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黒の召喚士 ~戦闘狂の成り上がり~  作者: 迷井豆腐
アフターストーリー3 結婚編
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第264話 人生相談

 南大陸発見全世界説明会が終了し、俺は一度パーズの屋敷へと帰還する事にした。四方八方でいざこざが連続で発生していたもんだから、最近は帰る機会を逃していたんだよな。だからこそと言うべきか、この隙間時間はタイミングとして丁度良かったんだ。留守を任せていたエリィやリュカは元気だろうか? いやまあ、分身体のクロト経由で定期的に連絡を取り合っていたから、リアルタイムで元気なのは知っている訳だけど。


「あ、帰ってきたみたいだね、ケルヴィン君。お邪魔してるよ~」


 ……いやまあ、連絡を取り合っていたからこそ、久遠くおんが屋敷を訪れていた事も知っている訳だけど。可憐で若々しい見た目と相反し、自称アラフォーであるらしい彼女は、我が家の庭で優雅に寛いでいやがった。


「お帰りなさいませ、ご主人様」


 久遠の後方にて控えていたエリィが、メイドらしく丁寧に俺を出迎えてくれる。実は久遠が屋敷にやって来た事を連絡してくれたのもエリィで、その際に客として迎え入れてくれと、予めそう指示しておいたんだ。


「ああ、ただいま。急な無茶振りをしてすまなかったな。何か変な事はされなかったか?」

「いえ、特にそういった事は。平和に茶菓子を楽しんで頂いていました」

「茶菓子、楽しんでま~す。と言うかケルヴィン君、本人を目の前にそんな事を聞いちゃ失礼だよ? おばさんは心が広いから、全然気にしないけどね!」


 そう言って、エリィが出したのであろう、客用の高級菓子を一口で頬張る久遠。よくよく見れば、結構な数の菓子を食べた形跡がある。何だろう、こいつからはメルやシルヴィアに似た空気を感じるような…… いや、本当に何となくなんだけど、気のせいかな? 気のせいだと良いなぁ…… まあ、それは兎も角として、だ。


「うん、今更ツッコミを入れる気にもならないんだけどさ、一応聞いておくよ。ここが俺の家だって、どうやって知ったんだ?」

「え? 飲み友のシンちゃんが普通に教えてくれたけど?」


 飲み友のシンちゃん? シンちゃん――― シン総長、お前この野郎……!


「あの自由人、何飲み友になってんだよ……」

「いやはや、良いお店とか沢山教えてもらっちゃった。今度ケルヴィン君も一緒にどう?」


 そう言って、グラスを口に傾けるような仕草をして見せる久遠。


「アンタの容姿でそれをやられると、色々と危ない気がするんだが…… で、マジな話、今日は何の用があって来たんだ? まさか、本当に飲みの誘いに来た訳じゃないんだろ?」

「えっ、そうだけど?」

「いや、冗談はもう――― って、何だよその本気の反応……」


 まさか本気の本気で、それだけの為にわざわざここまでやって来たのか? 確かアンタら、今は西大陸を中心にトラベル中だった筈だよな? ちょっとコンビニに行ってくるノリで、訪れた事もない東大陸まで来ちゃったのか?


「……ちなみにだけど、大陸間にある海はどうやって渡ったんだ?」

「えへへ、ひと泳ぎで来ちゃった」

「ひと泳ぎで、って……」


 やっぱりコンビニ感覚だったのかよ。ガウンで獣王祭が開催された時、グロスティーナが海を泳いで来たって話を聞いた事もあるけど、久遠の場合は…… 全然時間を掛けて来た感じがしない。多分だけど、本当にひと泳ぎレベルの感覚で渡ったんだろう。このフィジカル化け物め。


 ……グロスティーナ、グロスティーナか。ああ、そうだ。グロスティーナと言えば、ゴルディアーナが身内だけで葬式をするって言っていたっけ。確か、ゴルディアの聖地に墓を作るんだとか。エフィルの出産や各国の会談などで予定が重なり、俺は参加する事ができなかったんだが、近いうちに時間を作って、墓に手を合わせに行かないとな。それに、ゴルディアーナの事も少し心配だ。あの戦いの直後、表面上はいつも通りの様子だったけど、全く平気な筈は―――


「―――ケルヴィン君、何か悩み事? おばさんで良ければ、聞いてあげるよ? まあ座りなよ、丁度おばさんの真ん前の席が空いているからさ」


 ポンポンとテーブルの上を軽く叩きながら、俺に着席を促す久遠。いや、ここって俺んちの庭なんだけど…… まあ、そんな細かい事なんて今更か。素直に向かいの席に座る。


「しまったな、表情に出ちゃってたか」

「ううん、全然? 見た目は変わらないけど、何か別の事を考えていたっぽかったから、鎌掛けてみただけ」

「………」

「あはは、今度は分かりやすく表情に出てるね。ごめんごめん、若い子と話すのって楽しくてさ。で、何を悩んでいたんだい?」


 久遠は人生の先輩らしく、俺の人生相談に乗ってくれるらしい。但し、対価として茶菓子のおかわりを所望されてしまう。うん、エリィ、一杯持って来てあげて。客用のやつじゃなくて、メル用のやつでお願い。


「別に悩み事って訳じゃないんだが…… この前の戦いで、あー、久遠やマリアがこの世界の来るちょっと前にさ、大事な戦友を亡くしたんだ。そいつの墓参りに、近いうちに行かないとなってさ」

「はえ~……」


 俺の言葉を聞いた直後、久遠は目をまん丸にしていた。


「なんだよ、その意外そうな顔と声は?」

「いや~…… だって私、君の事を根っからの戦闘狂気質だと思っていたからさ。ほら、この前だってマリアを相手に、色々と戦いの要求を出していたらしいじゃん? 結果的に私がそれを台無しにして、すっごい殺意を私に向けてたじゃん? どう見たって生粋のそっち系だったじゃん?」

「生粋のそっち系って…… いや、まあ言われ慣れてるから良いけどさ。けど、俺にだって人並みの感性はあるんだよ。それがたとえ戦いの中での死だったとしても、親しい奴が死んだら悲しいし、落ち込みだってする。グロスティーナとは一度手合わせをして、色々と通じ合った仲だったんだ。うん、やっぱ悲しいし、辛いよ」

「はえ~…… じゃあもう戦うの、止めちゃう?」

「は? 何でそうなる? 俺から生き甲斐を奪う気か?」


 久遠はそれはそれ、これはこれという言葉を知らないのだろうか。戦闘行為から身を離し、平和に過ごせたところで廃人なる自信があるんだぞ、俺は。


「……ぷっ! フフッ、アハハッ! うんうん、やっぱり君はどこか狂ってるね。一見まともな感性を持っているようで、面白い具合いに狂ってる」

「とんだ言われ様だな。俺からしてみれば、アンタだってただの日本人の主婦・・・・・・には見えない訳なんだが?」

「まあ、マリアとつるんでる時点でそうは見えないかもね。けど、あれれっ? 私、自分が日本人って明かしていたっけ?」

「ん? ああ、それは―――」


 名前と顔立ちに髪色から日本人と察した事、俺も元は日本からの転生者である事を説明する。久遠が相手なら、隠す必要も別にないだろう。


「おおっと、これは更に意外な展開だ。まさかケルヴィン君が元日本人だったとは」

「そう言う割には、俺の戦闘狂云々の時よりも普通な顔をしてる気がするけど…… え、何? 割とこういう事ってよくあるの?」

「さあ、頻度としては私の知るところではないかな。でも私の娘とその友達とかは、ひとクラス丸ごと別世界に飛ばされていたから…… 人数的には、思ったよりも結構あるのかもね」


 えっ、ひとクラス? その話し振りから察するに、転生じゃなくて転移って事だよな? それ、数十人規模の大事件じゃないのか? 行方不明どころの話じゃないと思うんだが…… メルさんや、貴女ちゃんと仕事してました?


『彼女の住む地球は、あなた様の知る地球とは別物です。別次元、並行世界の類とお考えください。まあ、つまるところ私の管轄するところではありませんので、悪しからず』


 ……なんか念話が飛んできた。遠くに居るのに心を読むなと。


「あ、でも安心して。半分以上は無事に帰って来たから」

「……もう半分は?」

「………」

「笑顔のまま無言になるなよ……」


 まあ、色々あったんだと察するけど。

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― 新着の感想 ―
[一言] 残りの半数の一部はちょ~とオイタが過ぎたからねw 
[一言] うん娘の師匠が四人、イキってた勇者が数人殺っちゃって後に殺られたりしたからね。
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