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ロリの惑星  作者: 神原ハヤオ
【後章】ロリの惑星:創世記(じぇねしす)
17/27

16「ヒノキの大浴場」

「またいつでも遊びにおいで」


 マリーさんが私を抱きしめました。

 私も抱き返します。


「また来ます、必ずまた」


 私は老夫妻とタクトさんから多くのものを貰いました。

 衣類、生活雑貨、植物の種……。

 トゥインクルさんはというと、老夫妻の研究データをまるごとコピーさせてもらったようでした。


「癪だが、お前に頼らざるを得ない。その子のことを守ってやってほしい」


 ウィリアム博士がトゥインクルさんに頭を下げました。


「……別にあなたのために守るわけじゃないんですからね、勘違いしないで下さいね」


 トゥインクルさんも、不器用ながらウィリアムさんの願いを聞き入れました。


 わずかな間でしたが、この島で得たものは多かった。 

 私にとって何よりの収穫は、『終の里』の場所がわかったことでした。


ーーーーー


「黙っていてごめんなさいね。実は私たちのところにも、『終の里』の案内が来たことがあるの」


 昨日研究所に戻ると、マリーさんが私に言いました。


「あのときは断ってしまったのだけれど。でもGPSデータはちゃんと残っているわ」


 私は、すぐにでも出発を決意しました。


ーーーーー


「それでは、行ってきます。マリーさん、ウィリアムさん、タクトさん……お元気で」

「死なないで下さいね。人間さんが悲しんでしまいますわ」


 研究所に別れを告げて、海岸線を引き返します。

 岩ばかりの海岸線を抜けると雑木林が広がっています。


 林の奥に、例の鏡の円柱があるはずです。

 結局その正体はわからないままでした。

 きっとこの先もわからないままなのでしょう。


 林を抜けると、見慣れたDr.ストレンジラブの居城が見えてきました。



ーーーーー



「温泉をつくってみたんだ」


 最上階の展望室は、ヒノキ薫る和風浴場に作り変えられていました。

 脈絡が……。


「いやね、せっかくの海だというのに幼女たちが怖がって水着にならないからさ。それならばリラックスしてもらおうと思って、温泉をつくってみたんだ。これが大ウケでさ」

「100までかぞえたー!」「あまーい! うちは200やー!」「みずでっぽー!」「あー、なにすんのよー!」


 大浴場は湯けむりと裸の幼女さんたちで溢れていました。

 あまりに広いので、向こうの方では幼女さんたちが競泳をはじめていました。

 

 Dr.ストレンジラブ自身も裸で風呂につかっていました。

 トゥインクルさん同様に各所は球体関節でした。

 体のラインから考えて、女性型なのは間違いがなさそうです。


「でもよくよく考えたら、水着よりこっちのほうが露出が高いわけだから……もう当初のボクの目的は果たされてしまったんだよ」

「Dr.ストレンジラブ……あなたってロボは……」


 わなわなとトゥインクルさんが肩を震わせました。

 そしてドクターの傍へ飛び込みました。


「たまにはいいことをしますわね!」


 いつものトゥインクルさんでした。


「あは……あははははははは!」


 素っ頓狂な笑い声。

 キョトンとした顔で、トゥインクルさんとドクターが私を見ました。


 え?

 今笑ったのって、私?!



ーーーーー



「よし、『終の里』の位置は入力したよ」


 メインコントロールルームで、ドクターが計器を操作しました。

 ……裸で。


「なぜコンピュータールームにまでお風呂を……」


 いまやメインコントロールルーム(浴室)でした。

 幼女さんがおちょこを片手に気持ち良さそうにつかっています。


「や◯るとうめー」


 機械を操作し終わると、ドクターはいそいそと幼女さんの隣へ入湯しました。


「機械のことなら心配はいらないよ。全て防水に加工し直したから」

「なにその無駄な努力……」

「肌色が足りないんじゃないかと最近思っていたんだ。君も入ったらどうだい?」

「……じゃあ、そうします」


 服を脱ぎ捨てて、風呂に右足をつけます。

 熱い!

 温度差に体が震えました。

 でもそれもすぐに慣れて、心地よく感じてきました。

 一気に肩までつかります。

 乳白色のお湯は、本当の温泉みたいです。

 これは気持ちが良い。


「……なんだろう、割と素直に風呂に入ってきたというか……ちょっと意外だな」

「今までシャワールームしかなかったじゃないですか。ゆっくり湯船につかりたいって思ってたんです」

「ふぅん、そんなものなんだ。人間の感覚はよくわからないけれど」


 城が動き出したのがわかりました。

 ここからは『終の里』まで自動運転です。


「どれくらいで到着するんですか?」

「明日の朝には着くと思うね。余分な寄り道をせず、最高速で行くから」

「……そうですか」

「ところで幼女さん、ヤク◯トのおかわりはいかがかな?」

「うーん、けっこうよっちまったからなぁ〜」


 乳酸菌で酔ったとでもいうのでしょうかね……。


 『終の里』。

 人類最後の国。

 本当に、そこにいけば妹に会えるのでしょうか。

 ウィリアム夫妻のように、『終の里』以外で暮らしていたりはしないのでしょうか。



ーーーーー



 展望ルーム(大浴場)に戻りました。

 トゥインクルさんが、ガラスのすぐ近くで城の進む先を見ていました。

 背後では幼女さんらがきゃっきゃうふふしているにも関わらず。


「珍しいですね。幼女さんの方をみていないなんて」

「……そうかもしれませんわね。でもさっきの人間さんだって、珍しい反応してました」


 声をあげて笑ったことを言っているのでしょう。


「自分でもびっくりしてるんです」

「でも、笑った顔も素敵でしたわよ」


 不意打ち!


 やっぱり変だ、トゥインクルさんちょっと変だ!


「どどどど、どうしちゃったんですか?! この間から変ですよ、トゥインクルさん!」

「うふふ、それはきっと人間さんのせいですわよ」

「私の?!」

「そうですわ。私は、私自身のプログラムを書き換えることができます。それで時々、無意識に自分自身を書き換えていることがあるのですわ。……私はきっと、知らない間に自身を人間さんに似せようとしてたんですわね……」


 トゥインクルさんが……私をマネしようとしている?

 私なんかの、どこを……。


「私は元から幼女さんのことが好きですけれども、でも人間さんが妹さんのことを好きなのとは、またちょっと違う好きだったんですわね。なんとなくわかってきましたわ。これがきっと『愛』なのですね、人間さん風に言うと」


 同じようなことを、金髪碧眼の幼女さんが言っていた気がしました。

 じゃあ、あの幼女さんは……。


「愛してます、人間さん。だから約束しますわ。私は必ず、人間さんを妹さんの所へ連れて行ってみせます」


【次回のロリの惑星】


 それはまるで山脈。

 この世の果ての壁。


「嘘でしょ……あれが……」

「いや、場所的には間違いない。あれが『終の里』だよ……」

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