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黒の召喚士 ~戦闘狂の成り上がり~  作者: 迷井豆腐
アフターストーリー3 結婚編
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第411話 平穏な新婚生活だった

 エルフの里を後にし、パーズへと帰って来た俺達は、屋敷に辿り着くまでの道中で街の人々から再度祝福され、軽い凱旋状態となっていた。知り合いの冒険者達からもバンバンと背中を叩かれ、ミストギルド長からは三つの袋について話をされ、クレアさんからは美味しい昼食をご馳走になり、屋敷に帰ってからもエリィとリュカの手料理で歓迎され――― お腹、もう一杯です……


 とまあ、そんな愉快な帰還を果たしてから、早いものでもう数日ほどが経過していたりする。トライセンやデラミスからも気を遣われているのか、特に呼び出しなどもなく、パーズ内でゆっくりまったり平和な結婚生活が続いているところだ。いつもであれば、そろそろ戦いに出向いているところだが、先の一週間で本当に満足させてもらったからな。もう暫くは家族に寄り添っていきたいと思う。


「準備ができたぞ。さあ、行くぞ」

「………」


 そんな風に俺にも父性が目覚めてきたのも束の間、ケルヴィムが急に屋敷にやって来て、そんな事を言い出した。おい、随分と早いじゃねぇか。いや、夜も夜だから、時間的にはクッソ遅いんだけど。今、やっとララノアの夜泣きをあやしたところだったんだぞ? お前の顔を見てまた泣き出したらどうする?


「……色々と言いたい事はあるが、まずは客間で待っていてくれ。ララノアをベッドに寝かして来るから」

「早くしろよ。ほら、駆け足」

「ぶっ殺すぞこちとら可愛い可愛い天使を抱えてんだぞ(超小声)」


 割と本気目の殺意が湧いたが、ララノアの安眠を妨げない為に声は最小ボリューム、圧も全くの無にして、安全スピードを心がけての移動でベッドへゴー。よちよち、ララノアは眠っていても超絶かわゆいでちゅね。やっぱ将来は清楚系アイドルになるしかないかな、これは! あ、エリィさんや、このお姫様を見ていてくださる? うん、そう。ちょっと急な来客対応しなくちゃでさ。エフィルも同席してもらうから、ここは任せたよ。では!


「―――よし、待たせたな」

「おい、表情が緩みに緩みまくっているぞ」

「え?」

「ご主人様、鏡鏡~」


 クッ、ララノアのかわゆさの余韻が残ってしまったか。リュカが持って来てくれた鏡で顔面を矯正し、何とか元に戻す事に成功。ふう、危ない危ない。表情が恵比須顔で固定されるところだった。で、俺がそんなララノアショックを乗り越えた辺りで、すっかり就寝モードに入っていた他の面々も客間に集まり始める。っと、セラは若干ご機嫌斜めっぽいな。


「ふわ~…… もう、何でこんな時間に来るのよ~? 私、さっきまで夢の中にいたんだけど? しかも、あと少しで大物を釣り上げる寸前だったのよ? あの手応え、絶対に新記録だったのに!」

「一体、何の話をしているんだ?」


 多分、夢の中での一本釣りの話だと思う。って、今はそれよりも。


「で、準備ができたって話は本当なのか? 前に聞いた時はいつになるか分からないって事だったが、随分と早かったな」

「言っただろう? アダムス次第だ、と。お前と戦って以降、アダムスの上昇志向はいっそう凄まじいものになってな。全く身に着けていなかったスキル関係にも精力的に学ぶようになり、毎日が充実感で満たされている状態だ。となれば、神域の扉を開くのも相応に早くなる。その結果がこれだ」

「何となく想像できた事ではあったけど、そこまで凄い事になっていたのか。フフッ、次に手合わせする時が楽しみだな」

「アダムスも全く同じ事を言っていたよ。ただ、そんな絶好調のアダムスから不都合も生じてしまってな。当初は冒険者ギルドを通して依頼するという話だったが、可及的速やかに行動する為にも、この俺が直々に伝えに来たという訳だ」

「なるほどな。で、その不都合ってのは?」

「……恐らく、アダムスや俺達の復活が、エバにバレた」

「ほう」


 ええと、確かこの世界の運営管理は転生神に全任せにされている状態で、他の神達はまだこちら側の内情を知らないんだったんだっけ? 転生神は定期的に代替わりさせているし、それなら怠惰になる事もない。よし、オッケー! って、そんなノリだった筈だ。邪神なんてものを封印している超重要な場所なんだから、もっと厳重に管理しろよ! なんて、個人的に思ってはいたんだが。


「何でバレたんだ? 転生神がゴルディアーナに代替わりするタイミングだったから、流石に様子を確認しに来ていたとか?」

「いや、ゴルディアーナ本人に確認したが、今のあいつらにはそんな習慣すらない」

「マジでか……」


 ちなみに、現転生神のゴルディアーナも現在の神達の在り方には疑問を呈しているようで、今回の遠征には共に参加する事になっている。ただ、まだ味方になるかの判断は保留中のようで、実際に他の神達の現状を確認してから、どちら側の味方に付くかを決める事にしたそうだ。真っ向から中立を宣言しつつ、遠征に参加しようするゴルディアーナも大したものだけど、それを真っ向から許可するアダムスも実にアダムスだよなぁ。 ……む、場合によってはゴルディアーナとも戦えるのか、これ?


「おい、ケルヴィン? 何を上の空にしている? ちゃんと俺の話を聞いているのか?」

「あ、ああ、聞いてる聞いてる。それで、結局は何が原因でバレたんだよ?」

「さっきも言っただろう。絶好調のアダムスが不都合を生んだ、とな」

「ええと、つまり?」

「……アダムスとエバは元を辿れば同じ存在だった。この事は既に知っているな?」

「ああ、戦闘中に本人から聞いたよ。話し相手が欲しくて人格を二つに分けたんだろ?」

「その通りだ。そして元が同じ存在だからこそ、そこに宿される気配も殆ど同じ気質となる。アダムスはその性質を利用し、自分と同じ気配を探る事でエバの居場所を割り出そうとしたんだ。距離も方向も不明だったが、それもアダムスであれば不可能ではなかったからな」

「なるほど、だからアダムス次第だったって訳か」


 所在は不明だが姿形はハッキリとしている。そんな星を超高性能な望遠鏡で捜すようなものだろうか。時間は必要になりそうだが、確かにアダムスならできそうでもある。


「さっきも言ったが、アダムスはこれまでにないくらいにコンディションが良い。だからこそ、早期にエバの居場所を割り出す事に成功したんだが…… 同時に、今のアダムスの状態をエバに知られる機会ともなってしまった」

「おいおい、何でそうなる? 逆探知でもされたのか?」

「まあ、似たようなものだな。アダムスの調子が良過ぎて、何の因果かそれがエバの方にも伝播してしまったんだ。互いが互いを同時に発見してしまった、そんな感じだろうか」

「ええっ……」


 そんな事ってある? い、いや、一卵性双生児にはテレパシーがあるって、セラからそんな雑学をいつか聞いた事があったような…… 双子でそれがアリなら、元が同じ存在であるアダムスとエバがもっと近いところで通じ合っていたとしても、別に不思議ではない…… のかな?


「……まあ理由はどうであれ、アダムスの復活が向こうにバレたのは確かか。で、相手の準備が整う前に急いで攻め入る必要があると、そういう訳だな?」

「そうなる。幸い、発見と同時にアダムスが神域への道を開いてくれた。あの漆黒の闘気、『幻想掴み取る啻人ブラックファンタズム』だったか? アレは凄まじいな。本来神域へ繋がる道を作るのには相当の手間がかかるものなのだが、アダムスの拳圧一つでその道ができてしまったんだ。ククッ、お陰でまだ奇襲には間に合いそうだ。これで数だけは多い偽神共を、先手で駆逐する事ができる……!」


 そういう使い方もできるのか、あの漆黒のゴルディア。しかし、楽しみが早い段階で到来した事自体は喜ばしい。皆寝起きだったりでテンションが疎らだが、俺の心は踊りに踊って――― ん、ちょっと待てよ? 神域とやらへの道が開いたって事は、こっちからも行けるけど、あっちからも来られるって事じゃないのか? それ、逆にあっちからも攻めて来る可能性ってない?

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