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黒の召喚士 ~戦闘狂の成り上がり~  作者: 迷井豆腐
アフターストーリー1 学園都市編
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第24話 四つの寮

 リオンとクロメルがケルヴィンの私室に突入し、ルミエストの入学試験に合格したという報告をしたのは、ほんの少し前の事だ。通知を両手で前面に押し出し、溢れんばかりの笑顔を向けた二人は、なぜかこの部屋に集合していた家族らに一斉に、祝福されたのであった。


「やったね、クロメル!」

「はい、とっても嬉しいです!」


 ご機嫌なリオン達。先ほどまでの心配顔が嘘みたいに、今は笑顔の花を咲かせっ放しである。


「うおおーん! ようやった、本当にようやったのう! 王よ、今夜は祝杯じゃ!」

「まあ待て、ジェラール。こんなめでたい日は次にいつ来るか分からん。ここは街を挙げて、盛大に二人を祝福するべきじゃないだろうか?」

「分かった! それじゃアンジェさん、これまで積み上げて来た人脈をフル活用しちゃうよ~。手始めにギルドに行って、祭りを開かないかってミストギルド長と交渉してみる!」

「私は一度グレルバレルカに行って来るわ。ここに通知が来たって事は、ベルのところにも合格の知らせが届いているでしょうし。それでね、父上に合同でお祝いしないかってお願いしてみる! きっと了承してくれる筈よ!」

「パーズとグレルバレルカの合同祭、という事ですね!? いけません、それはいけません。流石の私も、二国が持ち寄った屋台料理全ての制覇は難しいです。3巡ほどしたところで、お小遣いが怪しくなってしまいます!」


 だがしかし、その兄や爺といった仲間達は、なぜかリオン達以上に盛り上がっていた。二人が報告に来るよりも前からテンション高めだった事に加え、愛すべき者達が受験に受かったという事実が、喜びに拍車をかけたのだろう。


「あ、あのですね、まだ報告したい事が、えと……」

「皆さん一度落ち着きませんか? 深呼吸をしましょう、深呼吸」

「「「「「すぅ、はぁ~~~」」」」」


 最後の砦でであるエフィルは、これから母となる身として、一歩引いた位置からの判断ができたようだ。冷静に深呼吸を促し事態は収拾、漸く本日の主役であるクロメル達が話せる状態になるのであった。


「合格の通知と一緒に、私達が住む事になる寮の案内も来ていたんです。ちなみに、私は『セルバ』でした」

「僕は『ボルカーン』だったよ。アレックスと一緒に入れるのは、クロメルのセルバとここだけだったから、一先ずは一安心って感じかな?」

「ん、んん? ちょっと待ってくれ。寮って何種類もあるのか? もしかして二人やベルは、同じ寮に入る訳じゃない、とか……?」

「あれ? ケルにい、寮の概要欄読んでなかったの? ルミエストには寮が四つあるんだよ」

「「ッ!?」」


 リオンにルミエストの寮制について説明されるケルヴィン&一同。あまりの衝撃にケルヴィンは顎が外れ、ジェラールは兜が潰れそうになっていた。


「―――つ、詰まり、ルミエストは全寮制だけど、同じ寮に配属されるとは限らない、のか……!?」

「うん。限らないというか、僕とクロメルはもう別々の寮になるのが決まっちゃったけどね。ルミエストは自分で受ける授業を決める単位制なんだけど、それだけじゃ社会に出る為の協調性は養えないって事で、学園に通っている間は他の生徒達との共同生活をする事になるんだ。普通の学校でいうところのクラスみたいに、学内でお祭りや対抗戦をしたりする時、この四つの寮毎にチームを組んだりもするんだって」

「チチチ、チーム!? 誰とも知らぬ男とキャンプファイアー囲って手を繋いで、フォークダンスでも踊るってのか!?」

「キャ、キャンプ、ですか? えと、それがどういったものなのか、ちょっと分からないのですが…… パパ、安心してください。寮は生徒の性格や適性などを、先生達が頑張って考えて考えて、そうして漸く選ばれるんです。明らかにこの子とあの子は相性が悪いだろうな、という組み合わせにはなりませんから」


 ケルヴィンを安心させようと、クロメルが更にルミエスト寮の詳細について話してくれた。


 リオンが所属する事となる『ボルカーン寮』は、他の寮と比べ所属する生徒の種族が豊かであり、考える頭よりも体が先に動く! という、運動神経の良い肉体派な生徒の多いグループとなっている。寮章が炎をモチーフにしている通り、寮内の雰囲気は大変明るく協調性は群を抜いて高い。ペットを同伴させる事もできるのも特徴の一つだ。その性質から亜人であったり、社会的に身分の低い者にとって人気の高い寮とも言える。一方で勉学が苦手な傾向にあるのは、寮長であるアーチェ・デザイアの影響だろうか。過去には火の国ファーニスのレンやランなどが所属していた。


 そして、そんなボルカーン寮と真逆を行くのが、水の寮章を掲げる『マール寮』だ。ホラス・アスケイドが寮長を務めるこの寮は、端から端まで生真面目、冷静、規則が最優先という頭脳派な生徒が集まっている。机上での試験を行えば、最も優秀だとして真っ先に名が上がるほどだ。マール寮に所属する者がテストの上位を独占するなんて事がざらで、卒業後の進路も学者や政治家になる者が多いという。過去にはリフリル孤児院のエドワードなどが所属していた。


 続いてはクロメルが所属する事となる『セルバ寮』。樹の寮章を持つセルバ寮は兎にも角にもバランス型で、勉学だろうと運動だろうと、趣味芸術特殊技能エトセトラに関心を持つタイプといえるだろう。何をするにしても興味津々、新たな技術があれば真っ先に確かめたいという、そんな研究者志望が多ければ、身分を捨てて卒業後に冒険者になってしまうような、破天荒な選択をしてしまう卒業生もいたりする。何にせよ、ミルキー・クレスペッラが寮長なだけあって、最も掴みどころのない寮である事は確かだ。ちなみに、このセルバもペット同伴可となっている。過去には神皇国デラミスのコレットなどが所属していた。


 最後の紹介となるのは、ボイル・ポトフが寮長を務める『シエロ寮』だ。大空を表す寮章を持つシエロは、生徒の中でも特に身分や位の高い者達が集まる傾向が強く、それ故に一人一人のプライドが甚だしく高い。またそれらに付随して全員我が強い為、その中で抜きん出たカリスマを持つ生徒が現れてでもしない限り、寮内でさえ険悪な雰囲気が噴出しているのが常、更には他の寮を見下している節がある火薬庫だ。宛ら貴族社会の縮図と揶揄したのは、果たして誰だったのかは定かでない。但し幼き頃より英才教育を受けたきた者達ばかりなので、その能力値は総じて高水準。過去には軍国トライセンのシュトラなどが所属していた。


「―――と、こんな感じです」

「そ、そうだったのか…… ありがとう。よく分かったよ」

「ですか♪ パパに伝わって安心さんです」

「うんうん、良かったさんだ。うん、良かった良かった……」


 ケルヴィンが頭を撫でると、クロメルは目を瞑りながら気持ち良さそうにしていた。ただ、ケルヴィンが心配していたのはそこではない。問題は可愛い可愛い妹と娘が、頼りになるボディーガードと別々の寮に住む事になり、身に迫る危険が一層高まるという事実。如何に自分達が西大陸に拠点を置く事になろうとも、直ぐ隣に狼がいては対処が遅れる可能性がある。特にシエロという寮は、他の寮に所属する事になっている二人にとって危険な存在だ。


『……ジェラール、やっぱりお前、警備の仕事に就いてみる気はないか?』

『奇遇じゃな、王よ。ワシも危険な狼共をバッサバサと斬り捨てたいと思うていたところじゃて』


 そんな念話でのやり取りをこっそり二人でしてしまうほど、ケルヴィンとジェラールは錯乱気味になっていた。

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