表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
黒の召喚士 ~戦闘狂の成り上がり~  作者: 迷井豆腐
アフターストーリー2 白翼の地編
736/1031

第127話 レイガンド第一王子

「……で、お前らこんなところで何してんだよ?」

「兄上こそ、このような場所で一体何を? 冒険者として自由に世界を巡っていたのでは?」


 それから暫くして、平常心を取り戻したペロナ以外の三人。顔を合わせたからには無視する訳にもいかず、エドガーは会話に応じる事にしたようだ。


「馬鹿が。お前らが学園から行方不明になったから、その冒険者ギルドに捜索の依頼が来てんだよ。もちろん国の沽券にかかわる事だから、秘密裏にではあるがな。今頃ルミエストじゃあ、外出扱いにでもなってんじゃねぇか?」

「なるほど、そのような扱いに……」

「一人で納得してんじゃねぇよ。で、結局お前らは何してんだ? アクス、ペロナ、てめぇらはエドガーのお守の筈だろうが?」

「そ、それはですね、ええと……」

「アクス、よい。余が話す」


 アクスを制したエドガーはその場から一歩前に出て、パウルと視線を合わせた。


「兄上、余は知ってしまったのだ」

「知ったって、何をだよ? つか、その偉そうな喋り方、なんとかならねぇのか? 面子の為でもあるんだろうがよ、一々吹き出しそうになるんだよ。兄上に余って、聞いてるだけで痒くなるわ」

「パ、パウル様、流石にそれは言い過ぎで―――」

「―――いや、いいよ。兄ちゃん、何年も会ってなかったけど、兄ちゃんはいつまでも兄ちゃんのままなんだね。ちょっと安心しちゃったよ」


 それまで王族然としていたエドガーの態度、口調、そして表情までもが一変。そこには別人としか思えない、人懐っこい笑みを浮かべたエドガーの姿があった。


「おう、やっと俺の知るエドガーになったか。お前、俺が国を出て行ってから、変な噂ばっか聞いていたぞ? ナンパやら求婚をしまくってるやらで、全然エドガーらしくねぇ悪い噂をな」

「兄ちゃん、それは言いっこなしだよ。第一王子の兄ちゃんが家出みたいなノリで国を出て行って、それから僕に次期国王の期待が寄せられちゃったんだもん。人見知りを克服する為に始めた事だったんだけど、噂が噂を呼んで、気が付いたらキャラが後戻りできないところにまで来ちゃっててさ。今更修正なんかできないから、学園でも同じキャラで通していたっていうか……」

「はぁ~、やっぱりそんな理由かよ…… 確かにお前、元々の内向的な性格が、噂と逆転していたもんな…… あのクソ親父、息子が無理してる事くらい察して、指摘してやれや!」

「それがッスね~、レイガンド王は逆に喜んでいたんスよ~。エドガー様が王族としての自覚が芽生えた、男らしくなったとかって、諸手を挙げてたッス」

「あ・の・クソ親父~~~ッ!」


 地面を蹴り、怒りをあらわにするパウル。


「まあ、それもこれもパウル様が国王との喧嘩の果てに勘当された、そのしわ寄せによるものかと」

「お、おう、まあ、それはそうなんだけどよ……」

「アクス、そんなにキッパリ言うなんて、らしくないッスね? いつもの不敬とかに当たるんじゃないッスか?」

「自分はあくまでもエドガー様の護衛だからな。それに、パウル様はもう王族ではない。よって、これは不敬でも何でもない。ただ真っ当に意見を言ってやっただけだ」

「うわ、アクスって意外とドライッスね~。ドライアクス!」


 アクスの言葉に少し居心地が悪くなったパウルであるが、この間も三人の観察を怠っていた訳ではなかった。厚手のコートを羽織ってはいるが、エドガー達は揃いも揃ってその下にルミエストの制服を纏っていた。ここまで徒歩で移動して来た割には、そこまで疲労している様子も、衣服や靴が汚れているようでもない。


「お前ら、ここまでどうやって来た? 根性で歩いて来たって訳ではないよな?」

「……そうだね、そろそろ話を戻そう。実のところ、何でこんなところにいるのか、僕達も分かっていないんだ。気が付いたら、雪山の麓にある洞窟の中にいた」

「ああん? どういう事だ?」

「どこから話せば良いかな…… 兄ちゃん、僕の固有スキル『看破かんぱ』の事は知ってるよね?」

「おう、知ってるぜ。エドガーに対して悪意を持つ奴が近くにいたら、そいつが隠している秘密を断片的に知る事ができるって能力だろ? まあ、そいつを知ってるのは兄の俺と、昔馴染みのアクス達くらいなものだった筈だがよ」

「うん、その認識で合ってるよ。父ちゃんにも教えていない、僕達だけの秘密の能力さ。もちろん、最高クラスの『隠蔽』も使ってるから、学園内でも知ってる人はいない。で、この力は僕の意思とは関係なく、常時発動している訳だけど…… 学園生活を送る中でも、色々と見ちゃうんだよね。陰謀めいた情報とかもさ」


 非常に疲れた様子で溜息を吐きながら、エドガーが近くに生えていた木の根元に腰を下ろす。


「そりゃあ、学園に通う生徒は身分のたけぇ奴も多いだろうし、それは仕方ねぇ――― って、お前、ひょっとして堕天使関係の話も、前々から知っていたのか!?」

「うん、結構前からね。学園内では軟派な感じで通っていたから、敵意を持たれる事が多くって、意図せず知っちゃった感じだよ」

「ッチ、だから危ねぇって言ってんだよ」

「パウル様、そうエドガー様を責めないで頂きたい。エドガー様があのように振舞うのも、この世界で生き延びる為の手段の一つなのです。敵意を持たれるとはつまり、隠れた敵を知る事に繋がりますから」

「けどよ…… いや、今更そこをどうこう言っても仕方ねぇな。で、それから?」

「最初に堕天使の事を知ったのは、学園に勤めるホラス教官からだった。『演技』と『話術』のスキルを持っていたから、その時に態度に出すような事はなかったけど、内心では凄く驚いたものだったよ。何せ僕からしたら、古の邪神の復活を企むカルト宗教の信者みたいなものだったからね。しかもそんな人達が、学園内で身分を隠してそれなりに紛れていたんだ。ハァ、生きた心地がしなかったよ……」

「あー、そいつは大変だったな」

「うん、大変だった。怖かった。けど、知ったからには何もしない訳にはいかなくってさ。求婚をするって名目で、学園内の色々な人に会いに行ったんだ。誰が敵で、誰が味方なのかを確認する為にもね。学園内の有力者が集まる、対抗戦の選考会にも参加したりしたっけな」

「かなり無理のある求婚も、何度かする事になったんスよね~。同級生のベルに求婚した時なんか、正直エドガー様が死んだと思ったッスよ?」

「ハハハ、確かにね…… 尤も、彼女の敵意は悪意によるものではなかった。僕達が思う敵ではないと確認できた事だし、それはそれで良かったじゃないか。むしろ全くの無害だと思っていたドロシーさんが、僕を洗脳しようとして来た時の方がやばかったかな。洗脳された振りをして、何とかその場は切り抜けられた訳だけど……」

「私の耐性魔法が運良く効いたんスよね。私、有能!」


 自慢気なペロナが、これ見よがしに白魔法を披露する。どうやら彼女は、エドガーに様々な状態異常の耐性を付与していたようだ。


「こんな言動をしていますが、これでもレイガンド屈指の僧侶ですからね、ペロナは」

「フフッ、僕にはもったいないくらい、本当に大切な友人だよ。それで、話の続きだけど…… 対抗戦が終わった辺りで、集めた情報を信頼できる人に伝えようと考えていたんだ。敵味方をハッキリさせた上で、ね。それまではいつも通りに演技して、情報のやり取りは筆談で最低限に済ませていた。もちろん、アクスやペロナにも徹底してもらってさ」

「だが、その前にお前らは行方不明になった…… つまりよ、敵に拉致られたって事だろ?」

「多分、そうなんだろうね。どこかの段階から、堕天使達に僕らの行動を察知されたんだと思う。ただ、僕達が殺されていないのが不思議で―――」

「―――不思議も何も、撒き餌の為に生かしたに決まっているじゃないですか」


 四人のものとは異なる声が、いつの間にか会話に混ざっていた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[一言] 壁登り修行の成果が出るか!?
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ