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ロリの惑星  作者: 神原ハヤオ
【前章】ロリの惑星
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10「はじまりの島」その1

 一人の老人が山の山腹から星空をみていた。

 天の川がよく見える場所だった。

 と言っても、今の時代星空がよく見えない場所はないのである。

 

「天の光はすべてロリ……地上の星は、消えてしまった」


 老人が独り言ちてため息をつく。

 山から海の方を見ると、雨雲が近づいてきているらしいことがわかり、またため息をついた。

 そうしてまた空を見て、山道を登っていくのであった。



ーーーーー



「南の島ですか?」

「南の島ですわ!」


 城は海上を順調に南下、日差しはしだいに強くなり、いよいよ赤道に到達するとのことでした。


「南の島、か。噂には聞いたことがある。白い砂浜、青い海。透き通った水が浜辺の貝殻をさらっていくんだ……」


 ドクターが目を輝かせました。

 南の島かぁ。

 私の頭にも南国の情景が浮かんできました。

 南国の植物が風に揺れるのです。


 ドクターがさらに続けました。


「その浜辺を駆け抜けていくのは水着の幼女だ! 日に焼けた幼女もいる! 腰紐だけの幼女だって!」


 雲行きが怪しくなってきましたね……?


「人魚幼女もいるかもしない! やや、深海に封印された神話級幼女だってーー」


ーーーーー


 本当に雲行きが怪しくなってきました。

 黒々と重い雲が、島に近づくにつれて空を覆っていったのです。

 島が見える頃には、すっかり雷雨となっていました。


「あびゃぁぁぁぁぁぁぁ」「ふぇぇぇぇぇぇぇぇぇ」「うわぁぁぁぁぁぁん」


 大ホールの中心で、幼女さんたちが一箇所に丸まって泣いていました。

 こんなに怯えた幼女さんの姿は初めて見ました。


「怖いんでしょうか、何かが」


 私が言いました。

 ドクターが頷きます。


「多分。……見ていたらボクまで不安になってきたよ……」


 トゥインクルさんは、ガラスの向こうの黒々とした島を見つめていました。


「かつて」

トゥインクルさんが口を開きます。

「このちでひげきがおきたのですわ。それがおもいだされているのです」


 悲劇。

 トゥインクルさんは悲劇と言いました。

 そう言ったトゥインクルさんの声は、なぜだかひどく幼く聞こえたのですが……気のせいでしょうか?


「……まったくもう。この天気じゃ水着どころじゃありませんわね」


ーーーーー


 城は島に接岸しました。


「火山島のようだね。もっとも今は休火山のようだけど」


 展望ドーム。

 ドクターが島の映像をガラスに投影しながら言いました。


「火山島?」

「海の中にできた火山の、その山頂部が海面に突き出しているのが火山島だ。要はとても大きな山だね。この島は大小いくつかの火山でできているようだ」

「人間はいますかね……」

「いくつかの建物は残っているみたいだけども……実際どうだろうね。幼女分もあまり感じられない」


ーーーーー


 雨止みを待って、島へ私とトゥインクルさんが降りました。

 ドクターは城で島の周りを調査したいらしく、城に残りました。

 幼女さんは怖がって出てきませんでした。


「意外です、トゥインクルさんは幼女がらみじゃないと動かないと思ってました」

「失礼な! その通りですわ!」

「その通りじゃないですか……」

「……でもちょっと、この島のことが気になったんですわ。人間さんのことも心配ですしね」


 岩ばかりの海岸線を抜けると雑木林が広がっていました。

 林の中を進んでいると、華奢な低木に真っ赤な果実が実っていました。


「あ、キイチゴだ。なつかしい……」


 小さくかわいらしい赤い果実。

 先ほどまでの雨の影響で、水のしずくが光っていました。

 キイチゴかぁ、そういえば学校からの帰り道にも生えていたっけ。

 小さい頃たまに食べていました。

 人の家のヤツでしたけども……。


 何の気なしに手を伸ばしました。


「それ食べたらいけませんからね、人間さん」


 静かに、しかし強くたしなめるような口調でトゥインクルさんに止められました。

 いつになく険しい表情でした。


「早くこの林をぬけましょう。大丈夫とは思いますけど、念のために」


 早歩きになったトゥインクルさんを追って林を抜けました。

 林を抜けたところで、突然トゥインクルさんが立ち止まりました。


「もう! 走ったり止まったりどうしたんですか?!」


「動くな」


 しゃがれた老人の声。


「見ない顔だな? あの要塞に乗ってやってきたのか? アンドロイドども……」


 声は後ろから聞こえてきました。

 トゥインクルさんが耳打ちをしてきます。


「面倒ですわね……排除しますか?」

「ま、待って下さい!」


 私は両手を挙げて振り向きます。

 相手は草木の影にいるらしく、姿は見えませんでした。


「聞いてください、私は人間です! あなたも人間なんですか?!」


 空気が鉛のように重たく感じました。

 木々が風に擦れる音が、うるさいぐらいのボリュームで耳に入ってきます。


「……悪い冗談だな。人間だというには、お前は若すぎるぞ。あんな連中も連れてきて、いったい何のつもりなのだ?」

「あの連中?」

「幼女どものことだ! くそっ、いまいましい……」


 トゥインクルさんがキッと林の中を睨みました。


「とにかくおとなしくしていてもらおう」


 衝撃が走りました。

 少し遅れてそれが爆音なのだと気がつき、それに遅れて銃声なのだと気がつきました。


 気がつくと、トゥインクルさんが私の前で膝をついていました。

 私を庇うように。


「干渉弾……! 人間さんに当たったらどうするつもりだったんですの……!」


 トゥインクルさんの声には、多分に怒りと苦痛が滲んでいました。


「おとなしくするのはあなたの方ですわ! トゥインクル・スタンガン!」


 トゥインクルさんの右手首が打ち出されました。

 右手首は林の中へ突っ込み、刹那光が瞬きます。

 にぶいうめき声。

 何かが倒れる音がしました。




【次回のロリの惑星】


「私は彼女たちを研究していた……人類を救いたかった。結論から言えば……幼女の前では人類は赤子も同然だった……」

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