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第11話 スライム・グラトニア

 クロトが進化したのはつい先日のことだ。いつものように討伐依頼を受け、モンスターを倒してクロトに吸収させていた時にそれは起こった。


「さて、これで今日の依頼も終了…… クロト、おい、どうした?」


 クロトが急に動きを止めた。そのスライム状の体をプルプルと震わせてはいるのだが、声を掛けても微動だにしない。意思疎通を用いても何も分からないのだ。


「大丈夫か、クロト!」

『あなた様、クロトは進化しようとしているのです』

「進化って…… 前に言っていたアレか。」

『はい。何がトリガーになったかはまだ分かりませんが、様子を見守りましょう』


 メルフィーナにそう諭され、俺も見守ることにする。正直、心配で物凄くハラハラしている。


『そろそろのようです』


 メルフィーナがそう言うと、クロトの体は眩しいほど輝きだした。輝きが収まりだし、クロトの姿が現れてくる…… あれ、何か姿のサイズが……


「く、クロト、お前でかくなったな……」


 膝下ほどの大きさしかなったクロトのサイズが、俺の身長を優に超えるほどに成長していたのだ。成長期と言っても限度があると思います。


『……スライム・グラトニア』

「それがクロトの進化した種族か?」


 思い出したかのように、俺は鑑定眼でクロトのステータスを確認する。


「すげ、軒並み能力が上がってるじゃないか…… この暴食ってスキル、固有スキルって表示されてるが、普通のスキルと何か違うのか?」

『固有スキルはその種族、もしくは選ばれし個体のみが有するオリジナルスキルです。通常のスキルよりも強力な効果を発揮します。クロトが新たに習得した暴食は、食べた対象のステータスの一部を自らのステータスに取り込むスキルのようです』


 それって食べた分だけ無制限に強くなるってことじゃないか? これまで討伐したモンスターを全てクロトに吸収させてきたが、今後はその度にステータスが上昇することになる。クロト最強説到来!


『今回、クロトが進化した種族はスライム・グラトニア。数百年前に水国トラージに突如出現したモンスターです。クロトはまだ幼体ですが、トラージに現れた個体は成体でした。トラージは青魔法に特化した宮廷魔導士を数十人擁する魔法国家でしたが、どのような大魔法もスライム・グラトニアに食べられるように消滅しました。トラージは半壊までに追い込まれましたが、寸前のところで勇者が到着し、打ち倒されたのです』


 まるでクロトが魔王のようだ…… あと勇者ってやっぱりいるのね。


『事実、スライム・グラトニアは準魔王級のモンスターとして後世に伝えられています。 勇者はこの時代にも現存しますよ。この前転生させたので』

「……はい?」

『神皇国デラミスの巫女が異世界召喚の儀をしておりましたので。今頃いい感じのレベルになっている頃ではないでしょうか? センスの良さそうな美男美女を揃えるのは苦労しました』

「お前、サラッと凄まじいことしてんのな…… まあテンプレ的に魔王が復活したから何とかって流れか?」

『そんな感じです。あなた様にはほぼ関係ない事柄ですのでご安心ください。ああしたイベントには私も飽きてきてるので、むしろ関わらないでください』

「ああ、そう……」


 これに関しては様子見だな。今はそんなことよりもクロトだ。今日は祝賀会だ!



~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~



「な、なんだこのスライム…… こんな種族知らないっすよ!?」


 眼前に現れたクロトに、ギムルは酷く混乱していた。それもその筈、鑑定眼を行使した彼はクロトのステータスを目にしているのだ。知らない種族、レベルが低いにも関わらず自分の倍以上の数値を誇るステータス、固有スキル…… そして召喚術による補助効果。何から理解すればいいのか分からずに、彼は錯乱してしまう。


「おい、ギムルどうした! そのスライムは何なんだ!?」

「ギムル、下がるんだ! モンスターとの距離が近過ぎる!」


 カシェルは立ち止まり、ラジが沼にもがきながらも声を上げるが、ギムルの動揺は抑えられない。


「クロト、やれ」


 カシェルに注意を払いつつ、クロトに命令する。クロトは体の一部を鞭状に変化させ、ギムルに向けて叩き付ける。当然、ギムルは反応できなかった。


「ぐ……はっ……」


 クロトの一撃をその身に受け、ギムルは壁まで吹き飛ばされ、叩き付けられる。もはや虫の息だ。


「まあ、耐久81じゃこんなもんか」

「お前、鑑定眼までも……!」


 カシェルが俺に向き直り、剣を構える。


「おいおい、言い回しが崩れてるぞ、カシェル先輩」

「ぐっ……」


 束の間、大きな音が響く。ラジだ。


「うぉおおお! 怒鬼烈拳!」


 ラジの拳から赤いオーラが宿り、泥沼に叩き付けられる。ラジを膝まで飲み込んでいた沼は消散する。ラジの目にはクロトが映り、子供のように楽しげに笑っている。


「カシェーーール! このスライムは俺が相手をする! その男はお前が何とかしろ!」

「……筋肉男にしては良い判断だ。何とかしよう」


 ちっ、カシェルが落ち着きを取り戻したか。あのラジって戦闘狂、場当たり的な行動をするが、今回はそれが面倒な方向へいってしまったようだ。


『少々慢心していましたね。泥沼に嵌った時点でトドメを刺すべきでした』


 ああ、これは俺のミスだ。封じるなら完璧に封じる、殺るなら完璧に殺る。胆力のスキルを取得して大丈夫だと思っていたが、まだ迷いがあったようだ。要反省だな。


「ふう、それじゃ、名誉挽回といこうか」

「何がだい? 悪いけど、僕は全力でいかせてもらうよ? 新人さん」

「ああ、そうしてもらわんと俺も困る。胸を借りるぞ、カシェル先輩」

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