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第16話 報告

「確かに、黒霊騎士の鎧の一部を確認致しました。これで依頼完了です!」


 俺は今、ギルドで黒霊騎士討伐依頼の報告をしている。アンジェさんにジェラールの破損した鎧の欠片を見せているところだ。クロトが超魔縮光束モータリティビームを放った後、ジェラールは消滅してしまった。そう、契約は失敗してしまったのだ……


『ほう、この娘なかなかの別嬪さんじゃないか。王の側室候補かの?』


 ……ってのは嘘で、契約は無事完了した。したのはいいのだが、俺のことを王と呼び出し始めた。その呼び方は止めろと反論したのだが、意地でも止めないらしい。


『騎士が仕えると言えば、王と相場が決まっとるもんじゃ。まあ、ワシの主となったんじゃから当然じゃろ』


 この調子だ。公衆の場で呼ぶのは勘弁してもらいたい。


「ケルヴィンさん、本当に、本当によくご無事で…… カシェルと勝負になった時は、もう帰って来れないとばかり思っていました。その上、黒霊騎士まで倒すなんて、ケルヴィンさんには驚かされるばかりです」


 アンジェさんが涙ながらに喜んでくれている。かなり心配させてしまったようだな。カシェル達については新人をターゲットにし、経験値狩りをしていたことをギルドに報告している。殺してしまったことについてのお咎めはなく、逆に感謝されてしまった。どうやら犯罪者の殺害については、現代よりも随分緩いようだ。


『王も隅に置けんな。既に婚約者がいると言うのに他の娘にも手を出すとは……』

『全くです。あなた様は私の婚約者なのですから!』


 メルフィーナの婚約者でもないし、お前は俺を出汁にして仕事サボってるだけだろ…… おい、器用に脳内で口笛を吹いて誤魔化すな。


「それとですね、ケルヴィンさん。今回の依頼の報酬はギルド長から直に受け渡されます。2階の部屋へお願いします」

「ギルド長ですか? そう言えば、まだお会いしたことがありませんね。なぜ今回はそのような形になったんです?」


 パースの街に来て一週間、ギルドには毎日出入りしていたが、ギルド長らしき人はまだ見ていない。2階は関係者以外立ち入り禁止だったしな。


「今回の黒霊騎士討伐はD級の枠を大きく超えた難度でした。E級であるケルヴィンさんに対し、特例のランク昇格、そしてギルド長直々に謝礼があるそうですよ。」


 アンジェさんの言葉に周囲の冒険者は「おおっ!」と歓声をあげた。いつの間にか、酒場の冒険者達に注目されていた。


「あはは、黒霊騎士を倒した功績も凄いことですが、カシェルの悪事を暴いたことで一気に有名になってしまいましたね」


 ケルヴィンに感謝や賞賛の言葉を掛けようと、周囲に冒険者達が続々と集まってくる。


「アンタのおかげで清々したよ。カシェルの野郎には頭にきてたんだ!」

「うっ、ひくっ…… 黒霊騎士に私の仲間が一人殺されたの。敵をとってくれてありがとう……」

「たった1週間で大出世じゃねーかおい! 今度成功の秘訣を教えてくれや!」


 褒め称えてくれるのはありがたいが、その原因の1つである黒霊騎士がここにいるので何とも言えない気持ちになってしまう。


『違うんじゃ、その時はまだ自我がなかったんじゃ!』


 本当かよ…… と疑いたくもなるが、助け舟を出しておこう。ジェラールとしては、討伐にやってきた冒険者達に攻撃されれば反撃せざるを得なかったのだろう。実際、王座の部屋に入るまでジェラールは何もしてこなかったしな。


「それにしてもよ、カシェルは冒険者ランクこそD級ではあったが、実力はC級、下手したらB級並の強さだったんだぜ。どうやって倒したんだ?」


 冒険者の一人がふと疑問を口にした。カシェル達は悪人ではあったが、パーズ一の実力も伴っており、誰も手を出せずにいたらしい。


「たまたま運が良かったんですよ」


 当たり障りない言葉を残して、ケルヴィンはそそくさとギルドの2階に上がってしまう。



~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~



 ―――コンコン。


 ドアを叩くと、中から「どうぞ」と男の声が聞こえてくる。


「失礼します」


 ケルヴィンが部屋に入ると、初老の、いかにも紳士といった風体の男がデスクに座りながら出迎える。


「やあ、君が噂のケルヴィン君だね」

「ええ、初めまして」

「ああ、すまない。挨拶がまだだったね。私が冒険者ギルド・パーズ支部ギルド長のリオだ」


 リオと名乗る男は片眼鏡に手を当てながら自己紹介する。温厚な表情で話す姿は好々爺然という言葉が良く似合う。ケルヴィンも礼を尽くし対応していたが、実の所かなり焦っていた。


 あー、これバレたなー。やべー。


 といった感じで半分投げ槍である。その理由は、ケルヴィンが鑑定眼で覗いたリオのステータスに並ぶ1つのスキルが原因だった。


 ―――鑑定眼(A級)


 ケルヴィンのステータスが白日の下に晒された瞬間であった。

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