじゃニャい! あぶにゃいニャー!」


 突然、足元が抜けました。

 


【次回のロリの惑星】


「そいつらは影幼女だニャ。この工場区の全てのエネルギーは、影幼女たちによってまかなわれているのニャ」

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