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第591話 ラストブレイク

 この更地と化した庭園をダハクが見たら、果たして奴はどんな反応を示すだろうか? 怒りか、それとも悲しみか。主である俺が今更こう思うのもどうかと思うけど、ちょっとこれはやり過ぎたかなと考え始めている。まさかあれから1時間も斬って蹴っての応酬になるとは、一体誰が思うだろうか? クロメルの固有スキルの効果が切れた後は、戦いが益々拮抗したもんだ。いや~、暴れに暴れた。満足だけど、後の事を思うと気が重い。今頃、道中の舗装工事をしているんだろうか? 本当にすまない、ダハク。


「ご主人様、お疲れ様でした。タオルとお飲み物をどうぞ」

「ああ、ありがとう。 ……ふあぁー、よく冷えてる~。マジで生き返る感じだ。っと、エフィルもお疲れ。良い戦い振りだったぞ。周りは灼熱地獄だったのに、ずっとヒヤヒヤもんだったよ」

「ありがとうございます。特訓した甲斐がありました」


 ま、心配ばかりしていても仕方がない。今は戦闘後の心地好さを味わうとしよう。んんー、エフィル特製ドリンクが身に染みる。タオルも一度冷やしてくれたのか、汗を拭えば爽快も爽快。一気にフレッシュな気分へと早変わり。ふふふ、もう一戦いけちゃうな、これは。


「ジェラじい、元気出してったら~。とっても良い戦いだったよ?」

「フッ、そうは言うても、ワシは駄目だったんじゃ…… リオンらの仇を討てんかった…… 愛が、情熱が、力が足りなかったんじゃ! ウオオォーーーン!」

「わっ、お爺ちゃんの兜が噴水みたい! クロト、あの水に乗ってみる? きっと気持ち良いわ!」

「シュトラちゃん、遊んでる場合じゃないよー。ジェラじいを励ますの手伝って~」

「オロロロォーーーン!」

「クゥーン……(僕の鳴き声より凄い……)」


 ジェラールとの魂の戦い、その結果は皆の会話を聞いての通り、俺がギリギリのところで勝利を収めた。蹴るか斬られるかの白熱したバトルの後、ジェラールはすっかりと燃え尽きてしまい、ああなってしまったのだが…… 仮孫でも苦戦するあの嘆きようだ。俺なんかじゃ、とてもではないが復帰させられない。ここは大人しく、リオンとシュトラに任せるとしよう。


「いやはや、見事に負けてしまったねぇ」

「あ、ケルヴィーン! その様子だと勝ったみたいね」

「おう、アンジェにセラか」


 いつの間に着替えたのか、2人は私服に着替えていた。しかし何だ、その今頃になって結果を知った風の口振りは? ……石鹸の香りがほのかにするんだけど、まさか風呂に入った後とかじゃないよね? 俺とジェラールが激闘を繰り広げている間に、お先にさっぱりとかしてないよね?


「最終チェックポイントに行く前に、ケルヴィンもひとっ風呂浴びてく? エフィルに沸かしてもらったから、今ならちょうど良かったわよ!」

「今日も良い湯だったね~。疲労と気持ち良さが相まって、思わず寝ちゃうところだったよ」

「……いや、時間もないし、もう少し頑張るよ」


 さっぱりしおったな、お前ら。


「そう? あ、ところケルヴィン! さっきの戦いね、ワクワクした? ドキドキした!?」

「きゅ、急にどうしたんだよ? まあ、ワクワクもしたしドキドキもした。控え目に言って最高だったけどさ」

「よっし! アンジェ!」

「おー! セラさん!」


 ―――パァン! と、ハイタッチで良い音を鳴らすセラとアンジェ。


「も、もう私の信仰心が限界です! 何とか発散しなくては…… エフィルさん!」

「コレット様、どうぞ」


 次いでエフィルもハイタッチ。どこからか聖女モードを終えたコレットも現れて、更にハイタッチを交わし――― 何だ、これ?


「ああ、ごめんごめん。私達、何をしたらケルヴィン君が喜んでくれるかな~って、結構長い間準備しててさ。それがやっと報われたって感じなんだよね。バトルラリーの重大な山場を任された身として、上手くやれるかもう心配で心配で」

「4大国どころかS級冒険者の皆さん、グレルバレルカ帝国のグスタフ様方までもを巻き込んだ、大掛かりな催しでしたからね。ご主人様の笑顔、そして満足されたお顔が拝見できて本当に良かったです」

「神々しい御尊顔を拝しまして、私としても真に素晴らしいひと時でした。また来年もやりましょう。と言いますか、毎年開催致しましょう。ええ、そうするべきです! ハァハァ……!」

「フフッ、そうね! でもケルヴィンったら、それはもうキレッキレな表情だったわよ? こう、口の端っこ的な意味で」

「そ、そんなにか? まあ、それだけ楽しかったって事だよな。 ……感謝してるよ、本当に」


 こんな楽しい祭りを毎年、か。すげぇ嬉しいけど、今のままじゃ体が持つか心配だな。また来年までに鍛えておかないと。


「も~、皆気が早いわよ!」

「うんうん、まだバトルラリーは終わりじゃないからね?」

「お、シュトラにリオン。ジェラールは良いのか?」

「えっと、泣き疲れて意識を失っちゃったみたいで…… それからスリーとフォーがふらっと来て、ジェラじいの部屋まで運んで行っちゃった」

「あー、酔い潰れた奴が敷地内で寝てるのを発見したら、部屋まで運ぶように命令してたもんな……」


 泥酔したセラはゴーレムには荷が重いしジェラールは酒に強いしで、まず使われない命令だと思っていたんだが、思わぬ形で作動してしまったようだ。まあ、落ち着かせるという意味でちょうど良かったかな。落ち着いて冷静になってから、また次回の王殺しに向けて励んでもらいたい。挑戦、年中無休で受け付けております。


「お兄ちゃん、次はいよいよバトルラリーのラストよ。勝っても負けても悔いが残らないように頑張って!」

「僕達が一緒に行く訳にはいかないから、ここから応援してるね。クロメルちゃんと一緒にファイトだよ!」

「おう、任せておけ!」


 ラストのチェックポイントは確かあそこだったよな? もう最後の相手が誰なのかは言わずもがな。この場所を指定したのも、まず間違いなくあいつだろう。ある意味、2人だけの思い出の地だ。


「ふふん! 最後の番人が誰なのかはまだ秘密、私達は教えてあげないからね、ケルヴィン!」

「あー、うー。そ、そうだね、セラさん。私達からは教えられないね。アンジェさんもさっぱりだよー」

「わ、私の口から知らないと言ってしまうのは、信仰心の揺らぎなのでは……!? しかし、ここで空気を読まないというのも……!」

「一体誰ガ相手ナノカナー。想像モツカナイナー」

「そうでしょうそうでしょう!」


 セラよ、何で今は勘が鈍くなってんの?


「ご主人様、こちらのお弁当を持って行って頂けないでしょうか? 先の戦いで、予定より時間を要してしまいました。それで、恐らくその…… 最後のチェックポイントを守る謎の番人さんが、お腹を空かせていると思いますので」

「お、おう、相手が誰なのか相変わらず全くの不明だが、了解したよ」


 エフィルから大きなピクニックバスケットを手渡される。皆気遣いがとっても上手で困っちゃう。


「パパー、お待たせしましたー! 日が暮れる前に出発しましょう。次のチェックポイントはパーズ近郊の森です。バトルラリーのトリを務めるのは…… ええっと、まだ内緒、ですよね?」

「ああ、お楽しみは最後まで取っておかないと。さ、行くとしようか。最後の戦いへ!」

「「「「いってらっしゃーい!」」」」


 家族から一杯の声援をもらい、俺達は最後の目的へと颯爽と向かう。が、ピクニックバスケットから漂う極上の香りに、俺とクロメルは思わず腹を鳴らしてしまった。だってほら、これだけの戦闘をこなした後だし、クロメルだって長距離の移動で体力を消費しているんだ。格好がつかないのはご愛嬌、到着したらまずは飯だよ、飯。

次回、最終話。

14日にステータス、キャラ紹介と一緒にアップしたいと思います。

手動でアップしたいので時間はちょい未定。

最終話→ステータス→キャラ紹介と順々にやりますので、読む順番にお気を付けください。

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