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第569話 真・桃女神降臨

 天使の翼と天使の輪、かつてメルが見せてくれた蒼き翼と輪とそれらは同一のものなんだろうが、纏う者が変われば受ける印象も180度変わるというもの。その姿は醜悪にして凶悪だ。そしてなぜに全身タイツなのかと、ピュアなクロメルに悪影響があったらどうするのかと説教してやりたくなる。しかしながら悪気はたぶんなく、むしろ本人的にはサービスでやっているんだと思う。だからこそ危うく、だからこそ手に負えない。


 空からやって来た恐怖の大王、もとい次期転生神のプリティアは、さも当然であるかの如くこの場所に舞い降りやがった。いや、別に深い意味はない。ただ、あまりに唐突だったもので言葉選びを間違えただけだ。畑に神気が宿ったとダハクが異常なくらいはしゃいでいるけど、俺とジェラールに対してそういうドッキリは止めてほしい。最悪、心臓が止まっちゃうから。


「や、やあプリティア。随分と刺激的な登場じゃないか。ここには子供クロメルもいるんだから、少しは自重してくれよ」

「う、うむ、そうじゃな。お主の魅力はちと危険じゃからな。徐々に目を慣らさんと、心臓に悪いわい」

「兄貴と旦那に同意ッス! プリティアちゃん、今日もやべー色気で溢れてやがる!」

「パパー、前が見えませんよー」


 ダハクの天然なフォローを隠れ蓑に、俺とジェラールの本心をそれっぽく伝える。たぶん、肯定して捉えてしまうと思うけど。


「あらぁ、それはごめんなさいねん。ケルヴィンちゃんにかわゆい子供ができたって話ぃ、すっかり頭から抜けていたわぁ。その子と御挨拶したいのだけれどぉ?」

「……そうか、そうだな。いつかは越えなければならない壁、それが今って事か」

「クロメルよ、ゆっくりと目を開けるのじゃ。決して急ぐでないぞ! 絶対じゃぞ!」

「ええっと…… よく分かりませんが、急がずゆっくりと目を開ければ良いのですね?」

「まぁ、ジェラールのおじさまったらぁ。私の美しさをそこまで評価してくれていたのねぇ。仕方ないわん。いつものプリティドレスへドレスチェンジしてぇ、溢れ出る愛も消しておきましょうかぁ」

「正しい判断だと思うッス! プリティアちゃんの美しさ、今や神の領域に突入してるッスから!」


 本当に会話が噛み合っているようで噛み合っていないが、これはお互いが不幸にならない勘違いだ。俺から訂正する必要はないだろう。ただ、露出の少ないピンクのドレスに着替えてくれた事、翼諸々の天使要素を排除してくれたのはありがたい。クロメルの目の保養要素が幾分かマシになる。


「わあ、格好良い方ですね! パパやお爺ちゃんのお友達ですか?」

「ほう、プリティアちゃんを格好良いと見るのか。なかなか渋い観察眼だぜ、クロメルのお嬢……!」

「ま! 何て愛らしい子なのかしらん! 思わず頬ずりしたくなっちゃうわん(はぁと)」

「悪いがそれは止してくれ。クロメルの柔肌には(物理的にも)刺激が強過ぎる」

「ク、クロメルにそうさせるくらいなら、ワシが身代わりに―――」

「―――あらん、良いのん!? ひょっとしてご褒美? 頑張った私へのご褒美かしらん!?」

「早まるな、ジェラール! もっと自分を労わってくれ!」

「そうだそうだ、自分だけ狡いッスよ旦那ぁ!」


 いい加減、会話と感情が錯綜して収拾がつかない段階になってきたので、俺達は一度仕切り直して屋敷へと戻る事にした。屋敷に行けばセラやエフィルといった女性陣がいるから、クロメル以外が野郎で占める今よりも状況はマシになるだろう。たぶん、うん、たぶんなる。


「ふふっ。み~んな仲良しさん、なんですね♪」



~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~



 ―――ケルヴィン邸・客間


 元々俺の帰りを待っていた事もあって、我が家の美々しき面々は既に部屋で勢揃いしていた。もちろん俺としては気が気でない雰囲気で満たされていた訳だが、プリティアという爆弾の登場がそんな空気を吹き飛ばしてくれる。俺達の時のような悪い意味ではなく、思いがけぬゲストの登場というサプライズ的な意味で。


 俺の予想通り、プリティアが女性陣と雑談を交えた事で、大分ムードも和やかなものとなった。膝の上にリオンと幼シュトラを乗せ(クロメルはメルの膝の上)、俺のメンタルもかなり復活している。結果的にプリティアの予期せぬ登場は、俺の運命を良い方向に導いてくれたと言えよう。


「ふふぅん、ケルヴィンちゃんったら本当に罪作りな男なのねぇ。私まで恋焦がれちゃいそうよぉ」


 時折、心臓が止まるやも知れぬ衝撃的な発言がぶっ飛んで来るが、まあ複数人から圧力を掛けられるよりはマシ――― あ、ちょっと待って。やっぱきついかも。


「それにしても今日はどうしたのよ? 確か天使の島に、転生神になる為の承認を貰いに行ってたのよね?」

「うふぅん、セラちゃんったら私の情報をバッチリ覚えてくれてたのねん。嬉しいわぁん。今日はね、それを含めて色々と報告をしに来たのよぉ。実はねぇ…… 本日付で私ぃ、転生神として認められる事になったのぉ!」

「えっ、もう!? 凄いじゃない!」

「おめでとうございます、ゴルディアーナ様」

「めでてー! 今日は記念すべき日になるぜぇ!」


 何となく察してはいたが、プリティアの報告とは正式に転生神になる事が決まった事だった。


「俺からもおめでとう。しっかし、やけに早いじゃないか。推薦の件があっても一カ月は掛かるって、前にメルが言ってなかったか? まだ全然だぞ?」

「ええ、長達の慎重さを考慮した上での期間だったのですが……」

「ママの予想を上回るなんて、プリティアさんは凄い方なのですね」

「クロメルちゃん、ありがとん。なーにぃ、簡単な事よん。天使の皆の心が、突如として現れた愛の化身たる私に魅了されたぁ。たーだそれだけの事なんだからん!」

「「………」」


 なるほど、天使の長達はギブアップしたんだな? うん、それなら納得だ。確かにそれは、以前のクロメルには使えなかった手だ。


「ま、まあ何をともあれ、正式に決まった事に変わりはないさ。ん? でも決まったって事は、直ぐに下界から離れちゃうのか?」

「な、何ぃ!?」


 ダハクが一々うるさい。


「最終的にはそうなるけどぉ、今からって訳でもないわん。それに向こうに行ったとしてもぉ、メルちゃんの時同様、義体を使ってちょくちょく会いに来るから安心してぇ…… ね!」

「うっ……」

「ぐはっ!」


 この時、ダハクとジェラールはちょうど隣り合わせで並んでいた。プリティアはそちらに向かってウインクした訳だが、もう大惨事である。


 あとそれ以前に、メルの時みたいにってそんな頻繁に来れるもんでもないと思うんだが。それが嫌で、リオンが神となるのを心配していたのもあるし…… いや、長達から容易く承認を得る事ができたプリティアなら、それもまた可能なのかもしれない。何というかプリティアは、問答無用で納得させてくれるものを持っているんだよなぁ。厚い信頼感というか、圧倒的な空気感というか。


「ああ、そうそう。一応今のままでも、勇者ちゃん達を元の世界へ送り届けるくらいの事はできるみたいでねぇ。刹那ちゃん達異世界の勇者4名、もう帰れるわよん」

「え?」


 それはいつかは通らねばならない、しかしあまりに急な話だった。

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