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黒の召喚士 ~戦闘狂の成り上がり~  作者: 迷井豆腐
アフターストーリー2 白翼の地編
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第180話 新たなる神の誕生

「うわ、何なんですか、この面子……」

「へぇ、なかなか愉快な事になっているじゃない!」

「わあ、フーちゃんも居る!」

「やっほー、リオン。今日も可愛いね~。私とお茶しない?」


 セルジュの盗み食い騒動から数時間ほどが経過し、聖杭ステークにセラとリオン、それにドロシーがやって来た。ドロシーは制服姿に杖を持っただけと、着の身着のままで連れて来られた感じだ。一方でセラは鎖でグルグル巻きにされた女性を抱えており、そこで攫って来ましたと言われても納得してしまいそうな格好となっている。


「やはり敗北していたか、グロリア」

「ちゃんと生きているから安心なさい! 私、見ての通り器用だからね!」

「う、うむ……?」


 ケルヴィムの言葉で女性が何者なのかが確定。まあ、そうだろうな。気絶しているのか今は返事がないが、彼女がルミエストを襲撃しようとした十権能であるらしい。セラの話によれば、距離を操るという面白い能力を持っているとか何とか。いやあ、次々に強い奴が出て来てくれるから、俺も対戦相手を厳選するのが大変だよ。これが嬉しい悲鳴ってやつだろうか?


「あれ、そう言えばベルは? 一緒に来るって聞いていたけど、ルミエストに残ったのか?」

「ううん、一度グレルバレルカ帝国に戻って、お父さんと話をするって言ってたよ。ほら、ベルちゃんのお父さん、十権能に狙われるかもしれないって、そんな情報がケルにいから来たからさ」

「ああ、なるほどな」


 ケルヴィムから聞き出した情報は、その都度配下ネットワークを通じて仲間達とも共有している。セラが捕らえた十権能に『血染』を使っての、情報の照らし合わせも完了済みだ。結果として、ケルヴィムが打ち明けた話に嘘はなかった。そこの女性、ええと、グロリアと言ったか? 血染状態でセラに操られた彼女も、全く同じ事を言っていたのだ。


 で、それらの話は分身体クロトを持っていたベルにも届いていた。それから急遽予定を変更して、故郷に警告しに戻ったんだろう。全く、何だかんだ言って家族思いの奴である。


「ねぇねぇ、そこの栗毛な可愛子ちゃんが、神柱のドロシアラちゃんなんだよね? ンン~~……」

「あ、あの、何ですか……?」


 ドロシーの周りを衛星の如くグルグルと回りながら、ジロジロと彼女を舐め回すように見るセルジュ。性別が違っていれば一発アウトな危険な行為であるが、セルジュの表情は真面目そのものだ。


「……ブリリアント! なるほど、こいつぁダイヤの原石ってやつだよ! 磨き甲斐がある!」

「は、はぁ、どうも……?」

「セルジュ、一旦ドロシーから離れてやれ。お前、行動が完全に不審者のそれだから。ドロシーが困惑してるから」

「なっ、こんな美少女に向かって失礼な!」

「美少女でも守らなければならない倫理観ってのはあるんだよ。ほら、散った散った」

「ちぇ~」


 セルジュは渋々といった感じで引き、聖杭ステーク内にある機材の上に腰掛ける。強いのは良いが、少しは常識を身に着けてほしいものだ。


「コホン! ……神人ドロシアラ、ようこそいらっしゃいました。約束通り、貴女には他の神柱とひとつになって頂きます」

「……? 一体何の話だ?」

「ああ、それは追々説明するから、今は黙っとけって」

「むう……」


 次にケルヴィムを下がらせる俺。気のせいなのかもしれないが、何だか忙しいぞ。


「現在この聖杭ステークには、私が捕らえた神鳥ワイルドグロウ、そこのセルジュが捕らえた神霊デァトート、神鯨ゼヴァルが居ます」

「私が捕らえました~。あ、もちろん生きたままだから、安心してね~」

「……私を含め、残りが4柱のみとなった神柱をこうも簡単に生け捕るとは、そこの勇者も貴女も、随分とおかしな強さをしているようですね?」

「お褒めに預かり光栄です。が、今は先を急ぐとしましょう。貴女の心の準備さえ終わっていれば、直ぐにでも『神威しんい』の儀式を始められますよ。如何されますか?」

「……少しだけで良いので、他の神柱達と話をさせてほしいです」

「話を? 貴女とは違い、他の神柱達は暴走状態にあります。そのような事ができるとは思えませんが?」

「でしょうね。けど、たとえ話ができなくても…… 通じ合う事はできると思うので、だから……!」


 ドロシーにとって、神柱は仲間であり家族でもあるんだろう。その必死さから、どうしても会いたいという気持ちが伝わって来る。


「ルキル、ドロシーがああ言っているのです。暴走状態にあるとはいえ、他の神柱達は拘束されているのです。問題はないのでは?」


 分身体クロトの『保管』経由で運ばれて来たニシンパイを頬張りながら、メルが女神らしい台詞を言い放つ。


「……まあ、メルフィーナ様がそう仰るのであれば」


 かくして、ドロシーは神柱達と対面する事となった。



~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~



「お待たせしました。もう儀式を始めてしまっても大丈夫です」


 数十分して、ドロシーと彼女に同行していたリオンが戻って来た。何となくではあるが、つきものが落ちたような、そんな雰囲気だ。


「では、早速始めるとしましょう。ここでは少し手狭なので、儀式は外で行います」

「了解。それじゃ、外に出るとしますかね」

「ああ、移動する必要はありませんよ。この部屋自体を移動させますので」


 そう言って、何やら操作盤をいじり始めるルキル。何だ何だとその様子を観察していると、突如としてガコン! という大きな音が辺りに鳴り響いた。


「おいおい、部屋自体が動いているのか、これ?」

「わあ、おっきなエレベーターみたい!」


 リオンの言う通り、部屋はエレベーターの如く上へ上へと進んでいる。エレベーター自体はシン総長の趣味でギルド本部にもあったが、これはまた規模が違うな。


「みたい、ではなく実際そうなのです。このまま聖杭ステークの最上部に――― ああ、もう到着しましたね」


 一瞬にして辺りが青で染まる。上は青空、下は大海と、視界にどこまでも広がる青い屋外空間に辿り着いたのだ。杭の形をしている聖杭ステークの、ちょうど天辺に当たる場所なんだろう。三体の神柱達も一緒に移動していたのか、いつの間にやらここへと運ばれていた。捕獲されてからはずっと暴れていた筈だが、今は不思議と大人しくしているようだ。


「神人ドロシアラ、そこにいる神柱達の中心に立ってください。そして、できるだけ心を無に。神へと生まれ変わる神聖なる儀式です。余計な事に思考を割かないように」

「分かっています。 ……リオンさん、そんなに心配そうな顔をしないでください。神柱として一つになったとしても、私は私ですから」

「う、うん…… シーちゃん、ガンバだよ!」


 リオンの声を背に、ドロシーが神柱達の中心へと歩みを進める。そして、いよいよ神柱合体の儀式が始まった。全く知らない言語で儀式の詠唱を行うルキル、目を瞑りながらジッとその場に立つドロシー達。太陽に雲が被さり、辺りが段々と暗くなっていく。どこからやって来たのか、雷雲まで集まって来て――― さっきまで広がっていた筈の快晴はすっかりと消え去り、今は嵐の前兆らしき要素がてんこ盛り状態だ。


「……こいつは想像以上かもしれないな」

「奇遇だね、ケルヴィン。私も全く同じ感想だよ」

「へぇ、儀式ひとつでこんなにも変わるものなのね」


 俺達の眼前で起こっているのは、正しく新しき神を誕生させる儀式。頭上にて雷鳴が鳴り響いた丁度その時、黒女神時代のクロメルと対峙した時と似た、非常に興味をそそる圧迫感が俺に纏わりついた。

新作『黒鵜姉妹の異世界キャンプ飯』を投稿しました。

バトル&グルメ系のファンタジー作品になります。

こちらもよろしくお願い致します……!

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