表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
黒の召喚士 ~戦闘狂の成り上がり~  作者: 迷井豆腐
アフターストーリー3 結婚編
884/1031

第274話 邪神と吸血鬼と酒盛りと

 各勢力の今後を占う話し合い、ついでに飲み会――― という立ち位置で始まった筈の今会であったが、いつの間にかメインが飲み会、ついでに話し合いという逆転現象が起きていた。宴会が始まってから小一時間ほどが経過した現在であるが、未だに建設的な話し合いは始まる兆しがない。このままだとついでどころか、できたら話し合いをしたいな~、くらいのニュアンスにまで格落ちしてしまいそうである。俺はアルコール摂取を極力抑えながら参加しているんだが、アダムスとマリアは気にする事なくガンガン飲んでるし。いくら酒に強いと言っても、限度ってもんはあると思う。本人達が大丈夫だったとしても、エマという尊い犠牲が早くも出てしまっているのだ。


「本当に下戸だったんだな、エマの奴……」


 ちなみに彼女は飲み会が始まって数十分ほどで潰れてしまった。何でも茶と酒を間違って飲んでしまったとか、そんなベタな過ちを犯してしまったそうだ。にしても、一口でバタンは相当に弱い。いや、セラみたいにリミッターが外れるよりかは平和的だけどさ。


「安心して。倒れてしまったエマの分は、責任を持って私が食べる」

「シルヴィアちゃん、私も協力するよ!」

「うん、そこは一切合切心配していないんだが…… ええと、まだ食うのか?」

「「当然!」」


 食いながら食い気味に言うなよと。しかし、この二人に安定して焼き鳥を提供しているあの店主、やはりただ者ではなさそうだ。


「じゃっ、妾とツバキっち、プリティアちゃんの三人でユニット結成決定ね! この世界に新路線のアイドルを広めるよ!」

「クックック、王として歌手になるのも悪くない。妾が著名になればなるほどに、トラージの名もまた広く知れ渡る事になるじゃろう。ファンとやらも増えれば、妾に仕えようとする者もまた増えるという寸法よ」

「短い間しかできないと思うしぃ、とっても恥ずかしいけれどぉ…… マリアちゃん達にそこまでお願いされちゃったらぁ、私も頑張るしかないわん! 私達三人のプリティーでぇ、世界を獲るわよぉ~!」

「おい、どうしてそうなった?」


 円陣を組んで気合を入れるマリア、ツバキ様、ゴルディアーナの姿を見て、思わずツッコミを入れてしまう。マジでどうしちゃったんだよ? 最初のユニット案はまだ理解できたけど、今のは流石に異種格闘技戦が過ぎるって。アイドルって概念でさえ、この世界じゃ認知されていないんだぞ?


「誰も歩んだ事のない道なき道を行く。それもまた強さ、か…… マリアよ、ただの我はその姿勢を支持しよう。思うがままに世界で暴れるがよい」

「アダムス、お前は何を肴にして酒を飲んでいるんだよ…… アンタ、宴が始まってから酒しか飲んでいないような気がするんだが?」

「神と酒は切っても切れない間柄であるからして。当然、我にとってもそれは当て嵌まる」

「えっ、アダムスって酒の神だったのか?」

「フッ、なかなか面白い事を言うものだな、死の神よ。残念な事に、酒の神は別に居た」

「残念だったのか…… って、俺は神じゃないって。冒険者としての二つ名が『死神』なだけだって。つか、死の神はアンタの配下であるケルヴィムだろうに」


 ちなみにケルヴィム、ルキルは本日不参加である。今日の話し合いを約束したのは、他でもないあの二人なのだが、ケルヴィムは生き残った十権能を取り纏める為、ルキルは未だ静養中である為に来る事ができなかったようだ。もちろん、双方とも居場所は把握している訳だが。


「なあ、そろそろお話合いを始めないか? このままだとただの酒盛りで終わっちゃうぞ?」

「ふむ? 話し合い、か…… そう言えば、ケルヴィムがやけに意欲的であったな。ただの我に異論はない。が、現段階では特に必要性は感じぬな」

「必要性? 何でだ?」

「ただの我を復活させる為に、十権能はこの世界で贄を集めた。邪神などと呼ばれる怪し気な者を、大胆にも復活させようとしていたのだ。貴様やその仲間達がそれを阻止しようと、エルドらと戦った経緯は理解できる。理由としては十分なものだろう」

「まあ、そうだな。理由は何であれ、戦えた事は良い事だ」


 俺は大きく頷いた。


「頷くポイントが些かおかしい気がしたが、今は捨て置こう。しかし、今となってはその戦う理由とやらもない。この世界はただの我らが理想とする、素晴らしき場所だ。これを良き模範とする事はあっても、地の底に封印された我の瘴気に当てられた者――― 確か、魔王と言ったか? その者らのように、世界を破壊する事などはあり得ない。む、酒が切れているようだが、ただの我が注いでやろう」

「いや、もう酒はいいよ」

「むう、そうか……」


 顔は見えないが、心なしか残念そうな雰囲気のアダムス。初めて見せた感情らしい感情の発端が酒かよ。今度ジェラールっていう酒好きを紹介するから、こんな事で落ち込んでくれるなよ。


「話を戻そう。かと言って、別にこの地の支配を目的としている訳でもない。ただの我が復活した以上、ただの我と十権能の次なる目的は、主神の支配下にある他世界の解放だ」

「つまるところ、アダムス達の敵は俺らなんかじゃなくて、世界を運営する神々って訳だ。だがその理屈だと、転生神であるゴルディアーナは敵になるんじゃないか?」

「彼奴か? 確かに彼奴は複雑な立ち位置ではあるが、宴の前に自ら言っていただろう? まだ完全な神になっていない、と。転生神とは天使の長達を介し、主神もしくはその配下の神から転生神の役割を任命される事で、正式に引き継がれるものなのだ。今の彼奴は前任者から公認されただけの、神として中途半端な存在と言えよう。まあ要するに、彼奴はまだ主神とは繋がっていない訳よ」


 あー、そういやゴルディアーナが天使の長達を訪ねに行った時、本当はそこで儀式をする予定だったんだよな。長達の体を十権能に奪われてしまって、結局その儀式はおじゃんになったと聞いた。そのトラブルさえなければ、ゴルディアーナは今頃完全な転生神になっていたって訳だ。


「なるほどな。だから敵ではないって事か」

「正確に言えば、敵ではないが味方でもない状態だ。今後の彼奴次第でどちらにも転び得る。主神の側に付くか、ただの我らに賛同するか、それとも中立を貫くか――― どの道を選ぶのか、決めるのは他でもない彼奴だ。我らから何かをする訳ではないし、そちらから敵対しようとしない限りは手を出すつもりもない。だからこそ、ただの我と話をしたところで意味がないのだ」

「えー、そうかな? 妾は意味があると思うけど?」


 俺とアダムスの間から割って入るようにして、マリアがひょっこりとその小さな顔を出してきた。


「マリアか。丁度良いところにやって来たな。新ユニットの方はいいのか?」

「うん、今決められる事は話したから、めっちゃオッケー! な感じ。妾達は世界に名を轟かすよ!」


 マリア以外の二人は、割と現時点で名が轟いていたりするんだが…… まあ、それはさて置き。


「そう言えば、マリアはルキルの代弁者でもあったな」

「わっ、その言い方格好良いね! そう、妾はルキルちゃんの代弁者なの!」

「ふむ…… それで、代弁者殿は何が言いたいのだ?」

「それはね、それはね! よっし、みんな~! こっちに注目~!」


 まるでステージに踊り出すかのように、テーブルの上へと移動するマリア。テーブルの上に乗っている訳ではない。テーブルの上で浮遊しているんだ。これ、マナー的にはどうなんだ? テーブルに接触していないからセーフ、なんだろうか? ともあれ、ここに居る皆の注目を集める事には成功している。


「ルキルちゃんの目的はズバリ、先代メルフィーナを再び転生神の座に復権させ、その下で一緒に働く事! だから妾、決めました! アダムっちゃんとは敵対しま~す!」

「「「「「……えっ?」」」」」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[一言]  世界のほうが崩壊しそうなんですが……その辺大丈夫そ?
[一言] この場合、アダムスじゃなくて、ばけも…じゃなかった。かいぶ…ゴルディアーナと敵対する事になるんじゃない?
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ