表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
79/1031

第77話 パワーレベリング

 ―――暗紫の森


 リオンを転生召喚した翌日、俺達はパーズ周辺で比較的高レベルモンスターが住み着くダンジョン、暗紫の森を訪れていた。目的はリオンのレベルアップ、要は俺の経験値共有化を用いたパワーレベリングだ。本来であればモンスターを倒した者が得るはずの大半の経験値を、パーティ全員に等しく配分するスキル。これを使うことで、例えレベル1の者であろうとパーティ内にいさえすれば、高レベルモンスターを倒したのと同義になるのだ。


「いかにもダンジョン、って感じだね!」

「あ、あの、ご主人様…… なぜ、私達もお供しているのです?」

「お母さん、真っ暗な森だね。昼なのに全然明るくないよ?」


 また、そのついでにエリィとリュカも連れてきている。二人は戦闘員でないにしろ、現実何が起こるか分からないのがこの世界だ。最低限の自衛はできるようにしてもらう。


 現在のステータスは以下の通り。



=====================================

エリィ 28歳 女 人間 メイド

レベル:5

称号 :なし

HP :13/13

MP :18/18

筋力 :5

耐久 :5

敏捷 :11

魔力 :4

幸運 :12

スキル:奉仕術(F級)

    調理(D級)

    清掃(E級)  

=====================================

リュカ 10歳 女 人間 見習いメイド

レベル:1

称号 :なし

HP :7/7

MP :5/5

筋力 :2

耐久 :1

敏捷 :2

魔力 :1

幸運 :2

スキル:奉仕術(F級)

    裁縫(F級)

=====================================



 屋敷にはセキュリティーとして、俺が生成したゴーレムを置き、警備にあたらせている。勇者との戦いでも使用した、あのゴーレムだ。刹那に斬られはしたが、あれは例外。本来はA級モンスターと同等の力を擁する。その改良型・試作型を正門に2体、庭園に4体、屋敷内に6体配置させている。生成さえしてしまえば、後は定期的なメンテナンス(と言う名の改造)と、魔力の補充だけで済むのだ。何ともお手軽である。最近、このゴーレム作りが俺の趣味の一部となってきたのは内緒の話だ。


 しかし、そのゴーレムによる警護があると言えど、このステータスではもしもが起こった時に心配なのだ。


「二人もある程度レベルを上げてもらう」

「でも、ご主人様。私、モンスターと戦ったことなんてないよ?」

「私も幼少の頃に狩りの手伝いをしたくらいです」

「まあ、安心しろって。今日はここで座ってるだけだよ。まずは基礎となるステータスとスキルポイントから固める」


 当たり前だが、こんなところでリオン達を戦わせる気は全くない。ジェラール、セラ、クロトがダンジョンに潜り、リオン達は入り口で待機しながら経験値だけ得てもらう。B級ダンジョンである暗紫の森であれば、パーズの他の冒険者もおらず、他のパーティの邪魔になることもないだろう。俺とエフィル、メルフィーナは3人の護衛に徹する。


「ケルにい、僕も待機?」

「悪いが、今日は待機してもらう」

「そっかー…… まあ、焦っても仕方ないからね。その代わり、ケルにいには色々と話をしてもらうからね!」

「リュカも聞くー!」

「元からそのつもりだよ」


 ただ待っているのも時間の浪費だからな。その間に知識を教え込む算段だ。


「では、ちょいと行ってくる」

「ふふん。ジェラール、1時間の間に何体狩れるか勝負よ!」

「ほほう、面白い。昨日の雪辱戦という訳か」

「なら決まりね。はい、スタート!」

「ちょ! 行き成りは狡っ辛いぞい!」

「負けた方は帰りの荷物持ちねー!」


 セラが飛びながらそう言い去っていった。ジェラールも遅れながら追いかける。


 セラの奴、機動性に長けた方が有利な勝負を仕掛けたな。しかし、クロトのことを忘れてないか? B級程度のモンスターなら、力を割いた分身体でも倒せるんだぞ。詰まる所、クロトだけチームで挑んでいるようなものだ。


 コアを持つ本体、エフィルの肩に乗ったクロトはのほほんとしているが、複数の分身体は既に森へと入り、狩りを始めている。はてさて、荷物持ちは誰になるのやら。


「よし、俺達も始めようか」


 教本となる小冊子を取り出すと、リュカがちょっと嫌そうな顔をした。ふふ、誰が世間話と行ったかな? 話と言っても勉強の話なのだよ。



~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~



 セラ達が出発して30分が過ぎようとしていた。エフィルは森の木に登り周囲の警戒。メルフィーナはシートに座りながらニコニコと俺の話を聞いている。


「魔法を扱うスキルには5つの種類がある。炎雷を操り、最も攻撃的で破壊力のある赤魔法。水と氷で補助に長け、敵には阻害を与える青魔法。風や土で状況の変化に対応しやすく、バランスの良い緑魔法。そしてアンデッドに滅法強く、回復を得意とする白魔法。最後に死体を操るなどトリッキーな魔法の多い黒魔法だ。もちろん、白魔法にだって攻撃魔法はあるし、赤魔法にだって補助魔法はある。大体のイメージとして捉えた方がいいかもしれないな」

「ケルにい、さっきからファンファーレの音がうるさくて集中できないんだけど……」

「順調にレベルアップしているってことだ。ステータスを見てみろ」

「えっと…… わっ! もうこんなにレベルが上がってる!」

「す、凄いですね……」

「私もだ! ご主人様、見て見て!」


 先ほどまで慣れない勉強をした為か、白い煙を出していたリュカだったが、嬉しそうにステータス画面を見せてくる。うんうん、セラ達も順調のようだ。リュカの頭を撫でようとしたちょうどその時、エフィルからの念話が入る。


『ご主人様、森の奥からモンスターが一匹、こちらに向かってきます。種族は影の狼シャドーウルフ。はぐれたのか、群れではありません』

『うん? はぐれモンスターか……』


 ちょうど良いな。これは召喚術を見せる良い機会かもしれない。屋敷の番犬も欲しかったし。


『狙撃せず、そのまま通せ』


 パタン、と教本を閉じる。


「ケルにい?」

「森からモンスターが一匹向かって来ているようだ。リオン、犬は好きか?」

「え? うん、まあ好きかな。直接触れる機会は生前なかったけど……」

「なら、ちょっと待っててくれ」

「「「―――?」」」


 暫くすると、森から影の狼シャドーウルフがこちらに向かってくるのが見えた。日本で見られる狼よりも一回り大きな黒い毛並みの体を持ち、眼が紅いのが特徴的だ。懐かしいな、エフィルを仲間にした頃によく相手をしたものだ。


「ご、ご主人様! 危険です!」


 エリィが堪え切れずに叫ぶ。B級モンスターを初めて目にしたのだ。俺の実力を知っているとは言え、心配してくれているのだろう。


「問題ない。メル、一応皆の前に控えてて」

「心得ました」


 影の狼シャドーウルフの目が俺を捉える。このまま真っ直ぐ俺に向かって来てくれれば楽なんだけどな。まあ、どっちに行こうが結果は同じなんだが。


「ワォーン!」


 鳴き声を漏らしながら俺に飛び掛る影の狼シャドーウルフ


重風圧エアプレッシャー


 拘束に便利ないつもの重風圧エアプレッシャーを発動。残りHPを鑑定眼で確認しながら、重圧の微調整を行っていく。HPが半分になったところで重風圧エアプレッシャーを解除。そして契約を発動だ。俺のMPの半分が消費され、ちょっとだるい感じに。


「光りだしたな。契約成立だ」

「ケルにい、これは?」

「召喚術の契約だよ。これでさっきの狼が俺の配下になったんだ」

「こ、これが召喚術ですか…… 初めて見ました」

「ご主人様、つよーい!」


 む、そういえばこいつは名前なしだったな。屋敷に戻ったらリオンに名付けてもらうか。そんなことを考えていると、再びエフィルからの念話が届けられた。


『ご主人様、後方から冒険者のパーティがやってきます』

『今度は冒険者か? 今日は珍しく大盛況だな、この森』


 俺ら以外の冒険者が暗紫の森ここに出入りするところなんて、これまで見たことないんだけどな。


『あれは――― ウルドさんのパーティです』

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ