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黒の召喚士 ~戦闘狂の成り上がり~  作者: 迷井豆腐
アフターストーリー2 白翼の地編
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第153話 交渉成立?

「―――という事で、ルキルと一時的な同盟を組む事になったんだ」

「うん、お兄ちゃん、ちょっと待って。大分説明を省いた気がするのだけれど?」


 デラミスから帰還した俺達は、迷宮国パブの宿へと戻り仲間達と合流した。そして、あちらでの出来事を説明し終えたところだったのだが、なぜか幼シュトラから待ったをかけられてしまう。一体どうしたのだろうか?


「………」

「わ、分かってるって、ほんの冗談だ。だから、そんなに睨むなって」


 シュトラからジロリと睨まれてしまう俺。だがまあ、睨まれてもまるで怖くなく、可愛らしいだけなのだが。さっきからジェラールの羨望の眼差しの圧が凄い。


「俺はルキル案に賛同的だったんだが、その後にもドロシーから怒涛の反論をされたよ。合体した後に分離できないのであれば、それは他の神柱を殺しているのと同じではないか! 合体したとしても、自分がルキルに従うと思っているのか! もしくは自分達についての秘密をまだ隠していて、それは自分達の意思を奪う類のものではないのか!? ―――って風にな」

「ふぅむ、まあ妥当な反論じゃないかの? ドロシーからすれば、簡単に頷けるような事柄ではないんじゃろうて。王が賛同したところで、ドロシーの心の内が変わるとは思えんしのう」

「おいおい、俺だって色々と熟考した上での判断だったんだぞ?」

「ケルヴィンについてはさて置きましょうよ。そこを深掘りしても、予想通りの回答しか返って来そうにないもの」


 セラもジェラールも、俺に対する扱いが酷くない?


「そのドロシーについてだが、まあ最終的には渋々納得した感じだったよ」

「えっ、納得したんだ?」

「ああ、まあルキルが退路を断たせた感もあったけどな」


 ドロシーが反論を口にする度に、ルキルもそれに反論し返したんだ。ドロシーをメインの素体に置けば、暴走状態、つまりは自我を失った状態にある神柱の魂が、人間的な理性を持つドロシーの下に沈静化される。それはつまり、不自由を課された神柱達を解き放つ事に繋がるのだと。また、ルキルにドロシーを操るような術がない事も、ここで併せて明言。洞察力に優れたアンジェ、セラと同等の勘の良さを持つベルによれば、ルキルが嘘を言っている様子はなかったという。では、なぜ自らの力になる訳でもないのに、ルキルはドロシーを強化しようとしているのだろうか?


『十権能には『支配』の権能を持つ者がいます。暴走状態にある神柱など、自我が曖昧な者ほど彼女の能力対象になりやすい。最悪の場合、神柱及びこのシステムを、逆に利用されてしまう可能性があるのです。流石の私も完全なる神化を終えた神柱が、十権能と共に敵になっては勝機がありませんからね。ですから、現段階で唯一自我を残す神人ドロシアラに、残る神柱全ての力を集結させたいのです。そうすれば、少なくとも十権能あちら側にドロシアラが立つ事はないでしょうから』


 十権能側でさえなければ、この際ドロシーがどこの陣営に立っても構わないという、ルキルはそんな口振りであった。『支配』という卑劣な方法で十権能の仲間にされるよりも、真っ当に利用した方がお得でしょう? と、本人の目の前でそこまで言っていやがった。神柱の中で唯一人間性に富んだドロシーは、同志や大切な友人が見殺しにされるのを絶対に黙っていられない。必ずこの方法を選択し力を得て、大切なものの為に参戦するだろうと、そう踏んでいるようだった。そして、恐らくこれは的を射ている。


 その上で合体をしなかったところで、十権能は神柱を脅威の対象として見ているのは確実。今は地上の実力者達の排除を最優先に動いているが、いずれは神柱の破壊、或いは支配にも着手し始めるだろう。現にレイガンドへ共に向かったリドワンには俺やメルの抹殺の他に、神柱の破壊が目的の一つとなっていたと、ここぞとばかりにルキルは裏事情をばらしにばらす。こうしてドロシーはルキルに敵意を抱きながらも、神柱の合体を承諾したという訳なのだ。


「うわぁ、あくどいやり口ねー。そんなの、ドロシーに選択肢がないじゃないの」

「退路を断たせるような、って言っただろ? まあ、そんな口調だからドロシーからめっちゃ敵視されて、十権能の次はお前だ! みたいな空気になっていたんだけどな」

「ん? それって巡り巡ってルキルの損にならない? 結局ドロシーと敵対してるじゃないの?」

「もしくは私達と完全体ドロシー様が協力して、漸く十権能勢力と渡り合えると、そう考えているのかもしれませんね。どちらにせよ、侮れません」


 エフィルが顎に手を当てながらそう言い、もう片方の手で子を授かったお腹をさする。うん、どちらにせよ、エフィルは戦闘に出ちゃ駄目だからね?


「ドロシーにはリオン達と一緒に学園で待機してもらってる。何だかんだでルミエストには戦力が集中しているし、十権能もドロシーには迂闊に手を出せないだろう」

「じゃが、あまりゆっくりしている暇もなかろうて。王よ、他にルキルがもたらした情報は何かないのかの?」

「ああ、同盟を組むからにはって事で、色々と教えてもらったよ。まず一つ、残る十権能が持つ能力について」

「あー、さっきの『支配』が何たらの、更に詳細?」

「そうだ。とは言っても、ほんの一部だけだけどな。これに関しては配下ネットワークを介して貼っておくよ」


―――――――――――――――――――――――――――――――――――――


 レム・ティアゲート


 神の中でも限りなく上位の地位に属していた支配神。幼い容姿、臆病な性格をしているが、邪神がまだ存在していた時代には、その腹心とまで称されていた。


権能『支配』

 自我の薄い、或いは無の器を操り、意のままに操る事ができる力。その対象は野生のモンスターから意識を失った人間、果ては武具やヌイグルミにまで及び、効力範囲であれば殆ど相手を選ばない。操作する数の限度、力の射程範囲は不明であり、天使達にのみ伝わる神話大戦の伝承では、幾千幾万の支配対象を率いて前線に赴いていたとされている。義体での顕現をしている今現在では、全盛期ほどの大それた力の使用はできないと思われるが、あくまでも希望的観測に過ぎない。



 ハオ・マー


 十権能の中では比較的若手に属するが、戦神・闘神の地位を思うがままにし、近接戦での戦闘力は恐らく最強。但し強敵にしか関心がなく、自らの意思でしか動こうとしない。


権能『魁偉かいい

 自身の筋肉を自在にコントロールする事ができる力。元々が屈強な肉体をしている為、使用時の変化が分かり難く、そこまで見た目も変化する事がない。


―――――――――――――――――――――――――――――――――――――


「……えっ、これだけ!?」


 配下ネットワークの情報を一通り確認したであろうセラが、気持ち良いくらいの大声を上げてくれた。まあ、尤もなツッコミである。


「十権能って、そのまんま十人いるんでしょ!? なのに、二人だけ!? それにこの『支配』を使う堕天使はなるほどな情報量だけど、『魁偉かいい』についてはビックリするほど情報がないわよ!? 筋肉をコントロールするって、どんな風にコントロールするのよ!?」

「相手もルキルをそこまで信用していなかったのか、手の内を明かさなかったんだろうな。名前と外見的な特徴は別途まとめてあるから、そっちはそっちで確認しておいてくれ。俺が新たに配下にしたハード、知らぬ間にセルジュがぶっ倒した、ええと、『鍛錬』? っていう十権能についても、そっちに載せてある」

「ハァ、要は残る六人の能力については一切不明って訳ね……」

「ああ、その辺りは後のお楽しみってな」

「楽しみなのはケルヴィン君だけだけどね~。諜報担当のアンジェお姉さんとしては、情報戦も制しておきたいところかな」


 そう言って、眩しい笑顔を向けて来るアンジェ。ええ、分かってますよ。俺の趣味趣向で不覚を取ったら笑えないよと、そう言いたい笑顔ですよね、それ? 分かったから、そろそろ止めてくだせぇ。


「シュトラ、お願いできるか?」

「うん! 私の方でかつての神々の大戦について調べてみるね。何か新たにヒントが見つかるかもしれないし!」

「助かるよ。あ、メルにも手伝わせるか? 一応先代の転生神だし、元神様としての知識が活かせるかもしれないぞ?」

「あなた様、自慢じゃありませんが、私は過去に囚われない女なのです。つまるところ…… 歴史は苦手です!」


 パクパクとおにぎりの山を頬張るメルが、戦力外通告を自ら暴露する。うん、多分本当に駄目なんだろう。悲しい事に、嘘を言っている様子はないもの。セラやアンジェに聞くまでもない。


「え、ええと、デラミスのシスター・エレンに当たってみるね? 先々代の転生神様だし、きっと力になってくれると思うから」

「言い出しっぺのアンジェお姉さんも手伝うよ。シュトラちゃんには負けていられないもんね~」


 そんなメルの力を借りずとも、シュトラとアンジェは滅茶苦茶しっかりしているのであった。

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